『ずっと、ずっと甘い口唇』-38-(『楽園』シリーズ) 

2012, 08. 10 (Fri) 19:50

 今日も駆け込み更新。
 これと言った内容がなくてごめんなさい。


 いつもおなじ文面で恐縮ですが・・・。

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 思い切って、エロのみとか、どうだろう・・・。
 それとも、チューのみがお好みかしら・・・。

 
 締め切りは、8/16の昼の12時です。

 結果は後日お知らせします。
 今のところ、早い者順で、なんなら一ヶ月に一本のサイクルで回していくのも良いかなと思っています。
 いつも猫写真では飽きるでしょうしね。


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 ああ、時間泥棒が・・・。

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 『ずっと、ずっと甘い口唇-38-』





『了解。』

 ただそれだけ書き込まれた付箋紙を手のひらに載せて、春彦は何度も何度もそれを見つめてしまう。
 片桐はどんな筆記具を使っても、まるで毛筆のようにとめはねがしっかり入りゆったりと整った線で字を書く。初めてそれを目にした時に、その外見とのギャップに少し驚いた。
 机の上の整理は苦手で、時々提出書類を見失っては本間に叱られているのをよく目にしていたので、もっと大雑把な字を書くものだとどこかで思っていたからだ。
 しかし一緒にいる時間が長くなるうちに、彼の、育ちの良さとおおらかさ、そして優しさがにじみ出ているのだと知った。
 そして改めて、先ほどこっそり壁に貼っていった付箋紙を眺めると、そこに込められた色々な意味が見えてくる。

 事情はわかった。
 大丈夫。
 任せておけ。

 他にも、何か自分に語りかけてきそうで、それから目をそらせないでいた。
 と、そこで胸ポケットに入れていた携帯電話が震えた。
 ちらりと周りを見ると、同室にいるTEN関係者全員そうだったようで、一瞬にして緊張が走る。
 とりあえず、ガラス窓から死角になる場所に自分がいることを確認し、おそるおそるメールを開く。
 すると、先ほど片桐と連れだって出て行った柚木からのもので、これは片桐からの伝言だと断った上で現在の状況と今後の言動に対する指示と注意点が簡潔に書かれていた。
 ならば、今自分に出来ることは何だろう。
 じっと隣室の方を見つめると、ガラス越しに事務職の女子社員と目が合った。
 一瞬見開いたままだった目を、彼女は少し恥ずかしそうにそらした。
 少し猫背気味で眼鏡をかけた男性は、片桐たちが出かけた少し後に部屋を出たまま戻らない。
 吉川課長はずっと携帯電話をいじりつづけ、残りの男性たちはめいめい机の上に覆い被さって何か書くか読むかをしていて、けっして見上げようとしなかった。
 意外なことに、現在は誰もこちらを監視していないことになる。
 同じくそれに気が付いた技術会社のリーダーである石川が、声を低めて部下たちに何事か指示を出している。
 ノーマークなら、こちらでもこっそり作業をしても大丈夫だろう。
 彼らは書類に紛れて持ち込んでいた小型ノートパソコンのケーブルを繋ぎ始めた。
 おそらく素人集団の隣室の住人たちは、ケーブルが多少増えたところで気が付かない。
 春彦は自社の同期たち二人と目を交わす。


「石川さんからなんですけど、なんかマシン室ノーマーク状態なんで、もうこっちもこっそりやっちまってるぞ、だそうです」
「なんだそりゃ。大誤算も良いところだな・・・。いや、助かるけど」
 遠隔操作だけでなく、直に進入して貰えば、解析も早い。
 子飼いは眼鏡男一人で、残りは没交渉と言うことか。
 しかも予想以上に吉川の注意を引きつけているようで、目の前のお宝の山は掘り返し放題になっているらしい。
「なら、そんなに時間かからねえな・・・」
 ここまで間抜けな男は、これまた予想外である。
「たすかりますねえ。おがわ亭万歳ってとこですかね・・・」
 二人の両手にはカツサンドの詰められた紙袋がずっしりとその存在感を主張していた。


「ただ今戻りました」
 二人が入室すると、その場にいた全員の視線が集中する。
 何食わぬ顔で、部屋の片隅にある応接セットのテーブルに持ち帰った紙袋を置いた。
「少し多めに用意しました。お気に召したなら、どうぞ持ち帰り下さい」
「ふん、気が利くな」
「ありがとうございます。で、うちの者どもも食べさせて良いですか?」
「まあいいだろう。こっちに呼ぶといい」
 柚木はマシン室へ戻り、身内を呼びに行く。
 実際彼らは半ば軟禁された状態で、今までまともに飲み食いしておらず、げっそりした顔をして出てきた。
「・・・タバコ臭いな、アンタ」
 鼻を得意げにひくつかせる吉川に片桐は苦笑した。
「すみません、上海から移動してずっと吸えなくて、もう我慢できなくて、少し・・・」
「なんだ、チェーンスモーカーなのか?」
 会話を聞いていた中村が吉川の背後で目を丸くする。
 彼は片桐が煙草を吸っている姿をあまり見たことがないからだ。
「ええ、まあ」
「自己管理できないヤツは出世できないぞ」
 その言葉に吹き出しかけた柚木が慌てて背を向けた。
「ははは。それは困りますねえ」
 いつまでこいつの太鼓持ちを演じねばならないのかとうんざりしながらも、一つ箱を開けて勧めた。
「おい、さっさと茶くらい出せよ、気が利かないな」
 上機嫌の吉川は、事務机に座ったままこちらを伺っていた女子社員に顎をしゃくった。
 すると、彼女は怯えたようにびくっと形を揺らし、慌てて立ち上がり、部屋を出る。
「あ、そうだ。現地で烏龍茶の茶葉を貰ってきたんですけど、結構高いヤツだそうです。飲んでみます?」
 銀座様は鷹揚に肯いた。
「あ、俺が彼女に渡してきます」
 春彦は発作的に声を上げた。
「ん。助かる。そこの俺の鞄の手前のポケットの右奥に入っているから、宜しく頼むよ」
「わかりました。・・・これですね?」
 言われたとおりに入り口付近に放置されていた片桐の鞄の中に手を入れて、圧縮されたアルミのパッケージを見つけたらそれをかざして見せた。
「そう、それ」
「じゃあ、渡してきます」
 すぐに立ち上がり、給湯室へと向かった。
 ついつい、小走りになってしまうのを一生懸命押さえた。
 
 久しぶりに、自然に話が出来た。
 こんな状況にもかかわらず、春彦の胸の中がじんわりと熱くなった。





 『ずっと、ずっと甘い口唇-39-』へつづく。







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