『ずっと、ずっと甘い口唇』-61-(『楽園』シリーズ) 

2012, 10. 11 (Thu) 20:22

 やっと更新。

 明日の朝に、もう一回、細かい部分の加筆訂正します。

 だらだらと長いです。
 切っても切っても、だめだった・・・。
 敗北宣言です・・・。
 そもそも番外編をこの二人(真神夫妻)で予定していたので、あらすじ状態になって申し訳ないです。
 予定では、あと一話くらいかな、真神家の一族・・・。

 明日はとりあえずがんばります。
 でも、土曜日はお休みしますね。



 どの日付のものでも構いませんので、それぞれの記事の下の『拍手』ボタンをクリックすると、おそらく『拍手御礼』というページが展開されるかと思います。
  そこに、小話を添付しています。
  小話は、『拍手御礼』に1話のみ。
  今回は、「ずっとずっと甘い口唇」の保坂VS.第三秘書の篠原です。
  お題は「アタシ、猫」。

 一応、これからも拍手用小話を月に一度書き換える予定です。
 随時オーダー受付中。
 毎月16日の正午締めで、20日頃に新作アップという形を取りたいと考えています。

 
 これからも何かご希望がありましたら、是非リクエストを拍手コメントかメールフォームでお願いします。


 そういや、締め切りもうすぐなのですが、何かリクエストありませんか~?
 このままでいくと、有三(39歳)VS.啓介(12歳)になりそうです・・・。
 どうして私が考えつくのは戦いなんだろう。







  記事の一番下の『拍手』ボタンをクリックして頂くと小話をご覧になれます。
  現在は、『睦み月』で『シゲルとミケ』シリーズです。
  飲んだくれ猟師と化け猫の話。
  楽しんで頂けたら幸いです。

 アクセスして下さったり、拍手やバナークリックで励まして下さる皆さんに感謝しています。
 もしもよろしければ感想や要望など頂けると、本当に嬉しいです。


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 『ずっと、ずっと甘い口唇-61-』



 基本的に、議員の妻は多忙を極める。
 地方出身ならばなおさらのことで、夫が東京で国会に詰めている間、地元の根回しなどは妻の仕事となる。各方面の婦人会、票のとりまとめをしてくれる人々の冠婚葬祭の出席、地方行事の出席や挨拶回り。もちろん一人ではとてもこなせないので、幹部秘書と手分けをして行う。一方で、都心で妻同伴のセレモニーやパーティがあればそれはもちろん出席せねばならず、まさに夫同様に分刻みのスケジュールとなる可能性が高い。
 清乃の場合、先祖代々の家柄であったことが幸いして、地元での活動に関してはさほど心配する必要がなかったので、療養に専念することが出来た。
 春彦が二歳になる頃には通常の生活が送れる程度に回復し、長年暮らした実家から勇仁の暮らす新居へ母子共々移り住んだ。
 それは、勇仁から惣一郎へ初めての要求だった。
 確かに、世間では愛妻家で通している以上、これ以上の別居はありえない。
 しかしそれは、惣一郎夫妻の娘に対する気遣いとは真っ向から対立するものだった。
 どんなに時が経っても清乃の記憶と身体から、あの夜が消えることはない。
 彼女は、未だに勇仁を恐れていた。
 それゆえに抵抗する力はなく、また、周囲も止めることが出来なかった。
 ほんの数年の間に華々しく活躍し政財界での存在感を増した勇仁は、もはや亡き義兄はもちろん舅の業績すらも越えつつある。
 次第に真神家での主導権は勇仁のものとなっていった。
 本宅同様に広い新居で三人の生活は始まった。
 それは、長く続くぎこちない日々の幕開けでしかなかった。
 清乃は勇仁を目の前にすると青ざめて俯き、母親同様に繊細な息子はかすがいになるどころかいつまで経ってもなじめずに母親か使用人たちの後ろに隠れてばかりいた。
 ひと月も過ぎないうちに、全く埋まらない溝に苛立った勇仁が高圧的な態度に出始め、ますます関係はこじれ、暗くて冷たい空気が常に漂うようになった。
 たまりかねた清乃が勇気を出して懇願したことは何度かある。

 どうか、もう捨て置いてくださいと。

 しかし、勇仁は言い放った。
 誰のおかげで、この家を存続できていると思う。

 お前たちはその代償だと。
 誰が離してやるものかと、彼女の自由をどんどん奪っていった。

 地方では複数の使用人を監視につけ、東京へ伴った場合も同様に、自分のそばから片時も離すまいと目を配り続ける。
 それが十年近く続いたところで、事態に変化が生じた。
 勇仁の愛人の一人が子供を産んだ。
 彼女は晴美と言い、まだ二十代半ばだった。華やかな容姿も合わせて銀座では名ホステスと評判で、妊娠を機に仕事を辞めて勇仁の別宅で内縁の妻として暮らしていた。
 そして生まれたのが裕貴だった。
 次男として認知するという勇仁の発言に、異を唱える者はいない。
 晴美は東京での妻としての役割を当然のものとして、こなしていくようになる。
 さらに勇仁は彼らを当たり前のように地方に伴い、時には清乃たちとともに生活をさせた。
 本妻は清乃であることは間違いない。
 しかし、彼は晴美母子への厚遇を周りに見せつけた。
 支援者たちも次第に代替わりしていき、勇仁を非難する者は皆無だった。
 気が付くと、皆、勇仁の顔色を伺い、おもねるようになっていた。
 無力な清乃と春彦は、まるで風になぶられる木のようにただ黙って立ち尽くすしかない。

