『秘密の花園』-佳客の宴 6- 

2014, 06. 18 (Wed) 08:53

 やっと終わった・・・。
 本当は、ちょっと終わりの雰囲気がちがうのですが、まあ、いいか・・・。
 憲二は可南子のことくらいは一応知っていましたよ、と言う小話のつもりが、また結構な長さになりましたね・・・。
 しかも、がっつり関わっているし。
 あとは、その後の話も、あります。
 そのあたりを今月の拍手御礼にしたいのだけど、どうなるかな・・・。

 とりあえず、印刷に回す作業の方にこれから集中したいと思います。
 ほんっと、洒落にならんわ、このままじゃ・・・。
 ページ数が多いので、なるべく印刷が安いタイミングを狙いたいくせに、まだ整っていないていたらく・・・。
 
 昨日はベランダと窓を洗って一日が終わったので今日、取り返したいと思います。
 逃避じゃないです、昨日の作業は・・・。
 夏が来る前に一度洗わないとサッシの中に黒い妖精が寄生する可能性があるので、これは恒例行事です。
 しかも、仕事が休みで雨の日ってなかなかないから貴重なのですよ。
 ・・・と、いいわけを。

 夕方にはブログの目次とまとめサイトの方に『佳客の宴』を載せますが、今は、とりあえずこれで。


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『秘密の花園』-佳客の宴 6-


 可南子が買ってきたというドイツパンと、風呂上がりに勝己が手早く作った甘夏のサラダと、じっくり煮込んだポトフを三人で囲む。
 東南アジアと中近東、そして欧州を中心に転々として育った可南子の話は機知に富み、まるで昔からの知合いのように和やかな雰囲気の夕食となった。
 留学の話で盛り上がる二人をそのままに台所を片付けた勝己がコーヒーを淹れ始めた頃、携帯電話が鳴った。
「あ、私だわ」
 ふいに、顔つきが変わる。
「はい、松永。・・・はい、はい。うん、それで?小林先生はなんて?あ、そう。解った、すぐ行く」
 冷静な声が、部屋の中の空気を変えていく。
「急変?」
「うん、そう。小林先生が昨日オペした人がちょっとね。なのに、どうやら接待で連絡つかないらしくて。一刻を争うほどではないけれど、判断を要するようだから行くわ」
 荷物をまとめ始めた可南子に、三分の一ほどコーヒーを注いだマグカップを渡すと、受け取ったそれに口を付けて飲み干す。
「俺も行こうか?」
「なに言ってるの。昼過ぎに戻ったばかりじゃない。しかも、あなたはもう小林チームじゃないんだから」
 失礼、と一言断って長い髪をくるりと一つにまとめてピンを刺す。
「慌ただしくてごめんなさい。急患が入ったからこれで失礼するわ。憲二さん、お元気で」
「あ、はい。そちらこそお元気で」
「ありがとうございます。では」
 先ほどの花びらのような柔和さは払拭され、怜悧な瞳の医師がすっくと立ち上がる。
「送るよ」
「いいわ、タクシー拾うから」
 廊下へ向かう二人の背中をぼんやり眺めていたが、ソファに放り出されたもう一つの携帯電話が振動していることに気が付き、それを手に追いかけた。
「勝己、携帯が鳴って・・・」
 廊下に出た瞬間、目に入ったのは勝己の広い背中と、彼の首に添えられた細い指先だった。
 大樹に、蔓が絡んでいる。
 紫と、白い花弁の雨。
 したたる、甘い香り。
 花に埋め尽くされる。
 そう錯覚した。
「あら、失礼」
 すっと、振り返った二人が僅かな距離を保つ。
「あ、ごめん・・・。この携帯は、どっちの?鳴ってるんだけど」
「ああ、俺の。仕事の呼び出し用のやつ」
 左手を伸ばして電話を受け取り、通話に切り替えた。
 右腕の中には、まだ可南子がいる。
「はい、真神です。・・・はい、ああそれなら尾木婦長が・・・。うん、なんなら行こうか?・・・そうか、なら俺のフォルダーで・・・」
 通話中にアイコンタクトを取ったらしい二人は、すんなりと自然に離れた。
「別件みたいだから、行きます」
 可南子は人差し指を唇に押し当てて小声で告げたあと、ふいに悪戯を思いついた子供のように瞳をきらめかせる。
 つま先立ちになり首を伸ばすと、仕事の話に集中する勝己の頬にそっと唇を押し当て、すぐに身を翻した。
 ひらり、とまるで風に舞う花びらのように軽やかだ。
「さようなら」
 軽く会釈されて、憲二は苦笑しながら返した。

 藤の花。
 そういえば故郷の山藤は多分、今が盛りだ。

 葉の形と上品な色合いは好ましいが、香りが強く蜜が甘露であるせいか、吸い寄せられた蜂が頻繁に飛び交うあの花が苦手で、自分は遠巻きにしか見たことがない。
 新緑の木々と競い合うように山を紫に彩る、藤の花。
たおやかな花様とはうらはらに、生命力に溢れた木だ。

 ぱたりと扉が閉まる頃、勝己の通話も終了した。
「悪い、看護師との引き継ぎがうまくいっていなかったみたいで・・・」
 通話を切りながらの謝罪に、つい、言葉が滑る。
「謝るのは、そこか?」
「え?」
「・・・いや、なんでもない」
 花の香りなんて、するわけがないのに。
 知らず、ため息が漏れる。
「・・・で、行かなくて、良いのか?」
「ああ、一応明日の昼まで休みの予定だから」
「そうか。なら、支度しろ」
「・・・は?」
「俺はもう疲れた。帰るぞ」
「憲?」
「お前の安物ベッドじゃ眠れない」
「うん・・・」
 こくりと肯く勝己は、犬のように言葉の先を待っている。
 その瞳の前に絆創膏をつけた手を見せつけた。
「傷がふさがるまで、俺のとこに来いよ」
 子供みたいな言い訳をしている自覚は、ある。
 だけど、他に理由が思いつかない。
「俺、明日また当直だけど・・・」
 現実を、控えめに提示されて癪に障る。
「いいから。とにかく今すぐ帰りたいの、俺は」
 この、息苦しい空間から、逃れたい。
 ここは、いやだ。
「・・・帰りたいんだってば」
 いらいらとその手で髪をかき上げようとすると、手首をやんわりと取られた。
「わかった。・・・わかったから、憲」

 何が解ったというのか。
 自分でも、解らないというのに。

 唇を噛むと、するりと温かい手の平が背中をなで下ろした。
「とりあえずもう一度座って。コーヒーがまだだろう」
 促され、部屋へ足を向ける。
「・・・飲んだら、すぐ、な」
 駄々をこねると、勝己はふっと笑ってもう一度背中を撫でた。
 暖かい、感触。
 背中に、奇蹟が残っている。
 勝己の、しるしだ。


 ざわざわと、心の中で薄緑の葉がざわめいた。
 逃げてと、
 風が囁く。
 絡め取られる前に。
 香りが、追いかけてくる。






                   -おわり-




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