『秘密の花園』-薄闇の桜 2- 

2014, 05. 21 (Wed) 08:49

 おはようございます。
 朝ですね。
 福岡は昨日の雨が上がり、ちょっと清々しい朝ですよ。

 そんな朝に、これをアップする私はどうなんだろう。
 でも、こうでもしないといつまで経っても終わらない自覚があるので頑張りました、朝の6時から・・・。


 『秘密の花園』を初めて読まれる方は『まとめサイト』でどうぞ。

 人間関係を整理します。
 真神家には四人の子供がおり、出産の折に亡くなった先妻の子が俊一、後添えの子が清乃(『ずっと~』の中村春彦の母)、憲二、勝己。
 俊一の秘書の峰岸覚は、彼の幼馴染み兼使用人兼恋人です。
 二人の話もまとめサイトのほうにありますのでどうぞ。

 ところで5/20まで、前回の始めの数行、憲二と勝己の名前を取り違えていることに、私自身が気が付きませんでした。
 すみません、修正済みです。

 あと一回で、今度こそ終わらせます。
 そして、拍手もなんとかするんだ・・・と言う野望。
 野望で終わらせたらいかん、俺・・・。


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  現在は、『睦み月』で『シゲルとミケ』シリーズです。
  飲んだくれ猟師と化け猫の話。
  楽しんで頂けたら幸いです。

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  『秘密の花園』-薄闇の桜 2-


 古代とも言える頃からこの土地を支配してきた真神家の本邸は、いわゆる都心の御苑なみの広さだ。
 昭和になる前に西洋の建築士に建てさせた洋館を母屋に、様々な離れがあり、それぞれに合わせた庭が造られていた。
 その奥をさらに進むと小さな山へと続き、その頂に桜の大樹がある。
 太い幹が地面近くまで伸び、その隅々に花を付け、満開の時は壮観な眺めだ。
 樹齢がどのくらいなのか解らない。
 ただ、昔からそこにあったと母が言っていた。
「こいつに会いたくて、わざわざ来たんだよ」
 回遊させるために蛇行している小さな石段を、時間をかけて登って辿り着いた先に、老木が見事な花を咲かせ、ゆっくりと枝を揺らしていた。
「ただいま」
 憲二は両腕を木の幹に回し、ごつごつしたその木肌に頬を当てる。
 夕日に照らされた小さな花びらがあかね色に染まっていく。
 目を瞑ってゆっくりと息を吸い、春の香りを楽しむ憲二の頬も薄く染まっていた。
 風が、花びらをひとひら、ふたひらと散らしていく。
 ついつられてその先を目で追う。
「ふふ・・」
 ふいに、憲二が肩を揺らして笑い出した。
「どうした?」
 なんとなく何を思っているのか予想はついたが、問わずにいられない。
「ここでさ・・・。交尾してたよな、あいつら」
 視線の先には、東屋。
「交尾って・・・、憲・・・」
 露悪的な言い方に眉をひそめる。
 この庭園は広すぎて、随所にそれぞれの趣向を凝らした東屋やちょっとした別邸が点在する。
 その中で、桜の木のそばに建てられた東屋はなぜか洋風で石造りのしつらえだった。
 そこで、長兄が秘書の峰岸と抱き合っていたのを見たのは、やはり桜の頃だったように思う。
「いや、あれは交尾以外言いようがないだろ。俊一が尻を高く上げて、猫みたいに鳴いて。びっくりしたわ」
 俺達が見ているとも知らないで。
 憲二の、端正な顔が歪む。
「憲・・・」

