『ずっと、ずっと甘い口唇』-58-(『楽園』シリーズ) 

2012, 10. 03 (Wed) 19:02

 秋の空が、とても澄んでいて綺麗です。

 しかし、私の引きこもり生活はまだ続いておりますですよ・・・。
 せっかくの行楽シーズンなのに、しかも今日は映画が安く観られる日だったのに、せいぜい近所のスーパーとクリーニング屋にしか行っていません。
 そういや、スーパーを出てすぐの花壇でバックパッカーの青年二人が総菜を広げて食べていました。
 ぱっと見ただけですが、理知的な眼鏡をかけた青年と、ちょっとやんちゃな感じの青年。
 二人の関係が友人なのか、兄弟のなのかはわかりませんでしたが、のんびり話ながら箸を器用に操っておりました。
 目の前にすぐ道路があって、抜け道としてものすごく車の行き来があるにもかかわらず・・・です。
 なので、「キミタチ、何もそんなところで食べなくても、一分ほど歩いたところに広い公園とベンチがあるよ」と教えたかったのですが、思い浮かぶのが、「ごー、すとれーと、でぃすうぇい、わんみにっと、てくてくてく(指会話)、ぱーくあんどべんち」というどうしょうもない言葉だったので諦めました。
 ・・・風邪をうつすのも悪いしね。
 と、負け惜しみを。
 彼らのこれからの旅路の無事と、何か楽しいことをこの国で見聞きできることを祈ります。

 ところで、今日の話は・・・。
 だんだんと暗い方へ行きますので・・・。
 あと二話くらいそんな感じと思いますが、おつきあい下さい。

   どの日付のものでも構いませんので、それぞれの記事の下の『拍手』ボタンをクリックすると、おそらく『拍手御礼』というページが展開されるかと思います。
  そこに、小話を添付しています。
  小話は、『拍手御礼』に1話のみ。
  今回は、「ずっとずっと甘い口唇」の保坂VS.第三秘書の篠原です。
  お題は「アタシ、猫」。

 一応、これからも拍手用小話を月に一度書き換える予定です。
 随時オーダー受付中。
 毎月16日の正午締めで、20日頃に新作アップという形を取りたいと考えています。

 
 これからも何かご希望がありましたら、是非リクエストを拍手コメントかメールフォームでお願いします。


 ネタバレになりますが、「真神勇仁VS.片桐啓介、ラグジュアリーホテルでの戦い」は、これを入れるとさらに話が膨らんで大きく逸れそうな気がしたので外しました。
 大人げないオトナと、大人になりたいコドモの舌戦が実はあります。
 つうか、片桐、12歳の頃はかわいげないんだよな・・・。
 その話は、またいつか後ほど。


 いつも立ち寄って下さり有り難うございます。
 拍手やバナーをクリックして励まして下さる方々にも感謝しています。

 ではでは、また明日。





  記事の一番下の『拍手』ボタンをクリックして頂くと小話をご覧になれます。
  現在は、『睦み月』で『シゲルとミケ』シリーズです。
  飲んだくれ猟師と化け猫の話。
  楽しんで頂けたら幸いです。

 アクセスして下さったり、拍手やバナークリックで励まして下さる皆さんに感謝しています。
 もしもよろしければ感想や要望など頂けると、本当に嬉しいです。


ブログランキング・にほんブログ村へ


   拍手小話はこちら →

 『ずっと、ずっと甘い口唇-58-』



「・・・真神さんに会った瞬間、ああ俺の親父と同じタイプだなと思った」

 二人は食事を終え、片桐が立ち上がり茶器だけをソファ前のテーブルに運び、紅茶をカップへ注ぐ。
 ポットの中でリンゴとイチゴとキウイがゆらゆらと揺れた。
「同じタイプ?」
 肩を抱かれてソファに座らされた春彦は、ぽつりと問う。
「妻だけを、いや、一人の女以外、何も必要としない男だ」
「・・・」
 真神勇仁の、妻への執着は子供の目にも明らかだった。
「真神さんは、あれな。犬猫ですらオスは家の中へ入れること許すまじって感じだったな」
 まだ小学生の自分すら排除しようとするほどの、凄まじい嫉妬。
 あの時は、祖父母の後ろ盾がなければどうなっていたかわからない。
「・・・ええ。それは誇張ではなく、実際母は雌の小鳥ですら手元に置くことが叶いませんでした」

