『ずっと、ずっと甘い口唇』-57-(『楽園』シリーズ) 

2012, 10. 02 (Tue) 19:42

 今日は久々に長いです。
 長いのに、予定した場面までたどりつかなかったんですけどね。とほほ・・・。

 ようやく、重要な話の一つにとりかかれただけでも、良しとしたい・・・です。

 男の子のお母さんをやっている知人が良く口にするのですが・・・。
 「男の子って、ほんっと馬鹿よー。いくつになっても、馬鹿」

 ・・・彼女の指す男の子はもちろん息子さんのことなのですが。
 その息子さんは、私から見れば十分少女漫画的身長と容貌と頭脳を兼ね備えていて、ものごっつ羨ましいのですが、それでも中身はおばかさんなのだそうです。
 ・・・それで、バランスがとれているのかもしれませんね。
 いや、それでこそ可愛いというか。

 私が接する機会のある男の子たちも、外と中のバランスがまだとれていないなあと言う感じなのですが、そこが本当にたまらなくかわいらしいです。
 未来がまだまだ先に開かれている子供たちはいつもきらきら輝いていて、男の子も女の子も、みんな可愛い。
 眺めていて、うきうきします。

 ・・・まあ、年取った証拠ですな。



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  そこに、小話を添付しています。
  小話は、『拍手御礼』に1話のみ。
  今回は、「ずっとずっと甘い口唇」の保坂VS.第三秘書の篠原です。
  お題は「アタシ、猫」。

 一応、これからも拍手用小話を月に一度書き換える予定です。
 随時オーダー受付中。
 毎月16日の正午締めで、20日頃に新作アップという形を取りたいと考えています。

 
 これからも何かご希望がありましたら、是非リクエストを拍手コメントかメールフォームでお願いします。



 いつも立ち寄って下さり有り難うございます。
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 明日も頑張りたいです。

 ではでは、また。





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  現在は、『睦み月』で『シゲルとミケ』シリーズです。
  飲んだくれ猟師と化け猫の話。
  楽しんで頂けたら幸いです。

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 『ずっと、ずっと甘い口唇-57-』


 パウダールームに足を踏み入れて気が付いた。
 使用済みのタオルやアメニティが新しいものに変えてあり、バスルームも綺麗に掃除されていた。先ほど片桐と立ち話をしていた客室係は室内清掃のために入室していたのだと知る。自分が眠っている間に片桐が指示したのであろうか。
 そういえば、チェックアウトは何時だろうと気になりながらも、シャワーを浴びているうちに、ふと、先ほど見かけたティーポットが頭に浮かんだ。

 それは、母が父に伴われて数日間家を空けた後のことだった。
テーブルの上に置かれた透明なポットの中でリンゴやオレンジが揺らめくのを初めて見た時、幼い自分はあまりに綺麗なのでぽかんと口を開けていたのを覚えている。
 すると、それを作ってくれた母が嬉しそうに笑った。
 そして、内緒話をするように声を潜めていった。
 「これは、王子様の、魔法の紅茶なのよ」・・・と。
 以来、母子の間でそれは「魔法の紅茶」だった。

 簡単に汗を流してバスローブを羽織って出ると、ちょうどルームサービスの係が朝食の配膳をしているところだった。
 椅子とともにセッティングされたテーブルの上には、それぞれホテルのマークが刻印されたカトラリーが綺麗に並べられ、ジュースとパンとコーヒーと目玉焼きとサラダとフルーツ。そして中央にはコーヒーの入った銀のポットの隣には、ガラスのティーウォーマーの上に載せられたフルーツティーが陽の光に当たって輝いていた。
「・・・」
 吸い寄せられるようにティーポットを見つめて立ちすくむと、片桐に手を引かれて椅子に座らされた。
 まるで魔法のようだった。
 客室係たちの手際の良さも、優雅な部屋のしつらえも、片桐のエスコートも。
 ふわふわとした心地のまま、促されるままに朝食に手をつけた。
 別世界にいるようだ。
 いつもの寮生活とはまるで違う朝の光景に、自分はまだ眠っているのではないかと疑いたくなったが、これは現実だった。
 向かいに座る片桐はカトラリーを自然に操り、綺麗に平らげていく。
 思わず見とれていると、視線に気が付いた彼が、少し照れくさそうに笑った。
「ん?どうした?」
 この笑顔が、何よりも夢のようだ。
 なので、夢うつつのまま、思ったことが口から出る。
「紅茶・・・。その紅茶、さっきも・・・」
 まとまりのないまま出た言葉なのに、それでも片桐はすぐに理解したらしく、ああ、と肯いた。
「俺も、久々に飲むんだけどな。自分ではさすがにこんなの淹れないから」
 そう言って、ポットを取り上げてガラスのティーカップに紅茶を静かに注ぎ、春彦の前にそっと置いた。
「今朝、清乃さんを思い出したら急に飲みたくなって、オーダーしたんだ」
 真神清乃。
 春彦の母の以前の名前だ。
「母に会ったことがあるのですか?」
「ああ。それこそちょうど今の裕貴君くらいのころかな。かなり大がかりなパーティがあって、会場もこのホテルだった」
 

