『秘密の花園』-無花果-2- 

2014, 09. 08 (Mon) 20:51

 お待たせしました・・・。
 『無花果』の続きです。
 まだまだ続きますよ・・・。
 次回は、母と息子の話です。
 きぬ様は、たくましく、かっとんだお祖母様です・・・。
 いや、おとなしいおばあさま、というのが私の中にいないのか・・・。

 ええと、スイスのドイツ語はドイツのドイツ語とはベツモノらしいのですが・・・。
 とりあえず清乃たちに歌わせたのはドイツ語子守歌・・・かな。
 そもそも、ヨーロッパ各国それぞれ地方の方言がかなりきつくて同じ言語でも通じないと聞いているので、書いていて「こ、これでOK?」と不安になりつつも、時には強気で推し進めております・・・。
 知識が浅く、綱渡りな状態ですみません・・・。

 ではでは、続きは水曜日に。

   どの日付のものでも構いませんので、それぞれの記事の下の『拍手』ボタンをクリックすると、おそらく『拍手御礼』というページが展開されるかと思います。
  そこに、小話を添付しています。
  小話は、『拍手御礼』に1話のみ。
  今回は、『すいかずら -夏の声-』です。
  今回は特に短い。
  しかも、モノローグ多いし・・・。
  終戦直前に召集令状をもらってしまった蛍一の独白みたいなものです。
  
  とにかく、楽しんで頂けたら幸いです。


 一応、これからも拍手用小話を月に一度書き換える予定です。
 随時オーダー受付中。
 毎月16日の正午締めで、20日頃に新作アップという形を取りたいと考えています。

 
 これからも何かご希望がありましたら、是非リクエストを拍手コメントかメールフォームでお願いします。


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  現在は、『睦み月』で『シゲルとミケ』シリーズです。
  飲んだくれ猟師と化け猫の話。
  楽しんで頂けたら幸いです。

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『秘密の花園』 -無花果-2-


 鳴き交わす鳥の声と木々のざわめき以外聞こえない、静まりかえったコンサバトリーの中で、清乃の小さな足音と自分の革靴の冷たい音だけが異様に響いた。
「・・・俊一、お前、学校は」
 長男はまだ高校生だ。
 それにもうすぐ期末試験ではなかったか。
 全員の視線が集中していることを知りながら、どうしても赤ん坊と、それを抱く芳恵に声を掛けることが出来なかった。
「・・・そうきますか。いかにも、あなたらしいですが・・・」
 俊一が半分呆れたように、眉をひそめて笑った。
 その表情のどこかに光子の面影を見いだし、ざわりと胸が騒ぐ。
「試験が来週から始まるので、ちょうど授業もあまりありません。今日はお父さんがここに来ると聞いて、どうなるか見届けに来ました。一応、僕が名付け親ですし」
 なあ、かつみ?と、芳恵の正面に回ってかがみ込み、手を伸ばして少しあやしたあと、一声掛けてくるまれた赤ん坊を抱き上げた。
「父さん、勝己です」
 慣れた風に揺すりながら振り向いた俊一は、片手でやわらかな毛布をかき分けて顔を露わにする。
 そこには、ふっくりと膨らみきった頬と重い瞼に押しつぶされた目元の、いかにも日本的で特徴のない赤ん坊がいた。
 正直なところ、上の三人は赤ん坊の時から整いきった顔立ちをしていたことを思い出すと、気の毒な気持ちになり、更には血のつながりに疑問すら沸いてくる。
「ほら、もったいぶらずに目を開けてごらん」
 俊一が指先で頬をくすぐり甘い声で促すと、小さな唇が開いてか細い吐息を吐き出し、急にぱちりと瞼を開く。
「・・・な・・・」
 緑色の、瞳。
 真神の、正統な後継者にも希にしか現われなくなってしまった、色。
「おじいさまと、同じ色ですね」
 そう。
 数年前に亡くなった当主、春正の色だ。
「これはいったい・・・」
「何も不思議なことはないでしょう。勝己は孫なのだから」
 しばらく不思議そうに自分を見上げていた勝己は、やがて興味を失ったのか、またとろんと瞼を閉じて小さなあくびをしたかと思うと、あっという間に眠ってしまった。
「ああ、やっぱりもう駄目だ。寝てしまったよ、母さん」
 くるりと背を向けた俊一はすぐに芳恵の元に戻り、弟を手渡す。
「あら、まあ・・・」
 久しぶりに聞いた妻の声は、一年前よりもずっと良く通り、柔らかな気がした。
「かつみ、おねむ?」
 そして、まるで猫の子のような甘い声に耳を疑った。
 次男の声を聞いたのは、ほぼ初めてだ。
「もう、寝ちゃった。つまんないねえ、けんちゃん」
 そして、二人は手を繋いで歌い出す。

