過去・拍手御礼SS 『バイオレンス・バイオレンス』 (立石家の事情) 

2013, 03. 29 (Fri) 23:57

 2013年1月の拍手御礼用小話です。

 『楽園』シリーズの立石徹とその家族の話を。
 ええと、ちょっと毛色の違うような・・・。
 BLらしからぬ話で、正直どんなカテゴリーが似合うのか、自分でもさっぱりわかりません。
 でもまあ、伏線ということで楽しんで頂ければ幸いです。



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  現在は、『睦み月』で『シゲルとミケ』シリーズです。
  飲んだくれ猟師と化け猫の話。
  楽しんで頂けたら幸いです。

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『バイオレンス・バイオレンス』


「真夕、また新しい仕事に手を出してたね」
 TENの社員でごった返す食堂で肉じゃがを突っつきながら、ふと思い出したように佐古が立石に話しかけた。
「ん?週刊誌のほうじゃなくて?」
 味噌汁をすすりながら視線で問い返す。
「違う違う。青年向けの月刊誌。今朝、電車の吊り広告にでかでかと出ていたよ」
「ああ、そうなんだ・・・。相変わらずだな」
「ただでさえ忙しいのに、仕事増やして大丈夫なの?いい加減倒れやしないか心配だよ」
「まあ、阿古が一緒だから大丈夫だろう」
「そういや、阿古も仕事増やしたって聞いたけど・・・」
 佐古が胸ポケットから携帯電話を取りだしていじり出す。
「・・・そうなのか?」
 彼に手渡された画面を眺めて眉をひそめた。
「だれ誰?マユちゃんと、アコちゃんって」
 同席していた池山が、鰯のフライにかぶりつきながら尋ねた。
「こっちで暮している俺のすぐ下の妹たちなんだけど・・・」
「ああ、そういや、この間の旅行のときは一番下の美波ちゃんしか会ってないよな。上の子達は関東にいたんだ」
 立石は七人兄弟の長男だ。
 真夕と阿古の下に大学生の弟、高校生の妹と弟、そして小学六年生の妹がいる。
「ああ。大学進学からこっちを選んだから・・・」
 現在大学生の弟は関西にいて、福岡の立石家は末の三人を残すのみだ。
「でも、もう社会人だよな。なにやってんの?OL?」
「いや、漫画家と脚本家」
「え?」
 目を丸くすると、佐古が横から口を挟んだ。
「あれ?池山知らなかったの?特に真夕ちゃん有名だよ。週刊Jの・・・」
「え?少年誌?」
「うん、そこの・・・」