 そんな忍従の日々が数年続いたところで、足下をすくわれる事件が起こる。
 勇仁をよく思わない勢力がひそかに仕組んだ贈収賄が摘発され、公になった。
 春彦が、高校生になったばかりの事だった。

 ここが、運命の分かれ道だったと言って良い。


「もう、このあたりになると、片桐さんもよくご存じでしょう」
 片桐の胸に身体を預けたまま、春彦はぽつりと言う。
「まあな。マスコミもこぞって連日トップ扱いだったし」
 片手で囲い込んだ彼の肩をさすりながら、片桐は肯いた。
 政治家に、金のやりとりはつきものである。
 正直なところ、全く身綺麗な政治家など、天然記念物に近いくらい希少なものだと片桐は思っている。
 はっきり質したことはないが、長田家にしてもそれは同じ事。
 ようはそれが表に出てしまうのは事務方の要領がよほど悪いか、周囲に嵌められた時と割り切っている。
 勇仁の場合は、後者だった。
「それにあれは・・・。後味の悪い結末だったからな」
 気遣わしげに頬を撫でられて、深く息をついた。
「そうでないと、今頃父は政界を追われていたでしょう」
「・・・まあな。俺としてはよくぞここまで持ち直したと思うけど・・・」
 頬に寄せられた手の温かさに、春彦は目を閉じる。


 危機一髪で事前に摘発の情報を入手した勇仁は、追及の手をかわすために休暇と称して晴美たちを伴って海外旅行へ出かけ、雲隠れした。
 その後、一切の関わりはないと筆頭秘書が主張するのみだった。
 しかしそれはただの時間稼ぎで、あまり良い手段とは言えない。
 政界の寵児は、一晩にしてただの卑怯者へと世論は変っていた。
 そもそも、このようなことで追われる事態になったということは、長年政界に身を置いた惣一郎の力がもはや何の足しにもならない事を意味していた。
 ここで、惣一郎が最後の決断をし、実行する。
 それは惣一郎独りで警察に出頭し、すべては自分の指示で行ったことであり、婿は一切関わっていないと証言することだった。
 幾日か取り調べを受けている最中に彼は倒れ、あっけなく世を去った。
 被疑者死亡。
 しかも、後に出てきた資料により、実際に贈収賄が存在したかすらも証明できない事態になった。
 さすがの反対勢力もこれ以上声高に追求することは出来なかった。
 戦後の日本を作った功労者に、贈収賄の汚名を着せて殺したも同然だったからだ。
 歴史に名を残す男の最期というのに、葬儀は寂しいものとなった。
 心労で倒れた惣一郎の妻の芳恵に変って、娘の清乃が喪主の勤めを果たした。
 勇仁は葬儀に参列しなかった。
 事件との関連性の払拭だとマスコミは報じたが、そもそもその突然の死に、帰国自体が間に合わなかったのが真実だった。
 それから十日もしないうちに、夫の後を追うように芳恵も息を引き取った。
 この時も、清乃が独りで取り仕切った。
 公の場に姿を現さない勇仁の沈黙が続く。

 そして、惣一郎の四十九日を終えた数日後に、清乃が秘書を通じて惣一郎の遺言を発表した。
 
 勇仁は、長男死去後の真神家のために惣一郎たっての願いで清乃の婿にしたこと。
 実際は、結婚当初から二人の関係は破綻していたこと。
 数年後、彼は晴美と出会って恋に落ちて息子を設け、離婚を要求したが真神家が応じなかったこと。
 老いた惣一郎は娘夫婦の間を取り持つために奔走し、今回の事件の発端となってしまった事。
 世間を騒がせた責任を持ち、自分の葬儀の後は離婚を了承し、清乃は離籍。これからは晴美と裕貴が勇仁の妻であり息子であることを公表すること。
 真神家本家血筋の者は全員政界から一切手を引く代わり、政治基盤とそれにつらなる資金を真神勇仁に託す。
 そして、贈収賄に全くの無関係である勇仁はこれからも政界に残ることを許して欲しい。

 それは、型破りな遺言でセンセーショナルであったため、まるでドラマだと海外にまで知れ渡った。
 その騒ぎのなか勇仁は何事もなかったかのように議員席に座って活躍し、晴美は長く愛人として尽くし続けた悲劇のヒロインとしてもてはやされた。
 世間の同情も集まって、すべてはこれでうやむやになり、ほぼ手打ちとなった。
 あまりにも単純すぎるが、時が経つにつれ何もかも色あせていき、次々と現われる大事件やスキャンダルに真神惣一郎の死は流され、忘れ去られていった。

 惣一郎がまさに命と引き替えにした最後の一手は、ぎりぎりのところでなんとか功を奏したのである。
 








 『ずっと、ずっと甘い口唇-62-』へつづく。







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