『秘密の花園』-七夕 1- 

2013, 07. 18 (Thu) 23:04

 すみません、今日は半分熱中症のような感じになったせいか体調が悪くて、うまくまとめられませんでした。
 夏がテーマというのに、暗い話で申し訳ないのですが。
 次回は別に展開しますので、どうか我慢してご覧下さい。

 時系列としては『秘密の花園-夏の夜明け-』のおよそ一年後です。

 どこまで暗いの、真神家・・・。

 考えついたのは、私なんですけどね・・・。


 続きは・・・。
 月曜日を予定しています。

 こんな所で切ってごめんなさい。
 ええと、七夕、なんで、そんな感じの話ですよ・・・。






   どの日付のものでも構いませんので、それぞれの記事の下の『拍手』ボタンをクリックすると、おそらく『拍手御礼』というページが展開されるかと思います。
  そこに、小話を添付しています。
  小話は、『拍手御礼』に1話のみ。
  今回は、『秘密の花園』の、真神家長男とそのつれあい。
  しかも、攻めサイドです。
  お題は『秘密の花園-夏-』(もう、なんもおもいつかん・・・)。

  楽しんで頂けたら幸いです。


 一応、これからも拍手用小話を月に一度書き換える予定です。
 随時オーダー受付中。
 毎月16日の正午締めで、20日頃に新作アップという形を取りたいと考えています。

 
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  現在は、『睦み月』で『シゲルとミケ』シリーズです。
  飲んだくれ猟師と化け猫の話。
  楽しんで頂けたら幸いです。

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『秘密の花園―七夕 1―』


 水底のような、重く甘い香りに足を止めた。
 ねっとりとむせるように甘い香りの中に、どこか瑞々しい、のびやかな力の潜む、白い花。
「どうなされた?」
 先導してくれていた住職がそれに気が付き振り向く。
「花の、香りが・・・」
 懐かしさに眼を細めると、ああ、と納得したように肯いた。
「それは、くちなしですな。先代もお好きでしたな、あの花」
 住職の視線の先には箱庭に植えてある膝丈ほどの樹木があった。
 肉厚の白い花びらが夏の光を浴びて輝いている。
「そうですね・・・」
 先代と、母の、好きな花だった。
 いや、くちなしが特にと言うより、草木を育てて愛でるのが好きで、邸内をどんどん季節の花で埋め尽くしていった。
 先代と、母と、若奥様。
 そして、俊一と、自分と、更に小さな清乃が加わり、他の使用人たちと共に花の彩りや香りを楽しんだものだ。
 あの花園は。
 真神家の人々はどうしているだろうか。
 尋ねたら住職はいくらでも答えてくれるだろうが、未練が増すだけだと胸にとどめた。
「それでは、こちらへどうぞ」
 本堂ではなく、別棟に設置されている仏間へ通される。
 今回の帰郷が極秘であることを、住職を始めとした寺の関係者は心得た上の配慮だった。
「・・・ありがとうございます」
「いやいや、なんの」

