『秘密の花園』-無花果-3- 

2014, 09. 12 (Fri) 23:54

 大変遅くなりました。
 重い話でごめんなさい。
 どうしてこの一族の話はこうなるのか・・・。
 
 これとあと一話、絹様語りが続きます。
 ご辛抱下さいませ。
 もう、ほんとにBLと全く関係ないな・・・。
 
 でも、避けては通れない話なので今しばらくお付き合い頂けると嬉しいです。
 9月ももう半ばに向けて走っていますが、来月のために働きます。
 連休中も仕事です。
 ・・・というか、三連休って解ってなかったよな、私。
 気分転換に、今月の拍手はなるべく軽く行こうかな、池山とか池山とか池山とか。



   どの日付のものでも構いませんので、それぞれの記事の下の『拍手』ボタンをクリックすると、おそらく『拍手御礼』というページが展開されるかと思います。
  そこに、小話を添付しています。
  小話は、『拍手御礼』に1話のみ。
  今回は、『すいかずら -夏の声-』です。
  今回は特に短い。
  しかも、モノローグ多いし・・・。
  終戦直前に召集令状をもらってしまった蛍一の独白みたいなものです。
  
  とにかく、楽しんで頂けたら幸いです。


 一応、これからも拍手用小話を月に一度書き換える予定です。
 随時オーダー受付中。
 毎月16日の正午締めで、20日頃に新作アップという形を取りたいと考えています。

 
 これからも何かご希望がありましたら、是非リクエストを拍手コメントかメールフォームでお願いします。


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  現在は、『睦み月』で『シゲルとミケ』シリーズです。
  飲んだくれ猟師と化け猫の話。
  楽しんで頂けたら幸いです。