 それは、十数年前の新年のことだった。
 片桐は、高級ホテルでのパーティに出席していた。
 祖父母に伴われてこういった場へ出るのはそれが初めてではないので、慣れたものだった。会場に着いて最初のうちこそ挨拶回りに付き合わされるものの、小一時間もしたら解放されて好きなようにさせて貰っていた。
 政財界の主だった人々や海外からの賓客が入り交じる大人の世界だが、次世代を担う若者、そして子供たちもさりげなく紛れ込んでいる。
 すべては、彼らの、または家や会社の未来のためだった。
 しかし、背負うものもなく何の気負いもない片桐がここで無理に親交を深める必要はなく、その世界はぐるりと眺めてしまえば、後は退屈なだけだ。
 こっそり抜け出してどこかで時間を潰すかと思っていた出口を目指したところ、会場の片隅で気になる女性を見つけた。
 彼女はひどく青ざめて、壁に背を預け気味に立っていた。
 体調が悪そうだったが、まだ始まったばかりのパーティの華やかな趣向の数々に人々はやや興奮していて、ひっそりと立ちすくむ女性に誰も気が付かない。
 見ている間もその場で倒れてしまうのではないかと気が気ではなく、片桐は歩み寄って声をかける。
 改めて見てみると、まるでおとぎ話の世界から出てきたのではないかと思うほど、とても美しい女性だった。
 しかし、その白い額にはうっすらと冷や汗が浮かんでいて生気がなかった。
「あの・・・。大丈夫ですか?」
 控えめな少年の声は、ざわめきにかき消されて、彼女の耳に届かない。
 一瞬ためらったが、思い切って注意を引くために、そっと、細い指先に触れてみた。
 女性の手は、まるで氷のように冷たくて固かった。
 子供の指の感触に彼女はぴくりと肩をふるわせ、目を見開いて振り向く。
「失礼ですが、もしかしてお加減が、悪いのですか?」
 小柄な彼女は高いヒールを履いているにもかかわらず、まだ大人になりきれていない自分よりほんの少し高いだけで、目線があまり変らなかった。
 九州に戻れば毎日屋外を走り回っている自分は真冬でも浅黒い肌をしており、硬い手足と隠しきれない庶民臭はこのような場ではあまりにも浮いていて、せっかくのオーダーメイドの礼服が笑ってしまうほど似合わない。
 しかし、いわゆる『昭和の初めの少年』風な自分の容姿は、どこであっても年寄りと女性にはなぜか好感を持たれていた。
 だから今のように突然触れて話しかけても、拒絶されない自信がある。
「もしもよろしければ、一度ここを出て休みませんか」
 気の毒なことに、今自分たちのいる場所の近くには椅子がなく、身体を休めたいならば出て行くしかない。
 下からすくい上げるように覗き込むと、こぼれそうだと思うほど大きな黒い瞳とぶつかった。
 見ず知らずの子供の誘いに戸惑いを隠せないようだったが、彼女自身もこの会場から出たいと願っていたらしく、唇を一瞬かみしめた後、か細い声で答える。
「・・・ありがとう、ございます」
「では、こちらに。近くに静かなラウンジがありますから、そこへ行きましょう」
「・・・ええ」
 そのまま指先をしっかりと握って、ゆっくりと足を前に踏み出してみた。
 振り返って彼女の足下を見つめると、なんとかまだ歩く気力は残っている事が解った。
 シャンデリアに照らされた顔色は、先ほどよりかは少しましに見える。
「大丈夫です。いきましょう」
 一生懸命微笑みの形を作ろうとする彼女を元気づけたくて、握る手に力を入れた。

