『ずっと、ずっと甘い口唇』-76-(『楽園』シリーズ) 

2012, 11. 20 (Tue) 19:22

 今日は怒濤の会話ターンです。
 与太話でごめんなさい。

 で。
 小話の方はまだ出来上がっていません。
 やるぞやるぞ詐欺でごめんなさい。

 予告詐欺が続いてイソップのオオカミ少年状態ですが、どうかお見捨てなきよう・・・お願いします。

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  現在は、『睦み月』で『シゲルとミケ』シリーズです。
  飲んだくれ猟師と化け猫の話。
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 『ずっと、ずっと甘い口唇-76-』


「く・・・っ。あんの馬鹿・・・」
 歯ぎしりしながら受話器を下ろすと、頬に冷たい感触がした。
「朝っぱらからお疲れ様」
 いつの間にか本間が隣に立ち、小さなペットボトルを差し出していた。
「春ちゃんが携帯に出たとしても、今日は来ないでしょ、あの二人は」
 はい、ビタミン注入ねと笑われて、少しばつの悪い思いをしながら岡本は受け取る。
「やってくれるわよねえ、あのお坊ちゃまも」
「・・・なに。やっぱりあいつ、ボンボンなわけ?」
 ペットボトルの蓋を開けて、甘酸っぱい液体を一口飲み込んだ。
「あ。岡本さん気が付いたんだ」
「そりゃ、瀬川美咲のターゲットがあんだけ派手にロックオンされりゃ、誰でも気づくだろうよ。まるで大返しみたいだったぜ」
「大返し?」
「ほら、本能寺の変の後に豊臣秀吉が岡山から京都まで十日で引き返した、アレ。まるで今回の土下座祭りそのものだろ」
 そこまでなりふり構わず仕掛けたと言うことは、片桐にかなりの埋蔵金があると嗅ぎつけたからに違いない。
 つくづく懲りないというか、たくましい女性だったなとその相反する容姿を思い浮かべた。
「まあねえ。ま。細かいことはそろそろ私らにも釈明してくれるでしょ。これだけお世話させて頂いているんですし?」
「そうだな・・・」
 肩をすくめて見せる本間に岡本は苦笑する。
「・・・ん?そういや、さっき片桐が今日の会議が流れるって言ってたんだけど・・・」
「ああうん、それ。その話で来たの。あのね。本部長が入院したから、とりあえず今日はお流れ」
「・・・は?」
「昨日、部課長とか幹部クラスでゴルフ大会やってたんだけど、ホールインワンで気を良くした本部長が酔っ払って、足を踏み外しちゃったのよね」
「・・・で?」
「骨は折れてないけど、大事をとって入院」
「その話、どこから・・・」
「受付と秘書チームも参加していたから、そこから速攻で病院送りの情報は昨夜の内に来てたの」
 少しすまなさそうに本間が首を傾けた。
「で、片桐は知ってて、なんで俺は・・・?」
 さすがにここまで蚊帳の外だとあまり気分も良くない。
「たとえ、会議が流れてもお前は定時出勤したからだろ」
 背後からうっそりとした声が降ってきた。
「俺も知らなかったから、我慢しろ・・・」
 なぜか濁った空気をまとう立石が背後に立っていた。
「本間、他にもリークしただろう、その話」
「・・・うん」
「やっぱりな・・・」
 深いため息をついて、手近な椅子に腰を下ろした。
「あん?どうしたよ?」
「あいつらも今日は出てこない・・・」
「は?」
「江口と池山・・・」
「そっちもかよ!!」
 本来なら、彼らも今日の会議で核となるべきだ。
「だって、あそこも物理的距離で、ずいぶんご無沙汰だったから・・・」
 思いやり?と上目遣いに笑い、首を先ほどとは逆の方向に傾かせて見せた。
「それを言うなら、俺は精神的距離でご無沙汰だ・・・」
