『春を待つ』-2-(『シークレット・ガーデン』番外) 

2013, 02. 06 (Wed) 23:12

 なんとか、日付が変る直前に更新。
 『春を待つ』-2-をお届けします。

 あと一回。
 あと一回続きます・・・。
 おかしい、こんなに長くなる予定ではなかったのに・・・。
 片桐が意外と思春期で進まなかったです。
 どうしてくれよう。
 真神兄弟の勤務先は架空の大学です。
 一応、私立名門大学のつもりですが、どうだろう。

 ともあれ、楽しんで頂けたら嬉しいです・・・。



『バレンタイン特集』も勝手に開催予定。
 今まで出た誰かを使ってバレンタインをテーマにした話をいくつか書きたいと思います。
 こちらも、ご希望がありましたら、是非。



   どの日付のものでも構いませんので、それぞれの記事の下の『拍手』ボタンをクリックすると、おそらく『拍手御礼』というページが展開されるかと思います。
  そこに、小話を添付しています。
  小話は、『拍手御礼』に1話のみ。
  今回は、『女王陛下と俺』の立石徹とその家族の話です。
  お題は『バイオレンス・バイオレンス』。

  楽しんで頂けたら幸いです。


 一応、これからも拍手用小話を月に一度書き換える予定です。
 随時オーダー受付中。
 毎月16日の正午締めで、20日頃に新作アップという形を取りたいと考えています。

 
 これからも何かご希望がありましたら、是非リクエストを拍手コメントかメールフォームでお願いします。



 アクセスして下さったり、拍手やバナークリックで励まして下さる皆さんに感謝しています。
 とくに、励ましの拍手をクリックして下さる方へ。
 面倒な操作なのに、本当にありがとうございます。
 頑張ります。

 もしもよろしければ、一言、くださいね。
 お待ちしています。


  (『春を待つ』を読む方は下にある『続きを(略)』をクリックして下さい。↓)




  記事の一番下の『拍手』ボタンをクリックして頂くと小話をご覧になれます。
  現在は、『睦み月』で『シゲルとミケ』シリーズです。
  飲んだくれ猟師と化け猫の話。
  楽しんで頂けたら幸いです。

