『ずっと、ずっと甘い口唇』-65-(『楽園』シリーズ) 

2012, 10. 17 (Wed) 20:04

 今日も短めです。
 久々に髪を切りに行ったら時間が無くなってしまって。
 明日はリアルの仕事が忙しい予定なので小説更新はお休みです。
 余力があれば与太話を。

 金曜日は更新の予定。

 またもや過去と現在が交錯し続けていますが、皆さん、大丈夫でしょうか・・・?
 書きながら不安ですわ・・・。
 もう少し分かり易く書けなかったのかなと後悔しても遅く。


 どの日付のものでも構いませんので、それぞれの記事の下の『拍手』ボタンをクリックすると、おそらく『拍手御礼』というページが展開されるかと思います。
  そこに、小話を添付しています。
  小話は、『拍手御礼』に1話のみ。
  今回は、「ずっとずっと甘い口唇」の保坂VS.第三秘書の篠原です。
  お題は「アタシ、猫」。

 一応、これからも拍手用小話を月に一度書き換える予定です。
 随時オーダー受付中。
 毎月16日の正午締めで、20日頃に新作アップという形を取りたいと考えています。

 
 これからも何かご希望がありましたら、是非リクエストを拍手コメントかメールフォームでお願いします。



 いつも覗きに来て下さる方々、初めて覗いて下さった方々、皆さんに感謝しています。
 バナーや拍手クリックも本当にありがたいです。
 次回はもう少し甘くなるよう頑張りますね。


 今日も、「ピアノレッスン」がBGM。

   
ピアノ・レッスン オリジナル・サウンドトラックピアノ・レッスン オリジナル・サウンドトラック
(1993/12/08)
サントラ

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 本当に良くできたアルバムなのです。
 ピアノ主体で、流れるような旋律が心地よい・・・。
 時々、不安を煽る不協和音もまたよし・・・というか、今の過去話にかかせない曲です。
 そして、最後の光明の瞬間も。
 これは、暗闇から再生する曲なのだと思います。





  記事の一番下の『拍手』ボタンをクリックして頂くと小話をご覧になれます。
  現在は、『睦み月』で『シゲルとミケ』シリーズです。
  飲んだくれ猟師と化け猫の話。
  楽しんで頂けたら幸いです。

 アクセスして下さったり、拍手やバナークリックで励まして下さる皆さんに感謝しています。
 もしもよろしければ感想や要望など頂けると、本当に嬉しいです。


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 『ずっと、ずっと甘い口唇-65-』



「この傷・・・」
 春彦の左の足の甲を指先でゆっくりとさする。
「やっばり、真神さんだったんだな・・・」
 彼の左足の人差し指の付け根の皮膚は、妙な形にひきつっている。
 片桐は祖母が支援している児童保護施設で同じ傷跡を目にしたことがある。
 それは、親に煙草の火を押しつけられた痕だった。
「痛かっただろうに」
 眉をひそめると、緩く首を振られた。
「もう、あまり覚えていないんです。傷も、こうやってだんだん薄れていってるし・・・」
 この状態を薄れたというなら、当時は目を背けたくなるほどひどかったはずだ。
「お前は、清乃さんを守りたかったんだな」
 一度戻ればまた元の木阿弥だと思えばこそ、勇仁が諦めるのを待ち続けたのだろう。
「俺としては、会わせないことが一番だと思い込んでいましたが、そうでないことが解って、正直、気が抜けました」
「え・・・?」
「会わせるべきだったんです。・・・というか、中村の父と一緒にいるところを見せさえすれば、事は簡単に治まるんだったと知って、俺も、叔父たちも脱力しましたよ」


 一年ぶりに会った清乃は本当に別人としか言いようがなかった。
 不便な集落での暮らしは、逆に彼女の心身を鍛えてくれた。
 近所の人たちに支えられながら野山の山菜を採ったり、畑で野菜を育ててみたりしているうちに体力と筋力が付き、細身と言えども健康的な体つきへ変化していた。
 そして、子供のように短く刈り込んだ髪に全員が釘付けになると、夫婦で目を交わしてばつが悪そうに笑った。
「火を焚いていたら、うっかり焼いちゃって・・・」
 首をすくめて笑う姉に、上の叔父が目を丸くする。
「だから、友和さんが焼けている部分を切って整えてくれたんだけど、上手くバランスがとれなくて・・・」
 気が付いたらこの長さになってしまったと、すっかり軽くなってしまった頭を振ってみせるが、とても嬉しそうだ。
「短い髪は切り慣れているんですが、長いのはどうしても慣れなくてですね・・・」
 友和は、病床の両親の介護をしている間ずっと散髪してやっていたという。ケアをし易いように短髪に作ることは慣れていたが、清乃のような髪を綺麗に顎の線で揃えてやることは難しすぎたらしい。
 しかし改めて見ると、そう照れ笑いしている友和の頭は見事な虎刈りだった。
 今度は全員の視線が彼の頭髪に一斉に注がれる。
「・・・これは、清乃さんが・・・」
 頬を指でかきながらぽそりと言う友和の横で、清乃が口を尖らせた。
「あら。トラのおまわりさんって、子供たちには評判良いのよ」
「姉さん、トラはトラでもあんまりだろう・・・」
 今度は下の叔父が大柄な肩を大げさに落とした。
「・・・お母さん。幸せなんだね」
 今、母と中村の父はまるでつがいの鳥のようだった。
 労り合い、睦み合う。
 まるで、随分昔から一緒だったかのように自然だった。
 これ以上の組み合わせはなく、祖父が最後に目にしたのはこの姿だったのだろうと、今は解る。
「ええ、そうね。でも、貴方を辛い目に遭わせていたなんて・・・」
 清乃の幸せを思って、叔父たちが解雇された使用にたちの再就職先を斡旋したり、退職金などを渡したため、その事実は知らされなかったし、春彦への暴行は色々な偶然が重なって親戚たちの耳に入っていなかった。
 事実を知っている大人たちは勇仁を恐れて口をつぐみ続け、ようやく救出できたのは、春彦の高校の学友たちがわざわざ駐在所まで尋ねていったからに他ならない。
「間に合って、本当に良かった。春彦。私の考えが足りなくて、ごめんなさい」
 抱きしめてきた腕は、暖かく、心地よかった。
 昔はとても頼りなくて、雛鳥の翼のようだった。
 物心ついた時から、小さな巣箱の中で身を寄せ合って暮らしてきたように思う。
 今は、とても心強い腕。
 母は成長し、巣立ったのだ。
 今は、空も高く、どこへでも飛べるはず。
 なら、次は自分の番だろう。
 母に抱きしめられたまま春彦は、心から笑った。

 こんなに、心が軽いのは初めてだ。




 『ずっと、ずっと甘い口唇-66-』へつづく。







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