 はーっと深いため息をついて立石が椅子に沈み込む。
「・・・させてくれなかったんだ、生さん」
 仕事終了の土曜日に立石は長谷川の元へ飛んでいき、この月曜の朝まで行方知れずだったにも関わらず、この様子では指一本触れられずに終わったらしい。
「意外と詰めが甘いの?黒王子って」
「君の突っ込みどころはそこなのか、本間さん・・・」
「ここのところ忙しくて会えなかったから、たまには出来るかなと、ものすごく期待したのに・・・」
 立石の全身から黒いものがにじみ出て渦巻いているのを見たような気がして、二人は思わず目をこする。
「くそ・・・。せめてキスくらいもぎとりゃよかった・・・」
「ストップ!立石」
 慌てて岡本が押しとどめた。
「漏れてる。立石、頭の中が思いっきり漏れてる・・・」
 月曜日の朝は単身者や出向者が送れて出社する事が多く、あまり周囲に人がいないため今のところ聞かれることはないが、雑談にしてはあまりにも内容が濃厚すぎる。
「解った。よくわかった、立石。あの女がお前限定で身持ちが堅いのはよくわかったから落ち着け。何なら愚痴も今晩聞くから我慢しろ」
「あ。今晩も有希子さんお家にいないんだ。そういや出社してないもんね」
「今、お義母さんの料理が無性に食べたいらしいから仕方ないだろ」
 岡本の妻は、ただいま絶賛悪阻中だ。
 初期の頃の食べられない悪阻ではなく、食べたくて仕方がない方向にシフトしている。
「ふうん」
 にやりと、意地悪い笑みを本間が浮かべた。
「ご無沙汰同士で仲良く慰め合うんだあ」
 ぴくりと、岡本のこめかみが動いた。
 新妻はここ最近動物化している。
 全ての意識はお腹の中の子に集中し、夫の存在など皆無だ。
 それこそ、いってらっしゃいのチューもご無沙汰で、寂しい限りの日々。
 だから、片桐たちの蜜月っぷりが少し、いや、かなり羨ましい。
「で。同じくご無沙汰な私も仲間に入れてくれる?」
 地雷のそばをするりとすり抜けての満面の笑みに、男二人は白旗を揚げた。
 この小娘には敵わない。
「・・・はいはい」
 今夜は遅くまで飲むことになりそうだ。
「そういや、片桐たちは結局どこにいるんだ?」
 寮にもいないことは、立石も柚木から聞いている。
 そもそも、あんな壁の薄いところで三日も籠もるには限界がある。
「ああ、銀座に近い超ラグジュアリーホテル?あそこなら別邸のようなもので顔パスだから、飛び込みでも部屋があるのよね」
「Tホテルか・・・」
 高級老舗ホテルの名がすぐに浮かんだ。
「ほんっと、御曹司なんだな、片桐なのに・・・」
 顔パスって何?
 岡本は目眩を覚えた。
「いや、それだけ顔が割れているホテルに春ちゃん連れ込んで三日間も籠もるってのは、凄い度胸だなあって感心したけどね」
 さすがにこれは予想外だ。
 ここまで情熱的になれる男だったとは。
 素直に今、彼の腕の中で眠っているであろう中村が少し羨ましい。
 ただしそれは片桐に対する未練なのか、彼らの恋そのものが眩しいからなのか、解らないけれど。
「片桐さんって、大胆なのか、無鉄砲なのか・・・」
 そして、ちょっと惜しいコトしたかもな、と思う。
 彼の面白さに気が付かなかったなんて。
 今更、ではあるけれど。
「いや、あんまり深く考えてないんじゃねえの?」
 なぜなら、それが片桐だから。
 そう結論づける岡本に、二人は爆笑した。
「ま。俺たちは仕事するか。せっかく出てきたんだしな」
「うん。今夜のために働くよ」
 三人は、それぞれの持ち場に向かって歩き始めた。
 心の中に少しだけ、温かいものを感じながら。







 『ずっと、ずっと甘い口唇-77-』へつづく。




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