『恋の呪文』-21-(『楽園』シリーズ) 

2010, 05. 12 (Wed) 13:38

噂話は恐ろしい…。

 たいてい、それが本人の耳に届くときは回収しようのない状態になっていることがあることが多いです。
 私の場合は、単身赴任の上司の愛人だという話でしたね…。
 他所の部署の女子社員達の私に対する対応がおかしいなあと思っていたら、うっかり社員の一人が私自身の目の前で「ほら、●さんのアレの・・・」と指差したんですよ・・・。
 ・・・にゃろめ。
 仕事に力を使い果たして這うようにしてまっすぐ帰宅する毎日の隙間に茶と花の習い事を突っ込んでいそがしいってのに、いつ男に会う暇があるんだーっ!!、言ってみろ!!と襟首つかみたかったですが、言えば空しいだけなので、聞かなかったことにして半笑いで去りました。
 だいたい、件の上司はさらに上の上司と社員用単身赴任の寮でお隣さんで、さびしがりやな彼からプライベートのほとんどを拘束されていたので、疑うんなら、この二人の仲じゃね?と思うのは私が腐女子だからか…。

 ではでは、つづきをどうぞ。



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  現在は、『睦み月』で『シゲルとミケ』シリーズです。
  飲んだくれ猟師と化け猫の話。
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 『恋の呪文-21-』へ続く。


 経理のツボネはさり気なさを装いながらもカラーコピーの記事を指先にひらつかせ、好奇心満々な顔色をむき出しに立石に擦り寄っていったのである。
「ねぇ~。立石さん。この、池山くんの新しい彼女、なんて言うモデルなのぉ?」
「え・・・?」
 池山同様、その時まで新聞のことを知らなかった立石と江口は驚きに顔を見合わせる。(多忙でもあるが、保坂が情報伝達を防いでいたからでもある)
「・・・彼女?いえ、友人でしょう」
 そう答えながらも、記事を凝視する立石の眉間にはわずかにしわがよる。
「ええぇー?だって、次の朝、このホテルから、濃紺のプジョーで立ち去ったって、聞いたわよ?」
 あんなに仲がいいのに、知らないことあるのねぇ、とツボネは言わなくてもいい言葉をぼろぼろと落としていく。
「濃紺のプジョー・・・」
 誰の車かは、言うまでもない。
 低い声で茫然と呟く立石の横顔を、頬をばら色に染めたツボネはうっとりと見つめた。

「以上が、設計部の片桐くんあーんど本間ちゃんの報告」
 ぐびぐびっと保坂はコーヒーを豪快に飲み干してぷはっーっと息をつく。
「片桐と本間はお前の隠密か・・・?」
 目の届かぬところで起きた事件がこうも簡単に耳に入るのには恐れ入る。
 会社においてこのオンナの知らないことはないのではないだろうか。
「あんのオニババ、最近オヤジとの不倫に飽きて、年がいもなくターゲットをものごっつ年下に絞り始めたから、面倒だのなんだのって・・・」
 経理のツボネがSEの立石に最近ご執心であることは、それこそ社内の女性なら誰でも(勿論、お掃除おばさんも)知っている話らしい。
 記事の件は、単に立石に話し掛けるきっかけを見つけて喜び勇んで馳せ参じたつもりだったのだろうが、選んだ題材が悪すぎた。
「それにしても、日頃『生きた年月の分だけ、年上は敬え』を指標にしてる保坂にしては酷評だな」
 恐ろしくて、とても聞くに聞けない年令不詳でありながら、女優で通じるような美貌のツボネの顔を頭に思い浮べて問う。
「だって、あんたは知らないだろうけど、あんの女が経費の入出金の影の大元締めなのよ。経理の承認はお天気次第ご機嫌次第で、泣きを見なかった事務担当はいないわ」
 拳を握って答える保坂の鼻息は荒い。
 どうやら私怨がそうとう絡んでいるらしい。
「更に立石が絡んで憎さ倍増だな・・・」
 こっそりと池山は呟いた。
「ところで、保坂、お前さぁ」
「なあに?」
「一流商社マンの彼氏とは上手くやってんのか?」
「ええ、まあね」
 右手の薬指には高価そうな石のはまったデザインリングが光っている。
「付き合ってどれくらいだっけ?」
「そうねぇ・・・。もうすぐ六ヵ月になるかしらね」
「ふうん。六ヵ月かぁ」
 出会いの春から、情熱の夏を経て、正念場の秋を迎えるところというところだろうか。
 入社以来ひそかに憎からず思っている立石に目が行くようになると、たいてい保坂の場合、別れの冬はもうすぐそこ、である。
「まあ、仲良くな・・・」
 いや、保坂のバックにショパンの『別れの曲』が透明な旋律とともにしずしずと流れているのは、気のせいでないはずだ。
「何よそれ?変な池山」
 保坂は幼なじみの懸念をよそに、その間の抜けた物言いを能天気に笑っている。
「それより、二人のフォロー、どうする?」
 しばらく、同僚たちの冷やかしと好奇心の目にさらされるのは間違いないが、どうせそんなものは新しい話題が生まれるまでの辛抱だ。放っておくに限る。
「事と次第によっては、生が絡むと理屈もへったくれもなくなる立石くんは絶交しかねないし、心優しく控えめな江口くんは『池山さんの幸せは僕の幸せ』とかいって遥か遠くに身を引きかねないわよ」
「的確な分析を、ありがとう・・・」
 池山は天井を見上げてゆっくり息を吐き出した。
「・・・まあ、二兎追うものは一兎も得ずって言うからなぁ・・・」
「どちらのウサギを追うの?」
 ウサギ、というより、あの大男どもはツキノワグマあたりだろうが。
「・・・・もちろん、江口」
「あら、まあ」
  迷いのない返事に、有希子は口角を上げる。
「・・・で、勝算は?」
「この俺が本気を出して追い掛けるんだ。勝つに決まってるだろう?」
 池山は、窓の外に広がっている輝かんばかりの真夏の空を睨みつける。
「青空なんかに、俺は負けない」



 『恋の呪文-22-』へ続く。



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