 十年ほど暮した土地だが、住みよいところではなかった。
 理由は、その十年間、母が先代の内妾だったからだ。
 夫を亡くして、幼子を抱える若い母。
 住み込みの家政婦としての紹介をしたのは、分家筋からだった。
 漁師の元へ嫁いだが、もともとは真神家に仕える家系の者だからと。
 親子ほど年の離れた二人の関係に始めの頃はさほど気にも留めていなかった周囲も、何年も仲むつまじい姿を見て不安を覚えた。
 まずは五年前に先代が一度脳梗塞で倒れた時だ。
 若い夕子が先代を良いように操るのではないかという疑念を誰しも抱いた。
 先代亡き後は、遺産を横取りするのではないか、真神家を占有しようとするのではないかと。
 一度妄想に取り付かれたら、人の心なんてあっという間だ。
 誤解が誤解を呼び、悪い噂が取り巻く。
 まだ子どもの自分に向かってあしざまに罵る大人もいたし、親の噂を信じた子供たちからは仲間はずれにされたこともある。
 先代がかばえばかばうほど、母は世間の目から悪女と見られた。
 女達はいちように眉をひそめ、顔を背けた。
 そして、男達の下衆な関心の的になった。
 真神家の先代を虜にする女の身体はどんな味がするのか、と。
 隙を見ては下卑た笑いを浮かべて近付こうとする者が後を絶たず、時々もめ事に発展した。
 しかし、母の毅然とした態度と、冠婚葬祭でたまにやってくる正妻が公の場で釘を刺したことにより、ある程度は沈静化できた。
 だがそれは完全ではなく、執着に形を変えた男が一人いた。
 地元支援者の筆頭の息子だった。
 彼は、忠義心を建前にありとあらゆる嫌がらせを行った。
 それを秘書達が未然に防いだりしてくれたが、母が死を迎えるとそれはもっとエスカレートした。
 先代がこの寺の中に用意した母の墓所を夜中のうちに徹底的に破壊して、墓石を廃棄した。
 すぐに抗議したが、真神家の菩提寺に愛人の骨を弔うのは末代までの恥だとどこ吹く風だ。
 忠義を盾に取られると、時には主家である真神よりも、地元の支援者を掌握している彼らの方が力を持つことがある。
 彼らの機嫌を損ねることは、現当主にとって好ましくなかったため、真神惣一郎は黙認した。
 母に全幅の信頼を置き、姉妹のように過ごしていた惣一郎の妻の芳恵は、めずらしく夫に仲裁を願い出たが、叶わなかった。
 前妻の長男の養育のためだけに嫁がされた芳恵は、一切の権限を与えられず、ただ本邸に存在する飾りでしかないと、惣一郎が公言していたため、誰も彼女の言葉に耳を傾けようとはしなかった。
 こうなると、地元で母の墓所を受け入れてくれるところは皆無になる。
 縁のない土地に葬ることも考えたが、男の執着ぶりは異常だった。
 次にどんな手を打つのか予測がつかない。
 自分は、この土地を、そして日本を離れることに決めた。
 母の遺骨を守るのはとうてい不可能だ。
もともと亡くなる直前にこうなることを予想してか、母は散骨することを希望していた。
 先代は渋ったが、それ以外に周囲を納得させることはできないと判断し、全く縁のない地域の海へ骨を運び、撒いた。
 彼らは、近海への散骨すら反対したからだ。
 未成年の自分に同行したのは先代の秘書が一人、仲裁に入ってくれた穏健派の代表が立会人として一人。
 そして、産後の肥立ちが悪くて体調を崩したままにも関わらず、先代の名代として芳恵が付き添ってくれた。
 四十九日も待たずに散骨せねばならない無念はあったが、同行した誰もが母の死を悼んでくれるのは、幸いだと、思った。
 そして、一握りの灰を持ち帰るのを、大人達が極秘にしてくれたことにも感謝している。
 母は全て海に帰してくれと言い残したが。
 もう一人の、大切な人の願いも聞きたいと思った。
 それは、既に死の床にあった先代の願いだった。
 母の死以来、次第に衰弱していき、今では起き上がれなくなっている。
 亡くなった父よりも、父らしく、人生の先達であった人。

 彼は、自分の骨壺の中に愛した女の骨を入れてくれるよう、頼んできた。

「何一つしてやれなかったのに、すまない」
 随分と細くなった喉から絞り出すように詫びられ、なんと答えたらよいか解らなかった。
「お前の母に会えて、私は、ようやく生きた心地がした」
 それは、母とて同じだったのだろう、と、思う。
 亡くなった父は、酒に溺れ、酔うと乱暴を働く人だった。
 幼い自分をかばって、母が傷ついていたのを覚えている。
 海が父を飲み込んだ、と、聞いた時、これでもう怖いことはないと力が抜けた。
 遺体のない葬式をあげたあと、着の身着のままで連れて行かれたのが真神家本邸だった。
 
 初春特有の黄色い花が咲き誇る、広大な花園。
 そこには静かな瞳で見つめる先代と、桜の木の精霊のような芳恵と、見たこともない綺麗な男の子がいた。
 当主惣一郎の長男、俊一。
 まるで光で作られたように眩しくて、まっすぐ見ることがなかなか出来なかった。
 彼に手を取られて、天にも昇る気持ちだった。
 優しい人たち、花盛りの庭、綺麗な俊一。
 この世にこんな世界があるのかと、心底驚いた。
 まるで最初からそこにいたかのように迎えられ、本当に嬉しかった。

 夢のような、幸せな日々。
 そして、これがいつまでも続くわけはないと、解っていた。
 夢は、いつかは覚めるもの。
 今、現実の過酷さと虚しさの前に呆然と立ちつくすばかりだ。

「夕子を、手放せない私を許してくれ」

 それは、母が、幸せだったという証でもある。
 十年間。
 花園で幸せだった日々を、夢だと笑わないでくれる。
 母の存在を、否定しないでくれる。
 これほど、ありがたいことはない。



        -つづく-


 
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