『秘密の花園』-無花果-1- 

2014, 08. 31 (Sun) 02:00

 仕事がハードで、疲れていったんうたた寝したのですが、目が覚めたので今更新。
 鬼の居ぬ間に積み上げた石がなんとか形になりました・・・。

 最初はさらっと流すつもりでしたが、かなり重い話になります。
 ・・・って、もうこの一話目で丸わかりなんですが・・・。
 真神家の過去がかなりはっきり書けるかと思います。

 ではでは、続きは、本当に月曜日に。



   どの日付のものでも構いませんので、それぞれの記事の下の『拍手』ボタンをクリックすると、おそらく『拍手御礼』というページが展開されるかと思います。
  そこに、小話を添付しています。
  小話は、『拍手御礼』に1話のみ。
  今回は、『すいかずら -夏の声-』です。
  今回は特に短い。
  しかも、モノローグ多いし・・・。
  終戦直前に召集令状をもらってしまった蛍一の独白みたいなものです。
  
  とにかく、楽しんで頂けたら幸いです。


 一応、これからも拍手用小話を月に一度書き換える予定です。
 随時オーダー受付中。
 毎月16日の正午締めで、20日頃に新作アップという形を取りたいと考えています。

 
 これからも何かご希望がありましたら、是非リクエストを拍手コメントかメールフォームでお願いします。


 アクセスして下さったり、拍手やバナークリックで励まして下さる皆さんに感謝しています。
 とくに、励ましの拍手をクリックして下さる方へ。
 本当にありがとうございます。
 頑張ります。

 もしもよろしければ、一言、くださいね。
 感想や要望など頂けると、本当に嬉しいです。

 お待ちしています。



 ↓ このあたりに『続き』ボタンがあると思います。小説をお読みになる方はクリック願います。


  記事の一番下の『拍手』ボタンをクリックして頂くと小話をご覧になれます。
  現在は、『睦み月』で『シゲルとミケ』シリーズです。
  飲んだくれ猟師と化け猫の話。
  楽しんで頂けたら幸いです。

 アクセスして下さったり、拍手やバナークリックで励まして下さる皆さんに感謝しています。
 もしもよろしければ感想や要望など頂けると、本当に嬉しいです。


ブログランキング・にほんブログ村へ


   拍手小話はこちら →

『秘密の花園』 -無花果-1-


 柔らかな感触に、ふと、目を開いた。
「あ、すみません。起こしてしまいましたか」
 緑がかった瞳が申し訳なさそうな色を帯びる。
「いや・・・。ちょっと考え事をしていただけだ」
 胸元に目をやると、肩から薄いキルト毛布を掛けられていた。
 考え事をしているうちに、眠ってしまったらしい。
「夏になったとはいえ、このあたりは風通しが良すぎるからお気を付け下さい」
「そうだな・・・」
 椅子に深く沈めていた身体を起こすと、はらりと毛布が落ちかけた。
「どうかそのままで」
 そう言うと身をかがめ、わずかに触れない距離で毛布を胸元から足もとまでに引き下げてきた。
「少しお待ち下さい。何か温かい飲み物を運びます」
 この息子は、そういう気遣いをいつも見せる。
 子供たちの中で一番目立たなかった三男はいつのまにか誰よりも大きく育ち、成熟した男へと成長したのだと、母屋へ足早に去りゆく背中を見つめ、改めて思った。
 勝己。
 一つ間違えば、こうして会話を交わすことはなかった、最後の子供。
 ほどなくして彼は大きな盆にティーセットを載せて戻ってきた。
「・・・それは」
「ああ、果樹園に植えていた無花果が食べ頃になっていたのでもいできました。先ほど厨房の人たちと食べてみたら美味しかったので」
 瑞々しく皮の張った果実を取ると、慣れた手つきであっという間に皮を剝き、切り分けて小皿に盛り銀のフォークを添えて差し出してきた。
「召し上がりませんか。紅茶に合います」
「うむ」
 肯いて口に運ぶと、特有のねっとりした甘さが舌に広がった。
「そういえば」
 ふと気が付いたかのように首を傾けてぽつりと言った。
「どこかの地方では、今日、無花果を食べる風習があるとか」
「なぜだ?」
「今日は、夏至ですから」

 夏至。

 勝己と、初めて会ったのは夏至の、昼の庭だった。
 スイスの母の別荘で会った時、もう既に生まれて三ヶ月以上経っていた。

 今でも時々思い出す。


 窓を開け放した、コンサバトリー。
 およそ一年ぶりに会った下の子供たち、そして東京にいるはずの長男の俊一、母らに囲まれた中心に、淡い桜色の服を着た妻が守られるように椅子座っていた。
 そして、その腕の中には白い包みが大事そうに抱えられ、ゆったりと揺すられている。
「男の子よ。名前は勝己。俊一がつけて、出生届も出してくれたわ」
 母の言葉が理解できずに、口を半分開けたまましばらく動けなかった。
 全く間抜けなことに、この瞬間まで自分は赤ん坊の存在を知らされておらず、心身共に病んで静養に出たきり一年もなしのつぶてだった妻に苛立ち、そろそろ離縁するかとすら考えていた。
 芳恵は、母を失った俊一のために据えた後添えだった。
 出産後間もなく亡くなった最愛の妻の代わりになる者はいるはずがないが、家を守るために仕方なく迎えた。
 そうした経緯で選んだ遠縁の芳恵は、若さ以外取り柄がなく、古びた容姿で存在感が薄く、陰気で自分のないつまらない女だった。
 やはり、俊一の母としてそして真神の総領の妻としてふさわしくなかったのだと独り合点し、芳恵の産んだ子供たちともども実家に返す手配をするよう秘書に言いつけたところ、スイスへ引き取り彼らの面倒を見てくれていた母から連絡が入った。
 別れるなら、こちらへ来てけじめをつけろと。
 そうでないと一切のことはこの母が認めないと告げられ、書類を揃えて飛行機に乗り込んだ。
 一年も会っていない妻と子供たちに未練はなかった。
 乳飲み子だった俊一も、もはや18歳。
 母親の必要な年ではない。
 むしろ、これでようやく自分も俊一も身軽になれるとせいせいしていた。


「おとうさま、いらっしゃい」
 ほんの数メートル先を歩けずに立ちすくんでいると、腰まで伸ばした黒髪から艶々とした光を放ちながら、長女の清乃が飛びついてきた。
「おしごと、おつかれさまです」
 漆黒の瞳を輝かせて、抜けるように白い肌を薄く染めて心から嬉しそうに清乃が笑う。
 こんな表情をする子供だったか。
「清乃・・・」
 なめらかな頭に手をやると、静かに唇をほころばせた。
「かつみはね、まいにちたくさん、笑ってるの」
 甘い、野いちごのような香りがたちのぼる。
「えくぼが、とてもかわいいの」
 気が付いたら、手を引かれていた。
「おじいさまも、あかちゃんのときにえくぼ、あったのかしら」
 頼りない小さな指先なのに、確実な力を持って、歩きを促す。
「なぜ?」
 思わずこぼれた言葉に、無垢な眼差しがまっすぐに返ってきた。
「だって、瞳の色が、同じだもの」
 開け放たれた窓から、風が静かに流れ込み、通り抜けていく。
 若葉の香りに寄せて夏の始まりを告げた。




        -つづく-




      < ↓ポチリとしてくださるとうれしいです↓ >

  br_decobanner_20100412095827.gif  にほんブログ村 小説ブログ BL小説へにほんブログ村 

スポンサーサイト

タグ:続きを読む

コメント

コメントの投稿

非公開コメント