『秘密の花園』-佳客の宴 3- 

2014, 06. 05 (Thu) 23:55

 相変わらず無駄な抵抗をしています。
 6時に夫を送り出してから、紅茶一杯飲んだきりでずーっとパソコンに向かって、ようやく完成したけれど。
 夜にまた更新するつもりの懲りない私。
 本当に出来るのか。
 まあいいや、とにかく朝ご飯食べないとな・・・。

 ところで。
 一応ですが、10/19の池袋J庭を申し込みました。
 とにかくこういうのに参加するのは物凄く久しぶりで。
 色々戸惑っていますが、とりあえず申し込むことでおのれを追い込もうかなと。
 でないと、仕事のない日はついつい眠って一日終わりますからね。
 こういうことを書くと言霊さんがやってきそうですが、受かっても落ちても行きます、J庭。
 受かったらもちろん行商しますが、落ちたら師匠と見学ツアーってところでしょうか。
 関東方面は友人が結構いるので、自分にご褒美的な・・・?旅かな。
 もう既に飛行機と宿の手配済みで、家庭の事情などがない限り行くつもりにしています。
 とりあえず、今月内に『恋の呪文』と『ずっと、ずっと甘い口唇』を発行して、余裕があれば後一冊。
 10月までに頑張りたいという、決意表明です(笑)
 ああ、鬼が笑ってるわ・・・。

 今日は、この話のメイン(?)、お風呂タイムです、お待たせしました。
 とはいえ、基本、作者がへたれなので・・・。
 それに、扉のむこうには可南子もいるわけですし。
 楽しんで頂けると良いな。


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  現在は、『睦み月』で『シゲルとミケ』シリーズです。
  飲んだくれ猟師と化け猫の話。
  楽しんで頂けたら幸いです。

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『秘密の花園』-佳客の宴 3-



「相変わらず甕棺みたいな湯船だなあ」
「・・・俺らが生まれる前からあるマンションなんだから、こんなもんだろう」
 ほぼ正方形の小さな湯船で170センチ半ばの身体を器用に折りたたみ、側面に背中を寄りかからせている憲二の頭を、洗い場の椅子に腰を下ろした勝己が丁寧にシャンプーをすり込みマッサージする。
 これがなかなか上手くて心地よい。
 本当に器用な男だ。
 医師でなくとも、美容師でもやっていけたんじゃないか。
 ちょっとした王様気分を味わえ、憲二は悦にいる。
「いや、お前、実際この中入ってんの?」
「入ったことがない・・・と言うか、入る暇がない」
 若手医師は激務であると決まってる。
 彼が五分待てと言い置いたのは、久しぶりに使う湯船の様子を見るためだったらしい。
「なるほどね・・・」
 弟は、高校一年生になる頃には180センチ近くまで育ってしまった。
 そして今は、服も、家具も、日本の基本サイズに合わないらしく、窮屈そうな顔をする。
「それに、女がいるとこんなこじゃれた物があるんだな」
 右手の指先でぱしゃりと水面を弾いた。
 こぼれんばかりに満たされた湯船の中はドイツ製の入浴剤で染められ、まるで豆乳風呂に浸かっているようだ。
「前に誰かから貰ったのがあった」
「女か?」
「たぶん・・・」
「お前も隅に置けないな」
「憲、洗い流すから目を瞑って」
 淡々と次を促す弟が憎らしくなり、憲二はいきなり泡だらけになった頭をまるで犬のようにぶるぶると勢いよく振った。
「うわ・・・っ、ちょっと、憲!!」
 飛び散った泡の多くは油断していた勝己の全身にかかったらしい。
 ついでに、振り返らないまま湯水も手ですくってばしゃばしゃとかけてやった。
「・・・!!けん、憲!!ちょっと、俺、服のまんまだって!!」
 勝己はTシャツにジーンズといういでたちのまま風呂場に入っていた。
「彼女が来てるからって気取りやがって。お前も脱げばいいじゃん」
「いや、ちょっと、勘弁してくれよ・・・」
「ははは!ついでにお前も洗っとけよ!!」
 調子に乗って、なおも湯をかけようとすると、ふいに背後から両手を取られた。
「・・・頼むから、大人しくしてくれ、憲。それ以上は傷に障る」
 両手首を、確かな力につなぎ止められる。
 ぴちゃん、と額に生暖かな水滴が落ちた。
 誘われて見上げると、思わぬ近さに、勝己の顔があった。
 視界に映るのは、さかさまの、勝己。
 短く刈り込まれた髪はずぶ濡れで、額の半分を覆っていた。
 いつもと違う角度から見下ろされているせいなのか。
 尖った鼻梁と長い睫に見とれてしまった。
 引き締まった顎を水が伝い、また、ぽたりと頬に落ちる。
「あ・・・」
 なぜか、声が、出ない。
 逆光の中、瞳が緑に光る。
 端正な顔。
 そして、男の顔だ。
 見たことのない、
 喉の奥が、急に乾いていく。
 息が、出来ない。
「・・・ほらみろ。絆創膏もこんなに濡れて・・・」
 鼓膜を、優しく愛撫する、声。
 立ち上る水蒸気と、入浴剤の芳香、そして勝己との境目が解らなくなってきた。
 狭い空間が、勝己に埋められていく。
「目を閉じてろ。すぐ終わるから」
 気が付いたら、右手はとっくの昔に解放されて湯船に沈められ、軽く左手だけ縁に縫い止められていた。
「左手、また出血しているみたいだから、そのまま下ろすなよ」
 すっと、手首の内側の敏感な部分を軽くなでられてざわりと背筋になにかが走る。
「あ・・・。うん」
 声が、上ずってしまった。
 なぜか、それを恥ずかしいと思ってしまう。
 沸き上がる何かを知りたくなくて、自然と目を閉じた。
「やれよ」
 くいっと顎をそらして、わざと傲慢な兄のふりをする。
「ん。じゃあ、ちょっと待って」
 いつもの、弟の声。
 ふいに、熱が、離れていった。
 思わず追いかけた指先をごまかすように、腕を伸ばして湯船の縁に沿わせた。
 カランを回してシャワーの温度を調節している気配を感じた。
 指先とシャワーの湯が同時に額の生え際に触れた時、思わず肩先を揺らしてしまう。
「あ、ごめん。もしかして熱すぎた?」
 すぐに身を引こうとするのをとどめた。
「いや。目を瞑ってるからちょっと過敏になっただけだ」
「じゃあ、続けても?」
「ああ。さっさとやれよ。だんだん湯だってきた」
 ふっと、吐息を感じる。
 我が儘な自分を、穏やかに笑って許す弟の顔が想像できた。
「わかった。すぐに終わらせる」
 最初と同じく慎重な指づかいで泡を落としていく。
 だけど。
 先ほどのように楽しめない。
 頭皮を滑る指先が、
 流れ落ちる湯が、
 むき出しの神経を刺激する。
 そろりそろりと身体の内側から沸き上がる感覚に耐えきれなくて、思わず奥歯をぎゅっと噛みしめた。
 つま先までじんじんとしびれてくる。
「憲?大丈夫か?」
「ん」
 大丈夫。
 だけど、解らない。
 この感覚は、いったい何だ。
 額が、耳が、首筋が、肩が、まるでぺろりと一枚剝かれてしまったようだ。
 力を込めないと、何かが唇から溢れてしまいそうな気がした。
 全身をこわばらせてせき止める。
 今は、早く終われと、心の中で強く念じた。



                   -つづく-




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