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『秘密の花園』 -無花果-3-



「・・・何から話そうかしら」
 改めて、母を見つめた。
 たしか70歳になったと思うが、柔らかく結い上げられた髪は十分に美しく、きめの細かい肌にはまだ張りがあり、絹、という名をそのまま体現した容姿だった。
 しかし惣一郎自身、物心ついた時から母と暮した記憶がほとんど無い。
「そもそも、あなたと私の関係が希薄だったから、会話の糸口を見つけるのにも苦労するわ」
 惣一郎は地方の本宅で親族に養育され、絹は東京の別邸を拠点に、真神の妻としての務めを果たしていた。
「いえ・・・そんなことは」
 政財界で活躍する家庭は何処も似たり寄ったりだ。
「いえ、そんなこと、なのよ。事実として」
 コーヒーの芳香が親子の間を包み込む。
 優雅な仕草でカップとソーサーをテーブルに戻した絹は、居住まいを正した。
「勝己を、産むように命じたのも、この一年の生活の全てを取り仕切ったのも、私よ」
 真っ直ぐな眼差しを見返すまでもなく、肯いた。
「そうですね。先ほどのあなたたちを見て、ようやく謎が解けたような気がします」
 一年前。
 芳恵が妊娠を知らせてきた時に、自分は即座に堕ろすよう命じた。
 迷いは、なかった。
 憲二の時は診断の結果女の子だと聞いていたのに、実際は違った。
 同じ轍を踏むつもりはない。
 真神の家に、跡取りは一人だけ。
 俊一以外はありえないのだ。
 後々の後継者争いを防ぐためにも、子供はいらないと思った。
「あなたは男だから、堕ろすなんて皮膚病の除去手術と変わらないと思っていたから、そんなに簡単に言えたのでしょうね」
「簡単というわけでは・・・」
「いいえ。妊娠初期だから胎児も小さくて簡単な掻爬で後遺症もないだろうだと思っていたでしょう。そんなに甘いものじゃないのよ、あれは」
 しみじみとため息をつく母に、違和感を覚える。
「・・・どうしたのですか?まるで・・・」
 その語り口はまるで、身近なことのように。
「ええ。私は二度経験して、二度目はこじらせて後遺症にしばらく苦しんだ」
 一瞬、頭の中かが白くなる。
 言っていることが解らない。
「十六歳の時に一度、そしてあなたを産んで数年後にもう一度。私は子供を堕ろしたの」
 絹はため息をついて、物憂げに窓の外へ視線を投げた。
 母の、美しい横顔を、黙って見つめる以外、できることはない。
 生家の桐谷家は、今も政財界の要の一つであり、資産に関して言うならば真神と同等だ。
 血脈で言うならば貴種の多く、かなり格上である桐谷より降嫁する形での結婚だったのだと思い出す。
「十六の時、初めて男の人とお付き合いをしてすぐに子供ができたの。相手はまだ大学生で中流階級だから、慌てて両親が私を病院へ連れて行って、訳のわからないうちに堕ろされてしまった。もちろんその人とはそれきり。若かったから身体に影響はないけれど、少しばかりの罪悪感と喪失感が残ったわね」
 初体験と妊娠と中絶はごくごく短い期間だったために、本当にそれらの重大さが飲み込めないままだった。
 しかし人の口に戸は立てられないもので、表立って指さされることはなかったが、当時権勢を誇っていた桐谷家のお荷物となった。
 周囲に攻められる日々。
 当然、恋人とまた会おうものなら今度は社会的に抹殺すると脅されて、涙に暮れた。
 そんな中、真神家との縁談が持ち上がる。
 中央への足がかりが欲しい北陸の豪族と、政財界とのパイプが強固だが、娘の管理を怠ってしまうほど陰りが見えてきた桐谷家。
 どちらにとっても悪い話ではない。
 女学校を卒業して大学在学中のまま、すぐに嫁がされた。
「訳がわからないうちに一度会わされたきりで嫁がされたけど、真神春正は良い人だった。いつも気遣ってくれて、大学も続けさせてくれたし、東京に別邸を構えて本邸に済まずに済むよう手配してくれたし。でも、あなたを産んでも、真神の人々に対して何の感情も沸き立たなかった」
 そんな時、初恋の人と再会した。
 大学を無事に卒業した彼は、時流を読むのに長けていたのかいっぱしの若手実業家になって成功を収め、飛ぶ鳥を落とす勢いだった。
 輝かしい業績を背負った彼との、政財界のパーティでの再会。
 今思えば偶然ではなかったのかもしれない。
 でも、失った全てがこれで取り戻せると思った。
 二度目の恋に、溺れた。
「夫・・・春正は、責めなかった。むしろ私のこれからを心配してくれた。離婚しても構わないけれど、もう少し時期を待って、桐谷が横やりを入れられないようになってからにした方が良いと諭された」
 彼の誠実さは、それまでの数々の言動でさすがに解っている。
 だから、しぶしぶながらも従った。
 しかし、足かせのある身であることがますますその恋を燃え上がらせ、再び妊娠してしまう。
「なぜかしらね・・・。妊娠したと解った時、一番に相談したのは春正だった」
 多分それが、分岐点だったのだ。
「おめでとうと、心から祝ってくれたあと、このまま真神の子として産まないかと、言ったわ。とりあえずは、そうした方が私と子供のためになると。なぜ今になってそんなことを言うのか解らなくて、その時私は怒って飛び出したけど・・・」
 真神邸を後にしたその足ですぐさま恋人に妊娠を告げた時、ようやく理解した。
 子供ができた、と、口にした途端。
 彼は、爆笑した。
 げらげらと転げ回って笑った。

 勝った、
 勝ったぞ、
 俺は勝ったんだ。

 一瞬前までは、整った美しい青年だと思っていた恋人は、床をのたうちまわり、泡を吹きながら目を見開き、歯を剝いて、まるで狂ったかのように嗤っていた。

「ざまあ、みろ!!」

 天に向かって、獣のように吠える。

 ようやく、全てが、見えた。
 いや、見えていたのに、見ないふりをしていただけのこと。
 すとんと、胸に落ちる。
 そしてそれは、絹が信じ続けていた恋の、終わりだった。





        -つづく-




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