 アクセスして下さったり、拍手やバナークリックで励まして下さる皆さんに感謝しています。
 もしもよろしければ感想や要望など頂けると、本当に嬉しいです。


ブログランキング・にほんブログ村へ


   拍手小話はこちら →


  『春を待つ』-2-



「いつもならそういうのは上手くかわせる方なんですが、俺も事故の時に頭打ってるんでさすがに身体が辛くて、一晩で音を上げました」
「それはそうだろう」
 あわよくば、御曹司から甘い汁を吸おうというわけか。
「容態が悪化したらどう責任を取るつもりだったんだろうな、そいつらは」
 だから女は嫌いだと心の中で毒づくと、勝己が困惑したような顔をする。
「いや、看護師みんながそうだと思わないでくれよ。後で調べたら、人事が出来心でつい入れてしまった好みの若い子たちがそういうことをやらかしていたみたいだから・・・」
 スタッフを悪く言いたくない彼らしい発言だ。
「うちはけっこう医療現場としてレベルが高い方で、その辺は厳しい筈らしいんだが・・・。春が近いせいか、こう、みんな疲れていて、魔が差したのか・・・」
「長田一族と言えば、政財界共にVIPだからな。そりゃ、食いつきたくもなるか」
 メニューを一瞥して三人分のランチの注文をしながら、憲二は問う。
「で、怒鳴り込んだのは長田有三氏?」
「いえ、祖母です。怒鳴り込むと言うより、冷ややかに・・・」
「想像つくな」
 長田有三の妻の富貴子は、夫をはるかにしのぐゴッドマザーだと囁かれている。
 彼女の一存で病院の人事全てが刷新されてもおかしくない。
「すぐに特別室へ移されて、接触するのはベテラン看護師、もしくは男性スタッフということになり、さらに秘書や警備が常時監視することになったのですが、これがまた肩が凝るというか何というか・・・。俺、本当にただの大学生ですから」
 深々とため息をつくその姿にいささか同情する。
「普通の大学生?長田の孫なのに?」
「はい。福岡から普通に受験して、アパート住まいでバイト三昧です。こちらの知人は誰も母方の家の事は知りません。俺は、長田の世話になるつもりはないんで」
「へえ・・・」
 憲二は驚きを隠せなかった。
 自分は真神の名前と資産を今も良いように使っている。
 おそらく他の家の御曹司達も似たり寄ったりだろう。
 名家に生まれたからには、その権利を享受するのは当たり前のことだ。
 しかし、啓介は悔しげに言葉を続ける。
「なのに、一年やそこらでこれかよって、自分でも情けなくなります。独立したつもりが結局、長田の保護なしでは何も出来ないんですから」
 気が付いたら、手を伸ばしていた。
 俯いて唇を噛みしめる啓介の、包帯を巻かれた額に触れる。
 指先に、じんわりと熱を感じた。
 はっとして目を上げた、まだどこか幼さの残る顔をのぞき込んだ時、憲二の頬に自然と笑いが広がった。
「それがどうした。あたりまえだろ」
 そのまま頬をゆっくりと指の背で撫でてやる。
「お前、いくつだ」
「・・・19歳です」
「19歳が何もかも完璧に出来てしまったら、この先の人生どうするよ?何もすることないぜ?」
「でも・・・、おれは・・・」
 青年は、焦れたような声で反論しようとした。
 頑固なのはやはり祖父譲りだなと内心ため息をつく。
「いいから、年長者の言葉を良く聞けよ。お前がそうしたいのはわかるが、完全を目指すな、余白を残しとけ」
「よはく・・・?」
「そうだ。全部を一つの色に塗り込めるのは辞めておけ。一生同じだなんて、つまらないだろ」
「・・・そういうものですか・・・?」
「ああ。俺も一時期似たようなことを考えて、ほぼ思う通りにしたことがある。そうすると、考えることが何もなくなった」
 斜め前から勝己の視線を感じたが、構わずそのまま続けた。
「毎日が退屈すぎて、正直、もうこれは死ぬ以外、何もない気がしたよ」
 退屈で退屈で、息が詰まりそうだったのはいつのことだったか。
 今、こうして話をするまですっかり忘れていた。
 生い立ちに反発しているわけではない。
 ただこの世界が窮屈なものに思えて、もがけばもがくほど苦しくなるのだろう。
 そんな時期が、自分にもあったと懐かしく思った。
「だけど、俺は生きている。・・・つまりは、そういうことだ」
 もう一度額を撫でると、啓介の瞳に何か違う色が灯ったような気がした。
 まるで、大人になりきっていない子犬のようだ。
 なぜか目の前の迷子をとても可愛いと感じた。
 ふいに、それまで黙っていた勝己が口を開く。
「・・・まあ、今回はとんだ災難だったけど、悪いことばかりじゃないな」
 いっせいに視線を向けると、一瞬、照れたような表情が浮かんだ。
「今まで突っ走ってきたけれど、ここで一端休んで、色々考える機会が出来たって事だろう?」
 幸いながら頭部打撲は思いの外軽く、あとは肋骨と足の骨折の治療とリハビリにおよそ一ヶ月位かかるだろう。
 動けないなりに出来ることはある。
「・・・それも、そうですね・・・」
「・・・有三さんはともかく、富貴子さんから、片桐に固執せず、長田の良いところを上手く利用出来るようになれと言われたことはなかったか?」
「・・・あ」
 啓介が目を見開く。
 それまで、どこか鬱屈した空気をまとっていた彼の顔が一気に晴れていく。
「そう・・・、ですね・・・。そうでした。どうして忘れていたのかな、俺」
 ふわりと啓介が笑う。
 濃い瞳に、強い意志が宿る。
「ありがとうございます。おかげで、大切なことを思い出しました」
 ぴんとまっすぐで、瑞々しい。
 いい顔だ。
 だからこそ、長田夫妻が愛されずにいられないところなのだろう。
 憲二も同じ事を思ったのか、珍しく無意識のうちに満面の笑みを浮かべた。
 花が開くような、そんな笑み。
 勝己の視線に気が付いた啓介がその先を見てぽつりと言う。
「・・・やはり、姉弟ですね」
「ん?」
 片手で頬杖をつく憲二の頬には笑みが宿ったままだ。
「・・・憲二さんは、どこか清乃さんと似ています」
「・・・え?なんだよ、そんなこと今まで言われたことないぜ?」
 喉を鳴らして笑う憲二に啓介は真面目に首を振った。
「勝己さんもそうですが・・・。皆さん、どこかまとう空気が違って・・・。そういえば花を連想します」
 この世ならぬ花の精霊。
 以前、彼らの姉の清乃に会った時にそう思った。
 そして、今、憲二の微笑みにそれを感じる。
 清らかな水のような、澄んだ空気のような、得難いもの。
 しかし、それをうまく説明することが出来ず、もどかしい。
 言葉を続けようとしたその時に、ウェイトレスが食事を運んできた。
「ああ、やっと昼食にありつける」
 目を輝かせてビーフシチューを覗き込む憲二に、勝己が苦笑する。
「・・・じゃあ、食べるとするか」
「はい」
 言葉を重ねたところで、きっとそれは形にならない。
「・・・いただきます」
 啓介は並べられた食事を前に、手を合わせた。



  -つづく-



     < ↓ポチリとしてくださるとうれしいです↓ >

  br_decobanner_20100412095827.gif  にほんブログ村 小説ブログ BL小説へにほんブログ村
 
スポンサーサイト

タグ:続きを読む

コメント

コメントの投稿

非公開コメント