「Guten Abend, gut' Nacht
 Mit Rosen bedacht
 Mit Naglein besteckt・・・」

 子守歌だった。
 舌足らずな二人の歌うブラームスは、たどたどしいながら音程も発音も驚くほど性格だった。
 ちらりと母に視線を送ると、「家庭教師が教えたのよ」と軽く肩をすくめた。
 驚きの、光景だった。
 光と柔らかな風、そして天使の祝福のような歌声、まるで聖母のように清らかな空気をまとう芳恵と、子供たちに優しい笑みを浮かべる俊一、そして、母の満足げな視線。
 全てが完璧な絵のようなこの部屋で、自分だけ異質だった。
 どす黒い情念も、冷たい決別も、無縁の世界に口をつぐんだ。
 今この場で、全てを露わにする勇気はさすがになかった。

「・・・schau im Traum's Paradies・・・」

 二人が歌い終えて和やかな空気が流れた頃を見計らって、母が声を掛けた。
「寝室へ連れてお行き。私はここで惣一郎に話があるから、二人だけにして頂戴」
「はい」
 俊一が憲二を片手で抱き上げる。
「さ、お前たちも昼寝に行くか」
 清乃はすぐに俊一のもう一方の手に指を絡めた。
「では、私達はこれで・・・」
 なめらかな動作で立ち上がった芳恵は、赤ん坊を抱いたまま軽く会釈する。
「ああ・・・」
 一年ぶりに交わしたというのに、他人行儀で、間の抜けた挨拶だろう。
「おとうさま、今日は、晩ご飯ご一緒できますか?」
「ああ・・・。そうだな・・・」
 振り向きざまにいきなり問われて、また、ひるんでしまった。
 長い不在を、疑うことのない、澄んだ瞳。
「うれしい」
 素直な、言葉。
「おはなししたいことが、たくさんあるの」
 無邪気で軽やかな清乃とは対照的に、憲二は、兄の肩に顔を埋めたままじっと動かない。

 無用の子、と、目の前で言い放ったことがある。
 それで傷つくはずがないと侮っていた。
 足取りもおぼつかない幼児に、解るはずのないと思い込み、会う度に暴言を繰り返すと、ほどなくして石のようになっていった。
 自分は、今よりも小さかった次男の言葉と表情を奪った。
 しかしつい先頃までは、真神の子がそんな軟弱でどうすると、いらだちしか感じなかった。

「それでは、失礼します」
「ああ・・・」
 ひんやりとした俊一の声で、我に返った。
 見回すと芳恵はとうにおらず、清乃と俊一が歩きながら話し始めている。

「ご本、よんで、おにいさま」
「今日はなにがいい?」
「Outside Over There!!」
「また、あの本か。好きだなあ、清乃は」
「ええすきよ。わたしもぼうけんしたい」
「清乃は勇ましいなあ。憲二も、一緒に行くか・・・?」

 子供たちの声が次第に遠のいていく。
 入れ替わりに、メイドたちが茶器を運んできた。
「お茶の一杯も出さずにごめんなさいね。まずは引き合わせたかったから」
「いえ・・・」
 席を示されて、今まで立ちっぱなしだったことに気が付いた。
 当主とも、あろうものが。
「俊一は、とても子供たちの扱いが上手いの。知らなかったでしょう?」
「・・・はい」
「私も、知らなかったわ。おあいこね」
 手早くコーヒーや菓子類が並べられたあと全員退出し、、広いコンサバトリーは母と惣一郎の二人きりとなった。



        -つづく-




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