『夕立ち』-征司- ② 

2010, 06. 21 (Mon) 21:52

ええと、まだ続きます。
ごめんなさい・・・。




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  現在は、『睦み月』で『シゲルとミケ』シリーズです。
  飲んだくれ猟師と化け猫の話。
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『夕立ち』-征司-

「征司…」
 なおも手を伸ばしてくる蒼の手を恐れて思わず後ずさった。
「それに、もう、話なんてない」
 未練を、見せてはいけない。
 毅然と、拒絶しなければ。
「僕たちは終わったんだ」
「終わってなんかない!!」
 蒼の目に凶暴な光が走り、肩を掴まれ、強くがくがくと揺さぶられる
「勝手に終わらせるなと何度も言ってるだろう。俺たちは離れちゃいけないんだ」
 何度も何度も繰り返した言い合いをまた繰り返す。
 いつまでも堂々巡りだった。
 離れてはいけないという蒼と、離れようと言う自分。
 本当は離れたくない。
 でも、それは自分のわがままだ。
 現に、蒼の生活にかなり支障を来していた。
 幼いころから神童と呼ばれた蒼は大学に入学する前から日本の、いや、世界の学会でなくてはならない存在になっている。彼の頭の中には広い宇宙のような思考が詰まっていてその未来は彼自身だけでなく周囲の人々の希望だった。
それなのに、今年に入ってからの彼の中は自分との言い争いでいっぱいになってしまっている。
 このままではいけない。
 このままでは、蒼のこれからは黒く塗りつぶされてしまうだけだ。
 どうすれば、どうすれば蒼は解ってくれるのだろう。
 焦ってほてってきた頬にぽたぽたと大粒の雨が落ちてくる。
 その、落下速度が速まるとともに、胸の鼓動もどんどん速まって行った。
「お前以外に大事なものなんてあるか!」
 手首を掴まれた瞬間、蒼の熱を感じて振り払う。
「それだから、だめなんだよ!!」
 強い風が自分たちの横を吹きぬけた次の瞬間、ざーっと、激しい音と雨粒が周りを囲いこんだ。
「大学にもいかずに、こんな無茶なことばかりして…。この前も大叔父たちにあんなこと言って、ただで済むわけがないんだ。今の蒼は無鉄砲すぎる…。何も見ないで突っ走るだけの、考えなしの馬鹿だよ!!」
 数日前の一族の会合に乗り込んだ蒼の発言で、全てが知れてしまった。当主の恋人があろうことか男であるという事実をもみ消そうと彼らが動き出すのは間違いない。今の所、高遠が一番発言権の強い大叔父の一人を抑えてはいるが、時間の問題である。その時に蒼が失うのは未来だけでは済まないかもしれないのだ。
 考えれば考えるほど焦りと後悔がきりきりと胸を締め付ける。
 なぜ、蒼の手を取ってしまったのだろう。
「なんだと?もういっぺん言ってみろよ…」
「何度でもいうさ。毛利たちの気遣いも教授の心配も何もかもぶち壊しにして、それで何を得るんだ?何もないじゃないか!君の子供っぽさに、もう、うんざりだ!」
 叫ぶように言葉を吐き出した瞬間、頬に熱いものが走った。
 ぱしんと、どこか遠くで音がする。
「あ・・・」
「蒼・・・」
 蒼の顔にありありと後悔の念が浮かぶ。
 いつもそうだ。
 争いの果てに、激情にかられて乱暴されたことは何度もあったけれど、嵐が去った後の蒼はいつも後悔していた。
まるで真っ暗な海の底のような目をして立ちすくむ。
出会った頃は、澄み切った青空のようにあけっぴろげな笑みを浮かべていた筈なのに。
「・・蒼。お願いだからそんな顔しないで」
 頬が熱い。
 これは、罪の印だ。
 蒼の心を真っ黒に塗り潰してしまった自分の。
 殴られたくらいでは済まない、もっともっと強い罰を受けるべきだった。
「ごめん・・・。僕たちの関係に先なんかないことは、最初から解っていたのに・・・」
 遠くで強い光が走り、雷の音が聞こえてくる。
「あの時、僕が間違ってしまったんだ…」
 いっそのこと、雷に打たれてしまえばいいのに。
「間違いだなんていうな!!」
 強い力で抱きしめられて、息がとまる。
 骨が、心が、悲鳴を上げた。
 懐かしい、蒼の、男らしく清々しい匂い。
 高い体温。
 決意も何もかも溶けてしまいそうになる。
「そ・・・う、蒼、だめだ、離して、・・・蒼っ!!」
 あらんかぎりの力で抵抗すると、更に腕の力は強くなり、動きを封じられたまま唇を合わせられてしまった。
 「そ・・・う」
 いつでも、蒼の唇と舌は熱かった。
 まるで征司の唇を飴を含むかのように溶かし、飲み込んでいく。
 交わる吐息も熱く、その熱がだんだんと征司の心と身体を溶かして行き、どこからが自分でどこからが蒼なのか解らなくなるような錯覚に陥った。
 深い深い感覚の底で、蒼という男を知る。


 ―『夕立-征司-③』へつづく―



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