『秘密の花園』-薄闇の桜 3- 

2014, 05. 22 (Thu) 00:01

 今回は、予約投稿で。
 初めてかな、この指定。
 今これを書き上げたのは八時過ぎなんですが、明日は仕事で投稿できないと思ったので、試しに予約投稿という形にしました。
 でも小心者であざとい私は、時間を日付変更線に沿わせている・・・。
 どうせ、十二時過ぎまで起きてるんだよな・・・。
 それか、翌朝6時にはまたパソコン立ち上げるよな・・・。
 と、いうわけであんまり意味がないけれど、予約投稿で。

 しかし、珍しいよな、我ながら予告通り三回で終わらせるなんて・・・と思ったら、今回物凄く長いです。
 しかも、うろうろしています。
 暗いです。
 始めの素っ頓狂な流れはどうした?と聞きたくなるのですが、そもそものメインが桜なので、お許し下さい。


 『秘密の花園』を初めて読まれる方は『まとめサイト』でどうぞ。


 そして、このまとめサイトを見ながら書き上げた私・・・。
 は。
 これも印刷した方が良いのか。

 いやいや。
 その前に大きな二つがまだ印刷所に辿り着いていませんから!!

 じ、実は逃避だった今回の小説。
 逃避でこんな話。
 すみません。

 書きながら、この本を思い出しました。

 
おおきな木おおきな木
(2010/09/02)
シェル・シルヴァスタイン、Shel Silverstein 他

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 ダメ男を育て上げてしまったことに気が付かない、幸せな木の話です・・・って、そんなバッサリ言って良いのか。
 ってことは、憲二はダメ男?・・・ですよねえ。
 あくまでBLなので、老人になる前になんとか帰ってきましたけど・・・。


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  現在は、『睦み月』で『シゲルとミケ』シリーズです。
  飲んだくれ猟師と化け猫の話。
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  『秘密の花園』-薄闇の桜 2-

「そういやあれを、俺が犬の交尾みたいで恥ずかしいって言ったら、お前、チベットだかヒンドゥーだかの宗教画みたいに神聖だって大まじめに返したよな」
 幹に背を預けて、憲二はあの時と変わらない東屋を見つめる。
「そこは、忘れて欲しかったな・・・」
「なんで?」
「なんででも・・・」
 多分、あれから一度も、彼はこの桜の木より先に足を踏み出したことがない。
 どれだけ時が経っても、風化することのない記憶。
 この木を恋しがってやってくるくせに、まるで見えない境界線があるかのように東屋へ続く石畳に足を乗せようとしない。

 あの日。

 彫像のように立ちつくす憲二を、なんとか引っ張って桜の木から引きはがし、その場を後にした。
 東屋の二人は、自分たちに気付いていたのかもしれない。
 でも、愛し合うのを止めなかった。
 風に乗って、彼らの声が、音が、白い花びらと一緒になって追いかけてくる。
 夢中になって、階段を駆け下りて、憲二の手を握ったまま走り続けた。
 足をもつれさせ、二人で倒れ込んだのは、いったい何処だったか解らない。
 十二になる憲二に、性に対する知識はあった。
 当時敷地内にいた動物や昆虫の交尾も見たことがある。
 だけど。
 あまりの生々しさに、憲二は泣いた。

 憲二は、峰岸が好きだった。
 数年前に秘書として長兄の傍らに立って以来、憲二が峰岸を兄の一人のように慕い、やがてそれは淡い恋心に発展してくのを、つぶさに見ていた。
 おそらくは、長兄も気付いていた。
 その証拠に、憲二が峰岸を慕えば慕うほど、俊一の憲二に対する態度は硬化していった。
 そして、二人の仲が完全に決裂したのは、この時だったのかもしれない。
 幼い子供が親の夜の姿を目撃してしまうと、無意識のうちにどちらかを嫌悪し、無意識のうちに強く憎むようになることがたまにあるらしい。
 憲二の憎むべき対象は俊一で、峰岸への恋心は更に募っていった。
 その傾倒ぶりは痛々しいほどで。
 しかし、峰岸は俊一以外の全てを拒み、憲二を顧みることはない。
 憲二の心がじわじわと闇に侵されていく。
 だから、たまらず言ってしまった。
 彼らは歓喜仏のように一対なのだと。
 固く抱き合った二人が離れることは、ない、と。
 あの時の自分はまだ子供で。
 残酷だった。
 自分は、憲二のために生まれてきたのに、どうして憲二は自分のものでないのか、不思議だった。
 いつもそばにいるのに。
 一番近くにいるのに。
 なぜ憲二は気が付かない。
 気が付いて欲しかった。
 自分の存在に。
 だから、わざわざ書斎へ連れて行き、書を開いて見せた。
 憲二を、振り向かせるために。
「あの時の二人は、この絵みたいだ」
 二人の仲は揺るがないのだと解りさえすれば、この不穏な霧も晴れていくものだと思い込んでいた。
 その一言が、どれだけ彼の心を傷つけ、粉々に砕いてしまうかなんて、思いもせず。
 