 運良く、ラウンジの中でもグリーンに隠れて目立たない位置にあり、身体を包み込むような形をソファが設置されている所へ女性を案内することが出来た。
 座り込むなり、彼女は一言断りをいれてから背もたれに身を預け、手にしたハンカチで口元を押さえてうつむき加減になってしまう。
 これほど体調が悪いならばホテルのスタッフか会場係に任せるべきなのかもしれないが、なんとなく事を荒立ててはならない気がした。
 不安げに自分たちを伺うウエイトレスの一人を手招きしながら、そっと唇に人差し指を当てて見せた。
 片桐の言わんとしていることを素早く理解した彼女は、足音をなるべく殺してそっと近づき、黙ってメニューを差し出す。
 その中のいくつかを指で示してオーダーを終え、しばらく向かいの女性を見守る。
 やがてウェイトレスがトレイを抱えて茶器を運んでくる音に、ようやく女性は顔を上げた。
「あ・・・。ごめんなさい」
 多少回復し、ようやく周囲が見えるようになったのか、申し訳なさそうに小さく首を傾ける。
「いえ・・・。とりあえず、勝手ながら少し注文してみたのですが、どれか口に出来るものはありますか?」
 テーブルに並べられたのは、フルーツ、シャーベット、オレンジジュース、そしてガラスのポットに仕込まれたフルーツティーだった。
「まあ・・・」
「僕の母が、体調の悪い時によく欲しがるものを思い出して頼んだのですが・・・。どうですか?」
「・・・では、このお茶を」
 ウェイトレスはそれを耳にするとすぐにガラスのティーカップに紅茶を注ぐ。
 ふわりと、湯気とともにイチゴやリンゴの甘い香りが立ち上った。
「良い香り・・・」
 一口含んでその甘さが喉を通り全身に行き渡ったのか、ようやく心からほほえんだ。
「美味しいわ」
 花が開くように笑う、というのはこのようなことを言うんだなと、片桐は見とれた。
 形の良い額をあらわにして、絹糸のような漆黒の髪を肩の辺りで切りそろえ、理知的で清らかな雰囲気を際立たせていたが、細く尖ったおとがいと白磁のような肌がはかなげで、まるで春になったら消えてしまう氷の精のように見える。
 正直、温かい飲み物を飲ませてこの場で溶けてしまっても不思議はないと思うほどに、その存在感は危うかった。
 しかしもちろん彼女は消えて無くなることはなく、ゆっくりと時間をかけて紅茶を飲み干した後、少し血の気が戻った頬を押さえて、深くため息をつく。
「ありがとう。おかげさまで醜態をさらさずに済んだわ。私は真神清乃と申します。貴方のお名前は?」
 このような場所で名前を問われると、いつもどう答えたものかと迷う。
 しかし、片桐の名を名乗っても相手が混乱するだけなので、観念して祖父母の指示に従う。
「長田の・・・。啓介といいます」
「ああ、長田家の・・・。そういえば、有三様が今日はご自慢のお孫さんをお連れだと耳にしたわ。貴方だったのね」
「はい。・・・あ、いえ。祖父の自慢の孫は僕かどうかはわかりません。何しろ大所帯ですから」
「まあ、ご謙遜を」
 二敗目の紅茶に蜂蜜を入れてスプーンでかき混ぜながら、くすりと笑った。
 真神清乃。
 北部地方の大物政治家の跡取り娘だと、長田家で叩き込まれた出席者相関図を思い浮かべた。
 サスペンス小説よりも面白いそれらの相関図は一つも漏らさず確かに頭に入っているが、その中に容姿の詳細な記載はないため、こうして直に会って初めてデータが完成する。
 それにしても、このような世界には美しい女性が数多く存在するが、彼女の美貌はずば抜けており、そして異質に思えた。
 かなりやり手とも言われている真神家の頭に抱くには、あまりにも、線が細すぎる。
「大変失礼だけど、貴方、おいくつかしら?」
 その柔らかすぎる声色ははかなげで、世俗からかけ離れていた。
「12歳です」
「まあ、ちょうど私の子供の2倍なのね」
 とても、子供を産んだとは思えない少女めいた細い身体を前に目を見張るが、そういえば、六歳の男の子がいると書き添えられていたことを思い出す。
 そして、彼女の婿は・・・。
 
「おい。お前、ここで何している」

 怒りを押し殺したような声が二人の間に割って入った。
 一瞬にして、清乃の表情が凍りついた。

 振り向くと、眼光鋭い男が立っている。
 背が高く、均整のとれた体つきと彫りの深い顔だちからは成熟した男の完成した色香が漂い、一瞬にしてこの場を支配する。

 真神勇仁。
 新進気鋭の若手政治家。
 清乃の夫が、そこにいた。




 『ずっと、ずっと甘い口唇-58-』へつづく。







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