『ずっと、ずっと甘い口唇』-34-(『楽園』シリーズ) 

2012, 07. 31 (Tue) 19:09

 今日は短いです。
 なぜにゃらば。
 今夜に限って夫の帰りが早いからです。
 もう、タイムリミットなので、説明ばかりで内容的におもしろみがないのですが、ここで切ります。
 ごめんなさい・・・。

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 拍手ボタンの折に感想を寄せて下さる方も、ありがとうございます。
 時々、くじけそうになる私の元気の源です。

 そういえば、ブログをやっていた友人は拍手のところに小話をお礼として設置していたので、それを作ろうかなと考え中です。
 何の話にしようかな。
 この楽園のサイドストーリーでも良いし、タイバニとか京×浮でもいいかも・・・。
 何かご希望がありましたら、拍手コメントでこっそり教えて下さい。


 ではでは、続きはまた明後日に。

 ようやく、動きます。




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  現在は、『睦み月』で『シゲルとミケ』シリーズです。
  飲んだくれ猟師と化け猫の話。
  楽しんで頂けたら幸いです。

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 『ずっと、ずっと甘い口唇-34-』


菜の花が河原を彩っていた。
 季節が巡るのは早い。
 ほんの少しの間日本を離れていただけなのに、ずいぶんと春めいてきたような気がする。 とはいえ、上海と東京は気候が似通っているため、単に感傷的になっているだけかもしれない。
 車窓を流れる風景を眺めながら片桐は息をつく。

 怒濤の二週間だった。

 まず、料亭を出た後に羽田空港に駆けこんで福岡へ飛び、終電ぎりぎりの時間になんとか実家最寄りの駅にたどり着き、翌朝に事の次第を家族に説明して諸々の了解を得て昼前に東京へ向けて出発、今度は松濤の祖父母へ同じように説明、そして今回の不手際の詫びを入れたが、そのまま翌日まで捕まってしまった。
 その際にしばらく日本を離れるよう言われ、あまりにも大げさだと言葉を尽くして説得したが叶わず、祖父母は頑として譲らなかった。更に課長からの電話で、会社の方では既に上海行きが決定したと知らされ、諦めた。
 そして寮の部屋へ勝手に入り込んだ篠原がパスポート類を回収してきていたため、仕方なくそのまま荷物の用意をし、事務手続きのために出社すると、一回り小さくなったように見える課長が所在なげに課長席に座り込み、その隣には同じく部長からじきじきのお達しで休日出勤を強いられた本間がかんかんに怒って仁王立ちしていた。
 なぜか平身低頭のありさまの課長は、同席している本間の顔色を伺いつつ出張の業務内容の説明と打ち合わせを行い、片桐は彼らの差し出す必要書類に言われるままに記入し、判を押しまくった。
 短時間の突貫手続きの末、挨拶もそこそこに成田空港を目指してオフィスを駆け出す片桐の背後に本間の一言が飛んだ。
「紹興酒、瓶で持ってきてよね!!」
 ・・・さすがはクイーンオブ酒豪である。

 運が良かったのは、上海事業部が風通しの良く、やる気のあるスタッフが多かったことだ。
 この出張をただの休暇で終わらせるつもりのない片桐は、二日かけて現状把握をし、その後事業計画の見直しをスタッフと話し合い、もともと依頼されていた仕事はすぐに終えた後、新しい仕事の提案と交渉などを広げていった。
 もはやこれは片桐自身が普段請け負う業務内容をはるかに越えていたが、もともとイレギュラーな形で作られた上海出張だ。
 ならば、何をしてもとやかく言われまいと、思う存分に動き回った。
 中国語は普通語でも母音の発音が難しくかなり怪しい部分があるが、英語もまじえてなんとか乗り切り、夜は毎晩スタッフや彼らが紹介する関係者と飲みに行き親交を深めた。
 慣れない食事もホテル暮らしも、風習や考えの違う上海の人々とのやりとりも、辛くないと言えば嘘になる。
 しかし、長田家の威を借り続けることだけは矜持が許さなかった。
 祖父の名前がTEN上層部にまで明るみに出たであろう今、社内での自分の立場は微妙である。祖父の機嫌を損ねないように当たり障りのない部署に飛ばされてもおかしくない。おそらくは、それが長田家の狙いだろう。彼らはことあるごとに傘下の会社へ入り直すよう諭してきた。
 しかし、片桐自身は現在の仕事が好きだった。
 入社して以来、たまたま配属されたこの部署で、小さな作業の積み重ねが色々な人間の手を借りて大きな物へ形を変えていくのを何度も何度も見てきた。長時間拘束されるし、人とのつながりは時として楽しいことばかりではないが、何事も経験だろう。そう思わせてくれたこの仕事を出来れば長く続けていきたいと思うようになった。
 続けたいと願うなら、周りに必要だと思わせるしかない。
 佐古や立石たちと一緒に行動するうちに、色々なノウハウを学んだ。それを全部出しきり実力を試すチャンスだった。
 まずは、TENが手放せない男になる事。
 たった十日あまりで出来ることはたかがしれている。
 しかし、何もしなければそこまでだ。
 
 きちんと、やるべきことをやり終えたら、春彦の前に立ちたいと思った。
 エントランスホールで見せた情けない姿を塗り替えたい。
 この数ヶ月の間ですっかり失ってしまった信頼を取り戻して、それから言いたいことがある。

 ただ、ふとしたことで思い出してしまう。
 春彦の黒い瞳、白くて薄い肌。
 唇が柔らかかったこと、吐息が例えようもなく甘かったこと。
 そして、一つになった時の目も眩むような瞬間を。

 思い出す度に、拳を握り、力を入れた。
 必ず。
 必ず、春彦を抱きしめる。
 そして、あの、甘い唇に触れたい。

 そのために、今、俺はここにいる。






 『ずっと、ずっと甘い口唇-35-』へつづく。







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