過去・拍手御礼SS 『すいかずら』-夏の声- 

2014, 11. 12 (Wed) 18:58

 これは、8月に書いたんだと思います、多分。
 だから、夏の蝉の声。
 
 祖父を一人、戦争でなくしておりまして。
 父が乳飲み子の頃は韓国に住んでおりまして、そこでいったん除隊になったのを終戦間際に再集され(あちらは経費節減のために、用が出来たら招集する形を取ったようです)、南方であっけなく亡くなりました。
 戦死だったのか、病死だったのか・・・。
 それすらも解らず、おそらくミンダナオ島が最後だったたらろうということくらいしか・・・。
 多分、漫画や小説に出てくる遺骨代わりの石すらもらえなかったのではないかな。
 祖母や父は引き上げの混乱にすぐに巻き込まれましたので。
 父は祖父に商売を任せて一日中バイオリンを弾いているような夢見がちなぼんぼんで、本が好きでした。
 文学の世界にどんな仕事でも良いから就きたいと日本にいる従兄弟に手紙を書いていたようで、二十年くらい前に一度見せてもらったのですが、今はそれもどこにあるのかわかりません。
 ただ、暗い時代に生まれて青春を送り、夢を何一つ果たせずに無念だったろうと想像するしか・・・。

 『すいかずら』はとある小説が根底にありますが、もう、ほとんど別世界になってしまいました。
 すこーし、人物配置と地理をお借りしますが、主人公の蛍一の生い立ちなど、私が勝手に思い描いて育ててしまったので・・・。
 ぽつぽつと、こちらも短編を繋げていきたいと思います。
 雨の夜のような話ですが、お付き合い頂けると嬉しいです。

 ところでこのシリーズも、まとめサイトに掲載しています。
 ・・・いつのまに、作ったのか覚えていないのですが、この『夏の声』まで載せているようです(←おい・・・)。
 もし宜しければ、あちらの方でもお読み下さいね。

薔薇の中の薔薇と花の中の花。
↑ クリックして頂くと、まとめサイトへ飛びます。
  
 (2014/08/20 現在、『楽園』シリーズ、『秘密の花園』シリーズ、『雨』シリーズ、『シゲルとミケ』シリーズ、『すいかずら』シリーズを掲載中。)
 

 もうとうに立冬を過ぎたのに、なかなか拍手御礼から下ろせずにすみません。
 次は別の季節をお見せしたいです。



   どの日付のものでも構いませんので、それぞれの記事の下の『拍手』ボタンをクリックすると、おそらく『拍手御礼』というページが展開されるかと思います。
  そこに、小話を添付しています。
  小話は、『拍手御礼』に1話のみ。
  今回は、『壁ドン事件 -出歯亀編-』です。
  ええと、『壁ドン事件-池山×江口編-』を、今回もあの人が出歯亀しております。
  かるーく読み流して下さいね。
  楽しんで頂けたら幸いです。

 一応、これからも拍手用小話を月に一度書き換える予定です。
 随時オーダー受付中。
 毎月16日の正午締めで、20日頃に新作アップという形を取りたいと考えています。

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  現在は、『睦み月』で『シゲルとミケ』シリーズです。
  飲んだくれ猟師と化け猫の話。
  楽しんで頂けたら幸いです。

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 『すいかずら』-夏の声-


 夏の光は、どうしてこうも容赦ないのだろう。
 ふう、とため息をついて首筋を伝う汗を指先でぬぐう。
 木立の間の影を縫うように歩いているが、梅雨明けの地面から沸き上がる水蒸気と斬りつけるような陽の光に包まれて、次第に意識がもうろうとしてくる。
 自分は、いったい、どこを目指して歩いているのか。
 ふいに、草履の隙間に紛れ込んだ小石が土踏まずを刺した。
「・・・痛」
 思わず屈むと、もう、立ち上がれなくなった。
 わんわんと、蝉の鳴き声が降り注ぐ。
 激しい音の応酬に押しつぶされそうだ。
 地面に手をついて、へたり込む。

 蝉の声。
 夏が来た。
 夏が、ようやく来たのに。
 あの人が、いない。

「ゆう、ぞう・・・さん」

 夏の、照りつける太陽が好きだと言ったひと。
 なのに、陽の光を浴びることなく、狭くて暗い所で独り、息絶えてしまった。
 男らしく生きたいと、いつも肩をそびやかして遠くを見ていたのに。
 男として生まれたからには、お国の役に立てと子供たちに説いていたのに。
 国の未来を信じて、子供のように疑わなかったのに。
 怪我で片眼の視力を失い、その想いは行き場を失った。
 そして、今。
 自分が赤紙を受け取り、数日後にはそれに応じねばならない。

「皮肉なもんやな、雄三さん・・・」

 ずっと、言えんかったけど。
 戦争なんか、大嫌いや。
 兵隊なんか、なりたない。
 人を殺して、殺されて、何が幸せなん?

 生きている時に、言えば良かった。
 ちゃんと、全部、吐き出してしまえば良かったのに。

 この国は、負けるんや。
 無駄死にして、良いこと、なんもない。

 僕のために、生きて。
 僕と生きて。

 だけど。
 現実は、この空のように容赦なくて。
 本当のことを何一つ口にしてはいけない世の中は、荒む一方で。
 名前の通り雄々しい人は、ヤクザの抗争に明け暮れて、無残に殺されて。
 自分は、兵隊として、旅立つ。

 なんのために。
 なんのために歩かな、ならんのやろ。

 まだ生きてる、病床の母のため。
 刃傷沙汰で死んだ父故に肩身狭い思いをしている、彼の息子のため。
 そう思って日を過ごしてきたのに、お国のために死んでこいと、世間が言う。

「ゆうぞう、さん・・・」

 生きて、帰って、僕を叱って。
 歩けって、引っ張って。

 なんで。
 なんで、僕たちを置いて、死んでしまったん?
 なんで、死なせたんや、神様。

「なんでや・・・」

 地面に、ぽたぽたと黒い染みが広がる。
 顎を伝うのは汗なのか、涙なのか、わからなくて。

 蝉の声に紛れて、叫ぶ。

 あの人を、あのひとをかえして、かみさま。
 いますぐ、つれてきて。

 地面に縋るだけの自分は、蝉にもなれなくて。
 恋しいひとを呼び寄せる力も、ない。
 




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