『小夜風』(刀剣乱舞 山姥切)-3- 

2015, 06. 27 (Sat) 01:08

 お待たせしました。
 八つ墓村的話のターンです。
 すみません、相変わらずドロドロです。

 さらに、おことわりを。
 ゲームをされている方はご存じと思いますが、そうでない方のために一つだけ。

 『山姥切』について、現在、『本科』の長義作と、『写し』の国広作は幸運なことに現存しますが、現在に至るまでの経緯はあくまでも伝承の一部が残るのみで正確なことは解らない部分が数多くあります。
 そこを私が勝手に料理しておりますので、どうか鵜呑みになさらぬよう。
 特に、石川某夫妻については完璧な創作が入っておりますので・・・。
 どうかその辺、ゆるく宜しくお願いします。
 お墓があったら謝りに伺わねばならないレベルだわ・・・。
 ついでに、『本科』の方も、9月に名古屋へ頭下げに行くべきだろうと真剣に検討中です。
 実は本科ネタでぶちこわしな話ばかり最近思いついているこの頃・・・。
 ごめんなさいごめんなさい、本科さま、ごめんなさい~。
 あ。
 太郎と次郎に謝りに熱田神宮にも・・・。
 刀剣たちへの平身低頭の旅なんてやったらえらいことになるな。

 とりあえず、手に入っていない三日月でネタを考えた事がなかったので、先日の上京の時上野に行かなかったのですが・・・。
 どうなることやら。



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  今回は、『silentlove-地上の光-』です。
  クリスマスではない、12月の平日のお話のつもりで書きました。
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  飲んだくれ猟師と化け猫の話。
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『小夜風』-3-



 思えば、自分が生み出された天正十八年は、既に足利長尾氏当主・顕長の足もとが既にもろくも崩れ始めていた頃だった。
 北条氏政からの信頼のしるしに拝領したのが、本科である「山姥切」。
 そこへ偶然にも足利へ足を向けた刀工の国広と出会い、写しの作刀を依頼した。
 この時、国広は顕長とともに小田原城に籠もって足軽として最後まで残って戦い、互いに生き延び、国広作の山姥切は同じく北条家遺臣の石原甚左衛門の手に渡った。
 そして、仕官先を求めて少ない家来たちと身重の妻を伴い信州を目指していた時に事が起きる。
 先を急ぐ石原にとって、女達は足手まといに他ならなかった。
 妻のとよは十三歳で娶って十数年。
 何度も流産と死産を繰り返し、互いの間に生きている子どもは一人もいない。
 しかし、主君である北条氏の血筋を引く上に抱けば確実に身ごもるため、疎略に扱うことが出来なかった。
 跡継ぎ欲しさに幾人か女に手を付けてみたものの、皆いちように身籠もったところで生きて産まれる子供がいない。
 しかし、前の年にとよが産んだ男子は、産声こそ小さかったが七日間生きた。
 そして、今度の懐妊。
 だからこうして、とよを連れての旅路になった。
 いや。
 そもそも今度の仕官はとよの母方の親戚の伝手で叶う手はずとなったため、彼女なしでは話が通らない。
 だがしかし。
 一度懐妊すると悪阻が酷くほぼ毎日床に就いていた筈のとよにとって、小諸越えは過酷すぎた。