「俺は、十歳にもならないお前の口から密教の話が出るなんて驚いたから、覚えてるんだよ。コイツ、ませてるなーって」
 くっくっくっと、楽しげに肩を揺らして笑うけれど。
 あの時からまもなく、憲二は狂いだした。
 まだ中学生だったというのに、彼はこの家のあちこちに誰かを引き込むようになった。
 それは秘書であったり、遠縁の者であったり、後援者の誰かであったり。
 時には担任すら誘惑し、絡め取っていく。
 男女問わず、誰もが憲二に溺れた。
 けれど憲二はいつも冷めていて、相手が少しでも執着するそぶりを見せるとあっさり絶つため、時にはもめ事にまで発展し、刃傷沙汰にまでなったこともある。
 しかし、肝心の長兄と峰岸は静観を貫いた。
 どれほどの人の仲を見せつけても全く動じない二人に、憲二の心はますます渇いていく。 
 それは、もう自傷行為ともいえる状態だった。
 更に、高校に上がる頃になってようやくその乱行ぶりに気が付いた父が何度かいさめ、時には手を上げたが効果はなかった。
 逆にますますエスカレートしていき、醜聞がどうにも押さえきれなくなるに至り、東京の名門校へ転入させた。
 東京へ移っても憲二が人肌を求めることを止めたりはしなかったが、田舎の知人たちを食い尽くすよりましだと父は結論づけた。
 憲二は並外れた頭脳の持ち主であったというのに高校なかばまで地元で近所の公立高校に押し込められ、大人たちは誰もその才に気付かず、羽をもがれた鳥のようだった。

 それがようやく窮屈な真神の地から解放され、知的好奇心を満たすことができる都心に移り、少しは落ち着いたかに見えたが、憲二の全神経は常に兄たちへ向かったままだったのだと思う。

 そして、突然の事故。
 二人の、死。

 今も、憲二はどこか虚ろなままだ。

「かつみ・・・」
 時々、宝玉のように透明になってしまった瞳で、彼は腕を伸ばしてくる。
 寒くて
 乾いて、
 疲れ切った憲二。
 子供のように温もりを求めるその身体を、そっと背後から抱きしめる。
 今度は、壊さないように。
 今度こそ、生かすために。
「かつみは・・・暖かいな」
 お前が望むなら、いくらでも温めてやる。
 そう、叫びたいのを飲み込んで、子供の頃のままのふりをする。
 自分は、小さなままの弟で。
 犬のように従順な、理解者。
 かつみ、は。
 男、で、あってはならない。
 心の奥底を、決して見せてはならない。

 桜が咲いて、後を追うように芍薬や桐や藤が咲いて・・・。
 季節が巡る。

「やっぱり、この庭じゃなくちゃ、な」
 腕の中の憲二が、満足げなため息を、つく。
「そうだな・・・」
 夕闇の寒さに冷えたふりをして、少し彼の身体に回す腕に力を込める。

 憲二は桜以外の花の名前を覚えない。
 だけど、この庭を愛している。
 何度も、こうして戻らずにはいられないほどに。
 

 先日、義兄の愛人が妊娠したと聞いている。
 それが、おそらく男の子だと言うことも。
 政治家としての跡取りはこれで目処が付いたと思っている。
 甥の春彦は、政治家には向かない。
 あまりにも清らかで、優しすぎる。
 そんな春彦に、自分たちが代わってやれなかった仕事を押しつけるわけにはいかない。
 だから、野心的な彼女の子供の誕生を心から喜んでいる。
 だけど、この広大な本邸を維持するにはやはり自分が動くしかないだろうと思い始めても、いる。

 憲二が、この庭が必要というならば。
 守っていこう。
 それが、憲二の心を無残に壊した自分の罪の代償と出来るなら。

「また、来よう」
「うん。次は・・・なんだっけ。池に浮かぶ花が見たい。寺とか・・・、法事に良く出てくる・・・」
「睡蓮か?」
「ああそうそう、それ」

 憲二が、あざやかに笑う。

 また、この庭で。
 そう、言うならば。
  
 それだけで、十分だ。



        -おわり-


 
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