『女王陛下と俺-百年の、孤独-』-5- 

2014, 02. 04 (Tue) 23:43

 ようやくまとめて眠れるようになった私と入れ替わりに夫が不調でして・・・。
 食事でなんとか改善できないかと試行錯誤している日々です。
 昨日は、冷蔵庫にてずっと出番を待っていた可哀相な金柑と柚子と橙とスイートスプリングを加工してマーマレードもどきを作ってみました。
 ・・・それで何とかなるわけではないけれど、なんとかなってくれ・・・と、呪文を掛けてみたけど、どうだろう。
 
 それもあってちょっとパソコンの前に座る時間が作れませんでした。
 また間が空いてすみません。

 今日も『女王様と俺-百年の、孤独-』の続きです。
 正直なところ、今回で終わると見込んでいたのですが、池山がそれを阻む・・・。
 だらだらとすみませんが、他の話にも色々リンクしているので、この雑談にお付き合い下さい。

 では、出来れば今日は夜も更新したいと・・・。
 言霊様に頼ります。





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  現在は、『睦み月』で『シゲルとミケ』シリーズです。
  飲んだくれ猟師と化け猫の話。
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『女王陛下と俺-百年の、孤独-』-5-

「五年前の春と言えばさあ」
 左右の指をゆっくり折り曲げ数えながら、池山はぽつりと言う。
「俺達が出会った、あのパリコレの時だよな?」
 隣で氷をグラスに足そうとした江口が手元を滑らせ、カラコロと床に転がった。
「ああ、そうだな、そういえば」
「・・・すっげー、ハードスケジュールだよな。あん時お前、お呼びがかかったメゾンのほとんど断ってなかったじゃん。ヨーロッパ三カ国回った狭間で一週間寺に籠もったのかよ」
「そうなるな。開をほとんど鎌倉に預けっぱなしで稼ぎまくったとしか記憶がない。しかも研修会の過酷さの方がよほど印象に残ってるよ。二月下旬の京都なんて真冬と変わらない寒さだったってのに、私も有希子さんも風邪一つ引かなかった。今思えば若かったよな」
「まあ、あの乱取りでブレイクしてぐいぐい食い込んだしな」
 その年の九月のコレクションではニューヨークの方からもオファーが来たくらいだ。
「とにかく、開を大人になるまで独りで育てられるという見通しが欲しかったから、なんでもがむしゃらにやっていたとしか・・・」
 心のどこかに焦りがあった。
 そして、いつも心が乾いていて、眠れなかった。
「今のお前もたいして変わらないけどな」
「いや、今は要領を得てきたから、随分違うさ」
 現在はモデルの仕事もかなりセーブするようになり、こうして池山たちとゆっくり呑んだりも出来る。
「話は変わるけど・・・」
「うん?」
「徹と寝ちゃったよな?」
「・・・まあな」
 長谷川が苦笑しながら素直に肯いた途端、シンクの前方から何か物がひっくる返る派手な音がした。
「す、すみません・・・。ええと・・・。俺、ここ出ましょうか」
 パンドラの箱が開ききっている。
 江口は次に何が出てくるのか、正直恐ろしかった。
「いや、いいよ。どうせ池山の口から筒抜けだろう?」
 確かに、そうなのだが。
「あ、ひどいなー。俺、秘密は守る男よ?」
「どの秘密を守ってくれているのか、一度聞いてみたいところだけどな・・・」
 ふと、口元に指をあてた後、そっとため息をついた。
「ん?なに?煙草?」
「いや、本気でやめたところだからいらない」
 時々、この二人はまるで長年連れ添った夫婦のような会話をする。
 ちょっとした仕草や言葉の端々をお互いくみ取り、さらりと馴染む。
 そんなところが、時々、どうしようもなく妬ける。
「・・・なら、コーヒーを淹れましょうか?」
「・・・悪いな」
 だけど、嫌うことは出来ない。
 むしろ、どこか愛しくなってしまうことがある。それは多分、彼女の存在自体が池山の一部なのだと、思えてしまう時があるからなのだろう。
「で、なんでそんなことしたの。一回きりじゃないだろ?」
「お前、そこまで・・・」
「ん。お見通し。徹見てりゃわかるよ。それにお前、煙草すっぱりやめたし」
「いや、煙草は・・・」
「なに、徹のためじゃなくて、ハトコのほう?」
「・・・」
 立石徹は、昨年秋に行方不明になったアメリカ在住の親戚を捜すために辞職しようとした。彼を手放したくない上司たちが上層部に掛け合い、一時的にニューヨーク出向という形をとらせた上、仕事もフレックス勤務として存分に捜索させた。
 立石の努力はもちろんあるが、運良く春になんとか見つけ出して現在、『彼』を日本へ帰国させるための手続きに奔走している。
「手続きだなんだってわりには帰国し過ぎなんだよ、徹が。しかも週末ばっか狙ったあり得ない往復ぶりだし、お前はなんか慌てて引越しするし、あの部屋のこともあるし、バレバレだろ」
 今、立石と長谷川の間には張り詰めた糸の上に立っているような緊張感が、常にただよっていた。
「・・・そうだよな。あまりにも解りやすいよな・・・」
 口寂しそうに、指の甲で唇を擦る。
 池山が出会った頃、彼女は既にかなりの愛煙家だった。
 息子の前でこそふかさなかったようだが、その香りはさすがに隠せない。
 ニコチンは安定剤であり、煙は鎧であったと、今は解る。
「マルボロ臭のねえ長谷川生を生きているうちに拝めるとは、俺は思ったことなかったぜ?」
 そして、煙草を絶つことは、彼女なりのけじめなのだと。
 いや、けじめというより・・・。
「そうか、罪悪感か」
「・・・そこは、胸の内に収めて欲しかったな・・・」
 立てた膝に頬を預けて苦笑した。
 あまりにも的を射すぎて、これでは逃げ場がどこにもない。
「いや、意外に可愛いとこあるんだなって惚れ直し中よ?」
「お前、江口君の前でそれを言うか」
「言う言う。俺は、隠し事をしない男なんだよ」
 な?と、マグカップを受け取りながら甘えた視線を江口に送る。
「・・・さっきは秘密を守る男といったくせに・・・」
「そこが、俺の良いところだろ?」
 ふふふんと、得意げに鼻を膨らませる池山に、二人は同時に吹き出した。
「たしかに・・・」
「そうですね・・・」
 コーヒーの、深い香りがゆるりと広がる。





       -つづく-






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