「みんなに、ここで言っておくことがある」
 立石家の家長、直がコホンとわざとらしく咳払いした。
 その隣で、妻のみゆきは満面の笑みを浮かべ、夫の手の上にそっと自らのそれを重ねた。
 なぜか、子供たちの間で緊張が走った。
 土曜日の昼食後。
 ほぼ単身赴任の直が帰省して、いわば家族揃って団らんのひとときである。
「・・・良い知らせ?悪い知らせ?」
 しばらくしてから、次女の阿古がおそるおそる口を開く。
 しかし、どこか浮かれている直に、娘達の反応の鈍さは目にとまらなかった。
「もちろん、よい知らせさ」
 彼が自信たっぷりに胸を反らすと、長男の徹は三男の功を抱いたまま固唾を呑み、次男の学は三女の由衣と連れ出って部屋を出ようとする。
「ん?話はこれからなのに、どこへ行く、学、由衣」
「ええと・・・。由衣の宿題、終わってなくて・・・」
「ここにいなさい。すぐ終わる」
 ぴしゃりと言われて、子供たちは仕方なしに足を止めた。
「実はな・・・」
 子供たちの反応にいささか気分を害しながら、もったいぶって話を進める。
「来年になったらお前達に新しい兄弟が生まれる!!」
 夫婦で手を取り合って歓声を上げた。
 しかし、子供たちは全員、固まったままだった。
「・・・話はそれだけ?」
 そこで、腕と足を組んで黙っていた長女が冷ややかな視線を送った。
「・・・やっぱり産むんだ。性懲りなく」
「え・・・」
 手を取り合ったまま二人は動けない。
「産むんだっ・・・て?知っていたのか、真夕」
 そろりそろりと次男と三女が後ずさる。
「そりゃ、知ってるわよ。もしかしたら、あんた達よりも早くに」
「あんたたち?」
 長男は膝の上ですやすやと眠る三男を抱いて、ゆっくりと椅子から離れた。
 次女も、自分のお気に入りのマグカップを大事そうに抱えて後に続く。
「真夕!!お前、親に無ってなんて口・・・」
「ふざけんじゃないわよ!!」
 だん、と真夕の拳がテーブルを叩いた。
 弾みで、乗っていた茶器が一瞬飛び上がり、高い音を立てる。
 何も知らずに眠っていた功が驚いて泣き出したので、徹は慌ててあやしながら子供部屋へと立ち去ってしまった。
 温厚な徹がいなくなり、場は気性の激しい真夕の独壇場だった。
「親って何?金と精子さえせっせと運んでりゃ、父親面して良いわけ?」
 娘の気迫が、立ち上がって怒鳴ろうとした直を制す。
「食事、洗濯、掃除、さらに育児までやってんのは私達よ。あんた達は、この家でいったい何をしてくれたわけ?」
 下からねめつけられて、振り上げようとした手を下ろした。
 父親の直は大手銀行に務め、結婚してから今まで勤務地を転々とし、今年に入ってからは東京でけっこう重要なポジションに就いている。
 母親のみゆきは地元ではけっこう知られた金持ちの娘で、学生時代に妊娠、そのまま結婚して働いたことがない。
 直は、みゆきの可憐な美貌と少女めいた言動をこよなく愛していた。
家計としては、みやきが親の会社の役員名義で毎月高額報酬を小遣いとして貰い、直も年収は既にエグゼクティブクラスで、親の生前贈与もあわせて、子供が七人いてもびくともしない経済状況だ。
 結婚当初はまだ学生と言うこともあり、みゆきの実家で長男長女を産み育てた。
 たまたま隣の土地が空いたのでそこに新たに立石家の邸宅を建て、子供更に増えていった。
 もちろん、美由紀を溺愛する祖父母の援助はそれなりに続いている。
 しかし地元名士としての祖父母の生活は忙しい。
いつしか長男の徹の家事能力に着眼したみゆきにつけこまれ、気が付いたら家事全般、育児共に年かさの子供たちで担うようになっていた。
「トイレ掃除と洗濯、誰がやってると思うの?母さんの生理が来ない事なんてみんな知っていたわよ。ただ、トシがトシだから、更年期と妊娠のどちらだろうねって話になっていたけど」
 更年期と言われて、今度はみゆきが逆上した。
「真夕!!言うに事欠いてトシがトシって・・・!!」
「だって、もう四十だし」
「まだなっていないわよ!!」
「はいはい。あと数ヶ月で四十ね」
 冷たくあしらわれて、じわりと目を潤ませる。
「・・・ひどいわ・・・」
 わっと泣き伏した妻を抱きしめて、直は慌てて慰める。
「みゆき、泣くな。お前はとても若くて綺麗だよ」
「ほんと?」
 胸にすがってぐすぐす鼻を鳴らす。
「本当だとも。福岡支店の部下達も言ってたぞ。奥さん、二十代にしか見えませんねって」
 夫の言葉に、泣いたカラスが笑った。
「そうでしょう?この間もね・・・」
 キラキラ目を輝かせたところで、真夕が割って入った。
「親父。その馬鹿女を甘やかすのやめてくれない?」
「オヤジ?」
「ばかおんな?」
「二十代に見える、なんて、物凄く苦しいおべんちゃらに決まってるでしょ」
 びしっと二人を指さす。
「前々から言いたかったんだけど、そこの馬鹿女!!『いくつに見える?』なんて目の前にヤツに聞かれて、正直に答える馬鹿がどこにいるのよ!!たいていの人は必死に悩んだ末に無難な線で答えるに決まってるでしょ!!」
 うわ、とうとう言ったよ、とマグカップを抱えた阿古が呟いた。
「基本的には自分の思い浮かんだ歳より5歳、話の流れとしてもっと若く言って欲しそうなそぶりをしていれば嵩増しして10歳若い年齢を言うのよ。聞かれた方はギリギリの回答に嘘がばれやないか気を揉んでるってのに、それを真に受けるなんて、どこまで馬鹿なのよ!!」
 言っているうちに興奮して止まらなくなったらしい。真夕は更にまくし立てる。
「だいたいさあ、同窓会とか参観日とかで勝負すんなよ。普通の人はそんなののために来ているんじゃないのよ。気合い入れまくりの格好で出向いて『勝った!!』ってなに?同い年の連中より少しだけ若く見えたからなんだっつーのよ。美魔女って言われて浮かれて、どんだけおめでたい脳みそだよ!そもそも美魔女なんか、年寄りが若く見えますって事じゃん。そんなの若くない連中にしかウケないのよ。四十女が二十歳に対抗してパンツ見えそうなミニ履いたところで、痛すぎだろ!!クラスの連中、なんて言ってると思う?お前の母ちゃん、今日もブリブリしてんなってゲラゲラ笑われるのはこっちなんだよ!!」
 今日のみゆきのいでたちは、東京で流行っている「カワイイ」系二十代前半の女性誌そのままだ。
 決して服が身体に合わないわけではない。
 着こなせている方だろう。
 毎日のように美容室とエステとネイルサロンに通って身なりを整え、スポーツクラブとヨガで引き締めた身体は、とても六人の子供を産んだとは確かに見えない。
 しかしすっかり若作りにはまってしまったみゆきは、美を追究する以外のことに一切の関心を持たず、そのしわ寄せは子供たちに及んだ。
 それがいかに大変なことかを、たまにしか帰ってこない直には思いもよらない。
「アンタの足と肌がそこらの主婦よりかはイケてるのは認める。でも、それは四十前にしては、であって、うちら十代には根本的に敵わないに決まってるでしょ。お世辞言われて舞い上がって美の伝道師気取りしちゃって、みんな影で笑ってるのに気づけよ!!」
 真夕は、声も限りに吠え続けた。
「真夕・・・。そこまでだ」
 背後から、徹が静かに言う。
 「功は?」と阿古が身を寄せて小声で尋ねると、「学たちに任せてきた」と答えた。
 ここからは、年長三人組と両親の話し合いになりそうだ。
「徹がいつも甘やかすから、つけあがるんでしょ、この馬鹿親は」
「真夕」
「・・・さすがに堕ろせとは言わないけど、これ以上生まれたら、沈めるからね」
「・・・は??」
 両親は立ったまま、長女を見つめた。
「沈めるわよ。8人目を産んでくれちゃったりしたら」
「・・・まゆ?」
「阿古はともかく、学も由衣も功も、私と徹がずっとおしめ変えたり風呂に入れたりしてた。その様子だと当然、7人目もそのつもりよね?」
 綺麗に盛り飾られた実用的でないみゆきの爪を顎でしゃくった。
「私も徹に面倒観てもらったから、高校の間は弟妹の世話をする。でも、そのあとは私達三人をあてにしないでね」
「え・・・?だって、徹は・・・」
 みゆきが縋るように長男を見るが、真夕が遮る。
「徹は、東京の大学に行きたいの。私と阿古もそう」
 徹が目を見開いて口を挟もうとするが、阿古に止められた。
「学と由衣は今のところききわけの良い子だけど、反抗期になってもそうかは知らない。なんせ抑えの私達はそばにいないんだから」
「三人とも東京になんて・・・そんな、いくらかかると・・・」
「国公立だとしても生活費がそれなりにかかるでしょうね。でも、あんたが貰ってる小遣いで十分補えるわよ?」
 ふてぶてしく笑った。
「マユ・・・お前、いつの間に・・・」
 呆然と直は立ちすくむ。
「あんたたちのおかげで、物凄く早く大人になったの。大人になったついでに大人としてお願いします。8人目をうっかり湯船に落とされたくなかったら、パイプカットして下さい」
「真夕!!」
 驚きの声がシンクロした。
「なんなら卵管くくるのでも、子宮口しばるのでも、どれでもいいから、確実に受精着床しないようにしてくれない?」
「お前、どこでそんな知識を・・・」
「近所の婦人科でピルもらうついでに聞いたわよ。たくさん。ネットで調べても出てくるしね」
「ピルって、お前・・・」
「まさか、毎晩お盛んな両親がいるのに、私がなんにも知らないとでも?」
 せせら笑いを浮かべた真夕の顔は、とうてい高校一年生のものではなかった。
「私は徹みたいに温厚じゃないから覚悟して」
 腕を組んでねめつけた。
「ついでに言わせて貰うけど、今でも思い出すと、腹が立って仕方ないの。徹の高校受験の前日のこと」
「え・・・」
 戸惑って口を半開きにする両親に、「やっぱり」と真夕が腹立たしげに呟いた。
「功の夜泣きがひどかったのに、あんた達、寝室から一歩も出てこなかったわよね」
「真夕、それは、べつにいいから・・・」
「よくない!!徹は結局一睡もしなかったじゃない。なのにこいつらときたらいつまでもいつまでも、ギシギシギシギシギシギシ・・・・」
 悪魔が乗り移ったような娘に怯えながら、二人は手を取り合って一生懸命記憶をたぐった。
 言われてみればそんなこともあったかもしれない。
多分その日は、単身赴任の直が一月ぶりに帰ってきた夜だった。
 ついつい、我を忘れて盛り上がってしまったことをだんだんと思い出す。
「阿古が泣いて止めなかったら、あんたらまとめて撲殺するとこだったわ」
 あの夜、激昂する真夕とは正反対に、徹はいたって冷静だった。
 「戦前の子だくさんの頃もきっとこんな風なんだろうな」と、静かに笑って功を抱き続けて夜が明けた。
 阿古と三人で功を囲んで迎えた夜明けの空気の綺麗さも、忘れていない。
 時間になれば、何事もなかったように家族の朝食と弁当を作り、功を隣家の祖父母に預けて、徹は受験へと出かけた。
 なのに、明け方までベッドをきしませた両親は、当然のごとく寝坊して長男の受験の見送りにすら出てこなかった。
 その時のはらわた煮えくりかえるような憎しみも、忘れない。
 ただただ、徹が、功を、自分たち弟妹を大切にしているから、ぐっと我慢した。