 何年経っても、忘れていないのか。
 忘れられないのか。
 なにひとつ。
 胸に鋭い痛みが走る。

 あの時、自分たちはまだ小学生だった。
 代々続く広大な屋敷に住み、誰もが知っている名士の子にもかかわらず、供もつけず徒歩で地元の公立の小学校に通う自分たちは、あきらかに異分子だったと思う。
 幼い頃は何も考えずに一緒に戯れても、年を経るごとに同級生たちはどう接するべきかという戸惑いが増して自然と距離が空いていく。
 幼少期は身体が弱かったらしい兄の俊一は小学校をかろうじて地元の私立、中学校からは東京の名門校へ編入していたし、公の場に何かと伴われ、些細なことにも祝いの場を設けられたことと比べると、どうしても冷遇されているように周囲の目に映った。
 俊一以外に跡取りは存在しない。
 父は周囲に内外にそう知らしめたかったのだろう。
 確かに、効果はあった。
 父親に軽んじられている、むしろ嫌われていると子供たちに解釈された自分たちは、時々群れから弾かれ、嘲笑すらされることもあった。
 子供は、時として恐ろしく残酷だ。
 いらない子供、捨て子、鬼っ子とはやし立てられたこともある。
 耐えられなくなった憲二が自分の手を引いて学校を飛び出し、庭のどこかで過ごすことが増えた。
 繁華街に出ることはない。
 どこにいても人目があるからだ。
 そして父の不興を買うのを畏れた学校側は、まっすぐ自宅へ戻る自分たちの行動を不問に付し、留守を預かる家人たちも子供たちの早すぎる帰宅をうすうす気付いていながら、騒ぎ立てるべきでないと判断したのか、誰にも咎められることなくそれはしばらく続いた。
 だから、俊一と峰岸は知らなかった。
 最奧の東屋が弟たちの避難場所の一つだと。

 ひとひら、ふたひら。
 ふわふわと、白い花びらが宙を舞う。
 風に吹かれて飛んでくる桜の花びらに誘われて、二人で競って老木を目指した。
 いりくんだ小道を駆け抜けて先に辿り着いたのは、運動能力では勝っていた自分だった。
 さすがに呼吸がきつく、太い木の幹に両手をついて、肩で息をしているところに追いついた憲二が背後から飛びつき、二人で笑い合おうとしたその時、その先にある東屋の異変に気が付いた。
 まずは、声、だった。
 高く、低く、時には唸るような、人の、声。
 それは一人ではなく、絡み合って編み出される歌のようで。
 瞬時に、自分は何が起きているか理解した。
 なぜなら、そのような場に居合わせてしまったのは初めてではなかったからだ。
 でも。
 憲二は、初めてで。
そして、知らなかった。
 俊一と、峰岸覚が、身体を繋ぐ仲だということを。
 
「あっ、ああ・・・っ」
「・・・っく、俊・・・っ」
 桜が咲いているとは言え、まだ少し肌寒さの残る季節というのに、俊一はシャツしか身にまとっていなかった。
 少し洋風の趣のある石造りの東屋の、同じく石で造られたテーブルに縋って、俊一がむき出しの尻を掲げ、その中心に峰岸がスーツの前をくつろげただけの格好で腰を打ち付けていた。
 膝を震わせて身体を支えられないのを見て取った峰岸が、いったん身体を離し、床にくずおれた俊一を大切そうに抱き上げてそのテーブルに座らせ、口づけを施す。
 両腕をその肩に回した俊一が何事か囁きながら、ゆっくりと足を開いていった。
 甘く口づけを交わし合いながら、俊一が長い足を広げ、身体をくねらせる。
 そして、それが合図のように峰岸が白い足を抱え上げ、再び俊一を貫いた。
「あっ、ああーっ」
 首をそらして、歓喜の声を、上げる。
 快楽のまっただ中にいる二人は、すぐ近くで目を見開いたまま固まる憲二と自分に気が付かず、長い時間を掛けて何度も愛し合った。
 チャコールグレーのスーツを着込んだ峰岸の身体に、俊一の長い手足がきつく絡まり、それが昼のやわやわとした光を帯びて白く光る。
 貫いて、
 貫かれて。 
 二人は悦びの声を上げる。
 まさしくそれは、祖父の遺した書斎で見た、歓喜仏のようだった。



        -つづく-


 
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