『恋の呪文』-10-(『楽園』シリーズ) 

2010, 05. 01 (Sat) 10:46

出かけようと思ったら…。
化粧をしている間に相方が眠ってしまった…。

おいおい、里帰りはどうするんだよ、おいおい。
お父上とお母上が首を長くしてお待ちだろ、おいおい。

・・・運転は彼なので仕方がない。
眠い時に運転させるととんでもない操作をするのは経験済みなので(駐車場で)、目覚めるまで待ちます。
時間ができたのでついでに保坂×池山愛の劇場(笑)の続きを掲載しましょう。

それにしても、私の書く女はみんなどうしてこうかなあ。
ちなみに、保坂と片桐の所の事務の本間は習い事仲間です。
・・・類は友を呼ぶ。



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  現在は、『睦み月』で『シゲルとミケ』シリーズです。
  飲んだくれ猟師と化け猫の話。
  楽しんで頂けたら幸いです。

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 『恋の呪文-10-』


「・・・・で?何がいったいどうして、誰の何にに対して、そんなに暗くなって考え込んでいるわけ?」
 池山に買ってこさせたテイクアウトのアイスコーヒーを半分ほど飲んでから、有希子は質問を並べ立てた。
 二人はそば屋と自社ビルの中間地点にある、公園のベンチに腰掛けていた。オフィス街の谷間にあるため、子供達の姿はたいして見えないが、仕事の合間の休憩にきた人たちがちらほら行き交っている。
 真っすぐで黒々とした前髪を額に落とし、きっぱりとした眉にやや吊りめの黒い瞳、何よりも高くて形の良い鼻が魅力的な池山。
 抜けるような白い肌といい、すらりと長い手足といい、まるで洋人形のような容姿でいながら日本的にしっとりとした雰囲気の保坂。
 あたかも映画に出てきそうな二人に通り過ぎる人々はたいてい目を止めるが、そこはかとなく漂うただならぬ空気に振り返ってまで眺める命知らずはいないようだ。
「・・・やっぱり、俺、やだ。言いたくない・・・」
 眉間にしわを寄せて、ちゅるるるとストローを吸う。
「そう?和基がそういうなら、無理強いはしないけどね」
 あっさりうなずいて、紙コップを揺すって氷を解かしていた有希子は、ふと手を止めてくすりと笑った。
「そういえば、この間のT銀プロジェクトの打ち上げ、すごかったらしいわね」
「T銀プロジェクトの打ち上げ・・・?」
 私も行けば良かったわぁとのんきな笑顔を見せる有希子とは正反対に、池山の顔の血の気は引いていく。
「岡本くんが言っていたけど、あんたと江口くん、酔っ払って駅と反対方向に歩いていったんだって?」
「へ?」
 茶目っ気たっぷりに有希子は片目をつぶってみせる。
「まさか、マロニエへ二人で仲良く入ったんじゃないでしょーねぇ」
 ホテル・マロニエ。
 実は池山達の会社である『TEN』関係者ご用達の愛の城とひそかに囁かれている。
 ・・・目撃者がいて当たり前でないか?
 ずしゃ。
 まだ半分ほど残っていたコーヒーが地面に激突した。横倒しになったカップからはじわじわと茶色の液体がセメントタイルの上を広がっていく。
 池山は半泣きに近い、何とも情けない笑顔を顔に張りつかせたまま、微動だにしない。
「ちょ、ちょっと、和基・・・」
 冗談のつもりで言ったのに笑いとばしてくれないばかりか、激しく動揺しているのを見て取った有希子は困惑した。
「しまったなぁ・・・」
 勘がいいのも困りもの。いきなり核心をついてしまったと見える。久々にゆっくり誘導尋問にかけて弄ぼうと思っていたのに、あっさり獲物は網にかかってしまったのだ。
 拍子抜けにも程があるが、そのくらい和基が弱っているとも言える。
「和基、独りでぐじぐじ悩むのは、あんたにぜんっぜん似合わないわよ」
「・・・そうか?」
 物憂げに池山は顔をあげる。
「そうよ。体に良くないし、第一、仕事に差し障りがでたりしたら、そりゃあ、もう、大変な騒ぎになるわよね。これ以上うちの立石くんに迷惑かけられるのも願い下げだし」
 幼なじみがホモになったかもしれないということは、彼女にとってどうでもいいことらしい。
「・・・はあ?」
「まあ、そういうわけだから」
 ぐいっと池山の顔を両手で引き寄せて、艶然と有希子は笑う。
「とっとと白状しないと、キスするわよ」
 私も上手らしいわよー。意外と。
 なんならお試しになる?と嬉しそうにじわじわと顔を寄せる。
「・・・どこに?」
「この、ラルフのシャツなんか、どうかしら?きっと、ローズピンクが映えるわよねぇ」
 綺麗に手入れされた指先で、つつつとシャツの襟元を触れた。
「さあ、どうする?」
「・・・降参」
 こうして、池山の平凡かつ、それなりに平和な生活は、ますます未知の世界へと突き進んでいくのであった。



「・・・あっきれた」
 池山の勇気を振り絞った懺悔に対する有希子の感想は、これだけだった。
「・・・反省したから、酒はそれ以来控えてるよ」
「やあねぇ。いまさらあんたの酒癖の悪さなんか、屁とも思っちゃいないわよ。そうじゃなくて、うやむやな気持ちのままやっちゃった江口くんに対して腹を立てているあんたに、呆れてるの。それじゃあ、はじめの馴れ初めをすっとばしてすっかり出来上がりきったカップルの、単なる痴話喧嘩じゃない」
「痴話喧嘩・・・?」
「そうよ。セックスをスポーツだなんて勘違いしてきたあんたが、相手に意味を求めるなんて、初めてなんじゃないの?好きでも何でもない相手に、そういうことでそこまで腹を立てるかしら?」
 有希子のことを苦手だと思うのは、こういう時だ。池山が気が付きたくなくって目と耳を塞いで通り過ぎたものを、こうして拾って来て綺麗に並べてみせる。
「でも・・・。男に抱かれるには、俺のプライドが許さない・・・」
 今のところ、自分にわかるのは、それだけだ。
「・・・・そう?それで、これからどうするつもり?」
「・・・とりあえず・・・」
「とりあえず?」
 池山は曇りのない空を仰ぎ見て呟く。
「逃げる」
 有希子は深々とため息をついた。


 『恋の呪文-11-』へ続く。




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