 かろうじて、息子を養育することだけは許された。
 そして、邸宅内の庭で花を愛でることだけ。
 母子で幽閉されているに近い毎日だった。

「そういや俺も昔、松濤の家で滞在中にインコを飼わせてもらったが、ある日驚くようなことがあってな」
「・・・はい」
 そっと、暖かな湯気を上げるティーカップを両手の中におさめる。
 琥珀色の液体から甘酸っぱい香りがほのかに上がった。
「まだ羽も満足に生えそろっていないヒナが親鳥にかみ殺されて巣から引きずり出されたんだ」
「え・・・?」
「祖母が一緒に墓を作りながら教えてくれた。発情している鳥にはたまにあることだと。早く交尾したいのに子供がまとわりつくと、衝動的に殺してしまうらしい」
 それは、他の動物でも起こりうることだと聞いた時に、なんとなく父を思い浮かべた。
「俺は、その殺されたヒナに自分を重ねて急に怖くなった。多分、祖母は解っていたのだろう。黙ってしばらく墓に手を合わせた後、さすがにあれにそこまでの度胸はない。そもそも絢子が許さないからな、と笑った」
 そしてふいに真顔になって言った。

 殺されたくなければ、強くなれ。
 このヒナは、可哀相だが弱かった。
 親が何に苛立っているのか解らない鈍さは、弱さに通じる、と。

「その当時、就学前とはいえなぜ俺だけ頻繁に松濤の家にやらされるのか、小さいなりに疑問だった。でもそれも、すーっと雲が晴れるように謎が解けたよ」
 父には、母と二人きりの時間が何よりも代え難いのだと。
「別に邪険にされていたわけじゃない。ちゃんと世話をしてくれたし、遊んでくれた。普通の父親・・・。そうだな、よそより少し躾に厳しい父親だったのかもしれない。とにかく当時の親父はテンパっていたんだと思う」
 普通なら会話をすることすら機会の無いはずの大政治家の愛娘を、略奪に近い形で九州に連れ帰り、繋がりの浅いまま始まった新婚生活と出産。
 夫として、男として、そして父親としてどうすればよいのか、若い父は混乱していた。
 それを危惧した絢子は、まずは二人でいること、嫁ぎ先に根を張ることを優先した。
 父親になるのは後からで良いと。
 そうして、啓介は長田家で過ごす時間を多く持つことになる。
 両家で何度も話し合った末の決断だった。
「・・・そうだったのですか。この間お会いした時、俺には全くわかりませんでした」
「うん。それは、さすがに親父も俺も随分落ち着いてきたからかもな。でも俺もそれで達観したわけじゃないから、何度かお袋を取り合って父と大喧嘩したよ。で、最中におかしいだろうと思ったよ。息子に本気を出す父親がどこにいるんだとね」
 絢子が片桐の家と土地に馴染んだ頃にはさすがに周囲も慣れて、この家の風物詩とさえ言われた。
「うちの場合は、親父の偏愛っぷりをお袋を含めたみんなで笑い飛ばす明るさと力があった。だけど真神さんのは、そういうわけにいかなかったんだな」

 片桐と出会った時からほどなくして真神勇仁は銀座の有名ホステスを愛人に囲い、そして裕貴を産ませて認知し、やがて清乃が真神家を明け渡して去ったのは周知の事実である。

「ええ・・・。父の暴走を止めることは、誰も出来ませんでした」
 空になったまま抱え込んでいるカップを横からそっと取り上げて、片桐は春彦を背後から抱きしめる。
 ゆっくりと背中を広い胸に預けて、春彦はひそりと言う。
「父は、母に、最後まで言えなかった。十数年も、がんじがらめに縛り付けておきながら、一言も言えなかったんです」
 黙って、片桐は艶やかな黒髪に唇を寄せた。
 ぬくもりを、互いに感じて目を閉じる。

「たった一言。・・・愛してると、そう言えば、それでよかったのに・・・」





 『ずっと、ずっと甘い口唇-59-』へつづく。







     < ↓ポチリとしてくださるとうれしいです↓ >

  br_decobanner_20100412095827.gif  にほんブログ村 小説ブログ BL小説へにほんブログ村


スポンサーサイト

タグ:続きを読む

コメント

コメントの投稿

非公開コメント