 ところがまたしても、真夕たちの気持ちなど全く意に介さない二人は性懲りもなく育てるつもりのない子供を作った。
「私が未成年の間に8人目が生まれたら、私が沈める。で、もしもそれより後なら、阿古がやるわ」
 両親がおそるおそる目をやると、こんな話の中マグカップに口をつけていた阿古がこくんと肯いた。
「あ、あこ・・・」
 震え上がる大人達に、姉妹は同時に冷たい視線を送った。
 阿古が二十歳になる頃には、母もさすがに四十も半ば過ぎ。
 美の秘訣は充実したセックスライフだなどと自慢していた彼女だが、いい加減高齢出産にもなるし、体型修復も難しくなるだろうから、産もうとしないだろうと真夕は推測した。
「・・・産婦人科でも避妊手術の紹介をしてくれると思うけど、男性は泌尿器科でやってくれるみたいなので、手遅れにならないうちに、処置をお願いします」
 ね?と、上目遣いに微笑まれて、二人はそのまま椅子に崩れ落ちた。
「じゃあ、あとはふたりでごゆっくり」
 徹と阿古を促しながら、真夕はリビングを後にする。
「あ、そうだ」
 ひょい、と、首だけ巡らせると両親の目におびえが走った。
「な、なんだ?」
 妻を抱きしめ、震える父ににっこり笑う。
「7人目、おめでとう、お父さん、お母さん」
 ひいいっと、母が悲鳴を上げ、父があわててなだめるのを満足げに眺め、今度こそ本当に部屋を出た。