 日に日にやせ衰えていき、歩くことすらままならなくなった彼女を馬に乗せ、または家臣たちが代わる代わる背負ったりもした。
 もはや限界であることは、誰の目にも明らかだった。
 一刻も早く信州へ着きたい。
 だが、牛の歩みのように進みが遅い。
 甚左衛門だけではない。
 若手の家臣の中にはいらだちを抑えきれない様子の者も出てきた。
 そこへ、先の様子を見てきた家臣の一人が山奥の一軒家を見つけてきたのは、天の助けに思えた。
 一同は妻や侍女たちを励まして道を急ぐ。
 粗末ながらも雨風が十分にしのげる山小屋に、ひとの良さそうな老婆が一人住んでいた。
 事情を話し、妻と彼女に長年仕えた乳母と、足を捻挫している年若い侍女を一人、そして腰痛を患っていた年かさの家臣を一人預かって貰うことを頼み、幾ばくかの細工物を世話料として置いて山を下る。
 身軽になってからの旅程は早かった。
 辿り着いた信州では歓待され、家臣ともども旅の疲れをすっかり落とし、しばらくの逗留で英気を養った。
 そしてとよの叔父の支度してくれた武具を身につけ、屈強のものを幾人か借り、迎えに行くために再び山を分け入った。
 異変に気が付いたのは、渓谷に転がる一つの死体を見つけてからだ。
 裸に剝かれて転がる男の遺体の特徴が気になると言い出したのは、古参の者だった。
 改めて検分するとそれは、山小屋に置いてきた老家臣に酷似している。
 さらに先を行くと、今度は乳母と思われる年老いた女の遺体に遭遇した。
 これもまた、糸くず一つ身につけていない。
 そして最後に、縊り殺された若い女。
 豊満な身体には無残にも乱暴されたあとが残り、生きながら首を絞められたのか目を見開いたままで、この数日の間に殺されたと知れる。
 こうなると、結論は一つしかない。
 あの山小屋は、賊の住みかだったのだと。
 そしておそらく、とよと子どもは無傷ではあるまい、もうとうに殺されたに違いないと誰もが思った。
 しかし手勢の中にとよの生家に由来する者が混じっている以上、生死の確認をせぬままこの場をあとにするわけにはいかない。
 将として号令を下し、手勢を率いて一気に山を駆け上った。
 この凄惨な光景とはうらはらにのどかな春の日差しの中、昼間から酒を飲んでいたと思われる賊たちはろくな抵抗も出来ぬままあっさりと切られていく。
 その中に息子たちがいたのか、くだんの老婆が小屋からまろび出て叫んだ。
「この、恩知らずめ!!」
 易々と取り押さえて尋問したところ、淡々と老婆は答えた。
 山小屋に残された晩に妻は死産した。
 とても小さな、男児だった。
 手の平にようやく載るほどの嬰児は、それでもきちんと人の姿をしていた。
 あまりの嘆きように女として気の毒に思った老婆は、最初は甲斐甲斐しく世話に加わっていた。
 だがしかし、小田原北条家一門の姫であったとよに仕える乳母と侍女は気位が高く、老家臣も同じく老婆を犬のように扱った。
 身をやつしているとはいえ、老婆たちのような下層の者には一生手の届かぬ衣装を身につけ、懐には見事な細工の守刀に絹の袋。
 どす黒い感情が胸を渦巻き始めたところに、戦場で武将たちの遺体から武具をはぎ取り、金品に変えてきた息子たちが戻ってきた。
 彼らと滞在人たちが出会いと同時に衝突し、嵐が沸き起こるのを老婆は炉端に座って静観した。
 威勢だけは良いが身体の利かぬ老人はあっという間に滅多突きにされ、女達は群がる男たちに裸に剝かれて犯された。
 泣き叫び助けを求める声に背を向けて、息子が土産に持ってきた獣の肉を切り分け、山で採れた菜で鍋を煮る。

