過去・拍手御礼SS 『蜜の家』 

2012, 11. 23 (Fri) 23:21

 十月の拍手御礼用小話です。
 『ずっとずっと甘い口唇』の真神家三男の話です。
 この時は、もう一度拍手をしたら対の次男の話も作りました。
 両方ご覧頂けると嬉しいです。




  記事の一番下の『拍手』ボタンをクリックして頂くと小話をご覧になれます。
  現在は、『睦み月』で『シゲルとミケ』シリーズです。
  飲んだくれ猟師と化け猫の話。
  楽しんで頂けたら幸いです。

 アクセスして下さったり、拍手やバナークリックで励まして下さる皆さんに感謝しています。
 もしもよろしければ感想や要望など頂けると、本当に嬉しいです。


ブログランキング・にほんブログ村へ


   拍手小話はこちら →




『蜜の家』 (真神勝己)



 ドアノブに手をかけてみると、予想通りにすんなり扉が開いた。
「またか・・・」
 ため息を深くついてから玄関へ足を踏み入れると、これもまた予想通りの光景が目に飛び込んできた。
 ポーチには乱暴に脱ぎ捨てられた靴、その先の廊下には脱ぎ捨てられた服が点々と落ちていて、それを一つ一つ拾いあげながら前に進む。
「道しるべかよ・・・」
 この家に間借りしてからおよそ一年。
 さすがにもう慣れてきたが、夜勤と日勤を続けた身としては、疲れが増してくる。
 集めた物をランドリーバスケットに放り込んでからリビングのドアを開けた。
「ただいま・・・?」
 声を落として呼びかけてみるが、応えはない。
 キッチンカウンターの上には食器の残骸、そして広々としたリビングも床に色々放り出されていて、たった数日の不在でよくぞここまでと肩を落とした。
 レースのカーテンしか掛けられていない窓からは月明かりが差し込み、その先にはソファーセットがある。
 資料やノートパソコンが広げっぱなしになっているテーブルの傍らに足を進めた。
長く延ばされたソファーに毛布が乱暴にかかっており、それがゆっくりと規則正しく上下していた。
 重ねられたクッションの上には暗闇にも艶やかな黒髪が伏せられ、しなやかな白い腕と肩が毛布からはみ出ている。
 薄明かりの中、白い肌が浮き上がり、夜の花のような芳香を放つ。
 毛布の下の、白い身体のなめらかさを思うと目眩すら感じる。
 世の中に、これほど魅惑的な生き物を知らない。
 例えようもなく、甘い身体。
 すっかり虜になっている事を自覚せずにはいられない。
 ただただ、食い入るようにその白いうなじを見つめていると、ふいに動いた。
「ん・・・」
 鼻から抜ける声すらどこか甘さを含んでいる。
「・・・かつ・・・み?」
寝返りを打って仰向く小さな顔。
 閉じられたままだった瞼がゆっくり開くと、金色に光る瞳が現われる。
「帰ってきたのか・・・」
 手の甲を眉間に押し当てると、毛布が落ちて薄い桜色にほんのりと染まった胸元があらわになる。
 さらにその先の二つの紅い突起が目にとまると、もう膝を折るしかない。
「そんな格好で・・・。風邪を引く」
 平静を装ってみたところで、この金色の目は全てお見通しと言わんばかりに、にいっと笑う。
 金色の瞳の、孤高の獣。
 自分は彼の思うままだ。
「来いよ、勝己」
 薄い下唇を白くて形の良い指先でゆっくりとなぞって見せる。
 ちらりと覗く小さな舌と白い歯。
 濡れた吐息がこぼれた。
 この男の誘いにあらがえる人はいるのだろうか。
 眉をひそめ、その唇を追う。
「これ以上煽るな、憲・・・」
 ここは蜜の家。
 甘い香りと肉に溺れた、二匹の獣が絡み合う。



     -完-



     < ↓ポチリとしてくださるとうれしいです↓ >

  br_decobanner_20100412095827.gif  にほんブログ村 小説ブログ BL小説へにほんブログ村
スポンサーサイト

タグ:続きを読む

コメント

コメントの投稿

非公開コメント