『肉食獣的な彼女』-11-(『ずっとずっと甘い唇』番外編) 

2012, 12. 18 (Tue) 22:37

 ますますゴールが見えなくなってきたような・・・。
 いやいや、前に進んでる、きっと進んでると己に言い聞かせながら書いています。

 そんなこんなで、ヘルシンキ編。
 しかし、今回はアパートの廊下と室内だけだ・・・。
 しかも、内装やアパートの作りもすっ飛ばしているし。
 一度、ヘルシンキ在住の方のお宅にお邪魔したことがあるのですが、もう記憶がおぼろげで。
 中庭がある素敵なアパートだったんだけどなあ・・・。

 続きは、また明日。
 楽しんで頂ければ幸いです。

 拍手の更新は今しばらくお待ち下さい。


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  そこに、小話を添付しています。
  小話は、『拍手御礼』に1話のみ。
  今回は、『ずっとずっと甘い口唇』の中村春彦の父の勇仁と、母の清乃、そしてコドモの片桐啓介で、+1人乱入です。
  お題は『オトナの階段』。
  楽しんで頂けたら幸いです。


 一応、これからも拍手用小話を月に一度書き換える予定です。
 随時オーダー受付中。
 毎月16日の正午締めで、20日頃に新作アップという形を取りたいと考えています。

 
 これからも何かご希望がありましたら、是非リクエストを拍手コメントかメールフォームでお願いします。



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  現在は、『睦み月』で『シゲルとミケ』シリーズです。
  飲んだくれ猟師と化け猫の話。
  楽しんで頂けたら幸いです。

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 『肉食獣的な彼女』-11-



【君、誰?】

 威圧的だが、ゆっくりとした英語で低い声が問いかけてくる。
 ディープブルーの瞳が随分と上から見下ろしていた。
 申し訳程度に引っかけたシャツからは見事な胸板と腹筋が覗き、その上を豪奢な金の巻き毛が流れ落ちている。
 彼が、誰なのか、何故ここにいるのか、瞬時に理解してしまった。
 世の中に、これほど美しい男がいるのか。
 まさに、アニメか少女漫画か宝塚かと、橋口はため息をついた。
 敵わない。
 闘うことすら出来ないなんて。

【・・・この状況で、母親と思いますか?】
【・・・君、英語出来るの」

 お嬢様大学へ通って会得した技能の一つは、クイーンイングリッシュだ。
 もちろん、アメリカ訛りもオーストラリア訛りもある程度学習済みで、留学生達のおかげで中国訛りとインド訛りも多少聞き取れた。
 とりあえず、これでどの国へでも行ける。
 そして、胸を張って戦える。

【頭が空っぽそうな日本女は、英語が話せないとでも?】

 ドアの前で、橋口は腕を組んで仁王立ちした。

【いや・・・。悪かった。東洋系は年齢が読めないから・・・】

 きまり悪そうに彼が目を逸らす。
 165センチの橋口が20センチも上の男に勝った瞬間だった。

【ヒジリ・クサカリは在宅?】
【ああ。・・・でも、今は・・・】

 部屋の中を見せまいと、彼の身体が阻む。

【身繕いするのに十分な時間は、今、私達が作ったでしょう。今更何を見ても、卒倒したりも暴れたりもしないわ】
【・・・!】
【とにかく入れてちょうだい。休みなしに東京から飛んできて、とても疲れているの。ここまで来たのに、紅茶の一杯も出さないなんて言わないでしょう?】

 上目遣いにひと睨みすると、彼は大きく息を一つつき、ドアから身体をずらして道を作った。

【どうぞ】
【ありがとう】

 こつん、と、ブーツの踵が板張りの床を鳴らす。
 背筋をのばし、リビングであろう部屋に向かって足を進めた。
 暖かな色のライトに照らされた部屋の真ん中に、ぽつんと細い影が立っていた。
 慌てて着込んだであろう、シャツとパーカー。
 カーゴパンツの裾から白いくるぶしが覗き、それがなぜか匂い立つように見えて目をそらす。

「弥生・・・」

 いつもより、色づいた唇から困惑の色がこぼれ落ちる。
 この、清らかな、澄んだ声が好きだった。
 この声を聞いていたら、自分もきれいに洗い流されるような心地がして、ずっとそばにいたいと思った。
 でも、それは自分一人の望み。
 彼は同じように思っていなかっただけだ。

「・・・まさか、昨日の今日でやって来るとは思わなかった?」
「・・・うん。ごめん・・・」
「そう。私でも、少し驚いているの。こんな思い切ったことが出来るなんて」

 最初から仕事も何もかも放り出して、彼について行ったならばこんな結末は迎えなかったかもしれない。
 でも、今更だ。
 自分が旅支度をして飛んで来た、この長いような短いような時間の間も、聖はあの男に抱かれていたのだから。

「・・・あの人の名前は?」

 かつん、と音がして、背後に男が立っているのを感じた。

「クラウス・・・。クラウス・ヤラヴァ。配属先の同僚・・・」
「なるほどね・・・」

 やはり、ついてきたところで、どうにもならなかったということか。

「いつから?」
「・・・それは・・・」

 聖は唇に手を当てて言いあぐねる。
 そこで、日本語のやりとりでも何を話しているか見当が付いたのだろう、クラウスが割って入った。

【出会った日の夜だ】

 そう言って、静かに聖に寄り添う。

【すまない。一目惚れだった・・・】
【ストップ】

 手を上げて、橋口は遮った。

【これ以上、見せつけないでくれる?私はこれでもほんの少し前までヒジリの恋人だったの。・・・ヒジリにとってそうでなかったとしても】

「弥生・・・!そんなつもりは・・・」
「解ってる。あなたは、あなたなりに私をこれまで大切にしてくれた」

 飛行機の中で一睡もせずに考えに考え、決めたことがある。
 泣かない。
 どのような結果になっても、彼の前では泣かない。
 それなりの年月を共にした相手にネット電話一つで終わりにしようとした男の前で、みっともなく感情をさらけ出したりしない。
 ずっと、彼の前では可愛い女でありたかった。
 ずっと、可愛い年下の女を装い続けて、どれが自分なのかも解らなくなりかけていた。
 でもその必要がなくなったのなら、最後は、本来の強さを見せて去りたいと思った。

「最後が、なんともお粗末だけど・・・。この目で見て、納得したからもう良いわ」

 何事にも奥手だった聖が、出会ったその日に同性の男に身を任せるとは考えにくいが、レイプなのか合意なのか、そんなことはもうどうでもいい。
 こうして、寄り添うように立つ二人を見て、お似合いではないかと思うから。

 これが、半身。
 私は彼のかけらではなかったと、痛感した。

 なら、別れよう。

「さようなら、聖」

 お幸せに、なんて言わない。
 そこまで割り切れるほど大人でもない。

 最後に腕を伸ばし、彼の首を掴んで引き寄せた。
 驚いて目を見開くその顔を、ああ、好きだったなと思った。
 美しくも澄んだ瞳、長いまつげ、薄くて高い鼻筋、薄くて小ぶりな唇。
 いつでも清らかな聖。
 いつまでも白雪のように純白の聖。
 でも、今、彼が少し色づき始めたのを感じる。
 自分には彼を染める力がなかった。
 それだけのこと。
 だから。

「あなたの、妻になりたかったわ」

 本当は、帰国したら言おうと思っていた言葉が、過去の物になる。

「愛してた。さようなら」

 最後の口づけを、彼に贈った。




     -12-へ続く





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