「真夕。何もあそこまで言わなくても・・・」
 徹が眉をひそめる。
「それに、俺は別にこっちの大学に通っても別に構わないよ」
「・・・言うと思ったんだよね」
 徹は本来ならば小さな頃にアメリカの親戚の所へ養子に出るはずだった。
 しかし、自分たちの世話のために取り消しにされて今に至る。
 いつもいつも、家族の犠牲になっていた徹。
 何度も送りだそうと思ったけれど、心細さに手を離せなかった。
 でも、自分はもう十分強くなった。
 だから、今度こそ背中を押そう。
真夕はひょいと肩に手をかけて囁いた。
「あのね、徹。この間、女子バレーの先輩からちらっと聞いたんだけど・・・」
 女子バレーと聞いて、兄の動きが止まった。
 現在、徹と真夕は同じ県立の進学校に通っている。
「高階先輩、スポーツ進学のスカウト全部断って、東京の大学を受験するってよ」
 高階郁が、と、言うと彼の顔つきが変った。
「・・・え?」
「そもそも、こっちにはお父さんの仕事の都合で転入してきたでしょ。でも、今はお父さんが東南アジアに渡ってもはや意味がないから、なじみのある関東へ帰るんだって。お母さん達も関西だから、家は畳んじゃうんじゃない?」
 こくん、と、徹が唾を飲んだ。
「ね。やっぱり、大学は関東が良いと思わない?」
 それは、悪魔の囁きだった。