 下賤の者と、いくらでも蔑むが良い。
 死んでしまえば、皆同じだ。

 まず最初に乳母が事切れ、体力があり勝ち気な侍女は何度犯されても抵抗を試みるため、大人しくさせようとした誰かが首を絞めているうちに息絶えた。
 唯一、性質も穏やかで老婆を気遣っていた奥方は。
 おそらくこの今も、破れかぶれになった末息子に組み敷かれているに違いないと、老婆は哄笑した。
「黙れ!!」
 甚左衛門が老婆の肩を蹴ると、そばにいた忠臣がすかさず刃を振り下ろした。
 そして、小屋の中へ踏み込む。
 どんよりと空気の濁った薄闇の中で、うごめく影を一つ見つける。
 一つ、ではない。
 白い無防備な身体の上で、せっせと若い男が腰を振っていた。
 家臣の一人が素早く背中を切りつけると、どうっと横倒しに倒れて男は絶命した。
 仰向けに転がされた女は、申し訳程度に纏わされたぼろ布から少女のように長い手足を床に投げ出したまま動かない。
「・・・とよ」
 名を呼ぶと、ぴくりと指先が動き、のろのろと、時間をかけておき上がった。
 すっかり汚れきった頬や、土と草にまみれた髪や、どこか焦点の合わない眼差しが、もうとよが元に戻れないところまで汚されたことを語っていた。
「あなた・・・」
 夫が来たことを知って安堵したのか、はらはらと涙をこぼした。
「おまえ・・・」
 土色のぼろと同じくらいみっともない姿へ変わり果てた妻に、かける言葉などない。
「なぜ、生きている」
「・・・え?」
 縋ろうとしたのか、甚左衛門へ向かって延ばされた細い指先が止まった。
「それでも、もののふの妻か」
 恥ずかしい、と思った。
「乳母も侍女も抵抗し続けて死んだというのに、やすやすと賊どもに抱かれて生き残るとは、北条家の名が廃る」
 ここに来た者はみな、この惨状を知っている。
 戻れば語りぐさとなるだろう。
「・・・恥知らずめ」
 いらだちを、ぶつけた。
「あなた・・・と、言うひとは・・・」
 目を見開いたままで座りこんでいたとよの身体がゆらりと揺れた。
 そして、何処にそんな力があったのか、素早く夫の懐に入り、腰に差してた打刀を引き抜き、飛び退る。
「あ・・・」
「来ないで!」
 はだけた胸元もそのままに、細い両手で打刀を支えて首に当てる。
「あなたの・・・。あなたさまの考えは、よくわかりました」
 逗留中に刀工に磨かせた刀は、水を打ったばかりのようなつややかな輝きを放つ。
「やめろ・・・。とよ、やめるんだ」
「死ね、と仰ったではないですか」
 少し力が入ってしまったのか、首筋から一筋の赤い糸が流れ落ちるのが見える。
「やめぬか!!それは、傑作。主から拝領した名刀ぞ!!」
 唾を飛ばしながら何を口走ったのか、己もよくわかっていなかった。
 しかしそれを聞いた瞬間、とよが声を上げて高らかに笑った。
「あなたってひとは、本当に・・・っ」
 嫁いで来て以来、滅多に大きな声を出すことのなかった、とよが。
「とよ・・・」
 隙をついて奪うことは出来たはずだ。
 だが、甚左衛門を始め、居合わせた家臣の誰も、立ちつくしたまま動くことが出来なかった。
 髪を振り乱して、刀を構えるとよの姿は異様だった。
 もはや、姫どころか人とは言い難いにも関わらず、どこか神々しくもあった。
「・・・無事で良かったと、言っては下さらぬのですね」
 ぴたりと笑いを止めたとよの、静かな呟きが、狭い空間を支配した。
「ならば、散りましょう」
 花のような微笑みを唇に浮かべ、力いっぱい刃を引いた。
「とよ!!」
 女の命が、刃に染み込む。

 ―私は、なんのために・・・―

 彼女の最期の言葉を聞いたのは、刀身だけだった。


「それから彼らは取り繕った。そもそも俺は山姥切の写し。本科同様に山姥を斬ったことにすれば良いと」
 石川甚左衛門は産気づいた妻のために山を下って薬を求め、再び戻ると山姥が嬰児を食べていた。それを見た彼はすぐさま刀を振り下ろすと、化け物は虚空に消え・・・。
 名がその事態を呼んだのか、それとも・・・。
 怪奇物語を好む人々は、すぐにその話に飛びついた。
 そして、誰も、疑うことはなかった。
 何しろ、山姥切、なのだから。
 後味の悪い結末を抱える甚左衛門は、請われるままに何度もその話を繰り返し語るうちにだんだんそれが現実だと思い込むようになり、山小屋のすぐそばにあった息子の小塚も、隣に埋めた妻も忘れた。
 ただ時折、刀剣の中に不穏なものを感じ、疎ましく感じ続けていたところ、関ヶ原の合戦の最中に知り合った男が、目の前で刀の刃を折った。
 親切ごかしに差し出した山姥切を、心から感謝の意を示して受け取った男の名を渥美平八郎という。

「罪と罰から逃れた男の、その後の行方は、知らない。ただ、行き場を失った妻の怨嗟がまとわりついて、離れない・・・」
 
 いつの間にか、捕らわれていたはずの両手は優しく繋がれていた。
 そして互いに向き合い、じっと正座したままだった。
 自分は、やわらかな布団の上に。
 太郎太刀は、冷たい板の間に。
「・・・これは、慰めにもならないとは思いますが・・・」
 ただ長いばかりの話を、遮ることなく聞き続けた太郎太刀は、睫を瞬かせた。
「物語とは、得てしてそのようなものです。暗い真実を探り当てるのも良し、ただ純粋に楽しむのも良し」
 指先を、彼の手にゆっくり愛撫されて困惑する。
 このようなふれ方をする人を、知らない。
 つい、俯いてしまう。
「確かにとても気の毒な話です。でも、我々は所詮刀。命を、断つ道具です」
 低く甘く、囁きながらもその言葉は胸を刺す。
「化け物も、女も、子どもも、年寄りも・・・。主が必要とあらば、斬らねばならない」
 吐息を感じるほど近くにいるのに、正しすぎる言葉に逃げ出したくなる。
「だけど、斬った命と心を、あなたの中に掴まえたままでは駄目です」
「・・・いやだ」

 罪と罰は、決してなくならない。





          -つづく-



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