 ふらふらと夢遊病のように廊下を歩いて行く兄の背中を見送っていると、ひょっこり阿古が顔を出す。
「うまくいった?」
「うん、ばっちり」
 二人は、密かにハイタッチする。
「徹を動かすなら、高階先輩よねえ」
 弟妹の世話にかまけて中の上程度だった徹の中学の成績が、受験間際になって急上昇したのは、市内でも好成績で有名な高階郁に一目惚れしたせいだと言うことに、二人はかなり早い時期から気が付いていた。
「徹が前例作ってくれないと、私達も外に出られないからねえ」
「もう、ここは高階先輩に感謝よ。ありがとう、高階先輩、九州を見限ってくれて!」
 小さな頃から双子のように仲の良い二人は忍び笑いを漏らす。
 それぞれなりたい職業がある。
 真夕は絵描きに、阿古は作家に。
 自分たちの未来のためにも、まずは兄を送り出す。
 まずは、それからだ。
 今日の反抗は、宣戦布告に過ぎない。
 大人の理不尽にねじ伏せられ続けた子供たちの復讐が、今始まった。


「で、その真夕ちゃんって、どのペンネーム?」
 件の週刊誌は池山も毎週手に取っている。
 よほどの新人でない限り、思い浮かぶだろう。
「ああ。『イシダチカラ』だよ」
 佐古が指先でテーブルに名前を書く。
「ええ?イシダチカラって、女だったの?」
 理解した途端にのけぞった。
「そ。実は阿古ちゃんがネームとか構成作りの協力してるけど、それもあんまり知られてない」
 池山の好きな作家で、コミックスも購入している。
しかも今や少年漫画界では看板作家で、アニメ化、映画化をしており、ハリウッドのオファーもあるという噂すらある。
「イシダチカラの作品はデビュー当時からずっと読んでるけど、バイオレンスに次ぐバイオレンスだよな?」
「ああ・・・まあ・・・」
 立石はなんとも言えない顔をする。
「骨太の線に、画面が物凄い迫力で、血しぶきいっぱい飛ぶ、戦いずくめの格闘漫画じゃん」
「あいつが描くのは、昔からそうなんだ・・・。逆に少女漫画が苦手で・・・」
「なるほど・・・」
 顎に手を当てて思い巡らせているうちに、はたとあることに気付きおそるおそる尋ねた。
「あのさ・・・。俺の記憶違いじゃなければ、デビュー作の主人公ってさ・・・」
「・・・ああ、あれね」
 佐古が珍しく中途半端な笑いを浮かべた。
「・・・毒親殺して、旅に出るってのがオープニングだったよな?」
「まあ・・・それは・・・。そうなんだよな・・・」
 願望だったのか、脅しだっのか。
 さすがの佐古と立石も、未だに真夕と阿古に聞けずにいる。
 ともあれ、二人は家族から解放されて、次の冒険に出た。
 今は、作品を作ることで戦いを挑み続けている。
「ハードボイルドな姉妹だなあ」
 感じ入ったように呟く池山に、立石は笑う。
「ああ。多分、俺よりずっと」
 戦いは、続く
 これからも。



  ―おしまい―。



 
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