『ずっと、ずっと甘い口唇』-32-(『楽園』シリーズ) 

2012, 07. 27 (Fri) 19:05

 今日はすべての家事を放り出して、これと格闘しました・・・。
 この話、ただの越後屋お代官様なのに・・・。

 なんとかまとまりましたので更新します。
 前回の話は、やはり後半部分を今日の午後にかなり追加しました。
 たいした部分ではありませんが、相変わらず誤字脱字が多いのと、私がすっかり忘れていた言葉などがありまして。
 本当に、何度見返しても誤字脱字と誤使用語が多いわ・・・。
 読んでいて、色々引っかかる部分があるかと思います。
 最後にたどり着きましたら改めて見直すつもりですので、今は我慢しておつきあい頂けると助かります。

 次回からようやく春彦のターンです。
 お待たせし続けてすみません。

 小説の更新自体は来週になると思います。

 基本的に、夫が休みの週末は家のレイアウトの関係でブログはいじれません。
 彼が眠りこけているか、出かけているか、風呂に入っているかの隙を突いてネットに繋ぐしかないので・・・。

 ではでは、次の更新は来週明けと言うことで。
 これから先もまだ長いですが、どうぞおつきあい下さい。

 それから、このブログにアクセスして下さる方、拍手やランキングバナーをクリックして応援して下さる方に感謝しています。
 本当に有難うございます。
 最近毎日机に向かうのは、誰かが読んでくれるという事が私にとって何よりも嬉しいからです。
 次の山を登るために英気を養い、トライしたいと思います。

 では、良い週末をお過ごし下さい。




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  現在は、『睦み月』で『シゲルとミケ』シリーズです。
  飲んだくれ猟師と化け猫の話。
  楽しんで頂けたら幸いです。

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 『ずっと、ずっと甘い口唇-32-』



「どうなることかと、ひやひやしましたよ」

 瀬川親子がしおしおと大人しく退却した後、がらんとした座敷の中で足を崩し、日本酒に口をつけていると、すっと背後のふすまが開く。
 振り向かずとも解る。
 近くの個室に待機していた篠原だった。
「貸し切りにして良かったですね。きっとあれ、建屋中聞こえていますよ」
「・・・」
 黙って手酌をする。
 その様子に構うことなくすっと奥へ入り、床の間の近くに備え付けてある内線電話の近くに足を進めた。
「このあと、料理どうします?」
 事情が事情だけに、瀬川親子の膳がそのままだ。
「・・・喰う気になるかよ・・・」
「これだけのお膳立てしてあげた私に、ねぎらいは?」
「わかった。好きにしろ」
「はい」
 すました顔で受話器を取り上げ、女将へ連絡する。
 そして、片桐を上座へ追い立てた。
 すぐに女将と仲居たちが飛んできて、座敷の片付けをし、料理と酒を出し直す。
 もとの落ち着きを取り戻したところで、篠原は実にうまそうに日本酒を飲んだ。
「お前、勤務中じゃないのか?」
 悔し紛れに嫌みを言うと、どこ吹く風で切り替えされる。
「ここ最近は啓介お坊ちゃまのお守り専属ですから。まったく、大旦那様に仕えているより疲れますよ。あんな乳だけの女にふらふらと簡単に吸い寄せられて、ほんと馬鹿ですね、あなた」
「・・・料理より、そっちか」
 すっかり酒の肴である。
「どいつもこいつも・・・」
「今日はこれで勘弁してあげますから、しばらくは大人しくして下さいよ。仕事が増え過ぎて、こっちは大変なんですから」
「・・・わかってる」
「だいたい、最後の最後にアレ、なんですか。結局、持ち逃げですか、ハリー・ウィストン」
 そこまで把握していたのか。
 この様子ではいつセックスを何回していたかまで、この男に知られていてもおかしくない気がしてきた。
「・・・あんなもの、返して貰っても仕方ないだろう」
「まあ、縁起物をさすがに次の女に流用できませんけどね。でも、ネットオークションにでも出せば、多少回収できたんじゃないですか?お金。というか、きっとやりますね、彼女」
 結婚を決めてすぐに店に連れて行かれて注文し、軽井沢から帰ってきて受け取りと支払いをした婚約指輪。
 それこそ代官山事件の二日前、仲人を決めた日に手渡していた。
 彼女が、はやく指にはめたいと言ったので。
「そもそも、その安月給でハリーだなんて、ほんとに身の程知らずですね」
「俺は宝石に疎いから、そんなもんだと思ってたんだよ・・・」
 ある日突然、心の用意もないまま瀬川母娘に拉致されて、「一生に一度のことだから」と両脇からやんやと責められ、店員に半ば同情のまなざしを送られながらサインした。
「給料三ヶ月分って、今時、いつの時代の話ですか。同じアメリカメーカーなら可愛くティファニーくらいにしておけばいいものを」
「店員の前で石の質が違うと力説されて、反論できると思うか?」
「私なら、その時点で破談にしますよ」
 0.5カラットのシンプルなデザインでも、他のジュエリーメーカーよりはるかに高い。
 残業続きで使い道のない金がある程度貯まっていたから何とかなったようなものだ。
 ある意味、洗脳されて気が大きくなっていたとも言える。
「はっきり言って、結婚詐欺で訴えて良いくらいだと思いますけど?」
「だから、もういいって・・・」
 げんなりと、刺身を口に運ぶ。
 せっかくの高級魚も台無しだ。
「高い勉強代、払いましたねえ」
「そこは反論しない」
 篠原のしみじみとしたため息に、片桐もため息で返す。
「で、更にここの料金全額持ちって、あなたも大概お人好しですね。聞いていて顎を外しましたよ」
「うるさい。勉強ついでだから構うな」
「じゃあ、おおよその見積もりを見ますか?」
 すっと、彼が紙片を出す。
 のぞき込んで、天を仰いだ。
「ほんとかよ・・・」
 料理も酒もしつらえも極上なだけはある。
「この一室の分ですけどね、それ。まるっと貸し切りは大旦那様もちでよいとのことです。なんなら、それも払ってやっても良いぞとも伝言されました」
「その代わり、見合いしろって事か」
「ご明察」
「・・・」
 正直、美咲に付き合っていたこの数ヶ月でそうとうの金が出て行っていて、今すぐにこれほどの金額を払うのは苦しい。
 かといって、縁談はどうにも無理である。
 男として言いたくないが、言わねばなるまい。
「・・・分割払いで、宜しく頼む」
 さすがの篠原も吹き出した。

「そういえば、大奥様からも伝言頂いていました」
 端を止めて、ふと思い出したように言う。
「なんだ」
 祖母が口を挟むのは珍しい。
「同僚の本間奈津美様なら、考えても良いって。仕込み甲斐がありそうだから、と」
「・・・詩織だな」
 昨年知り合って以来、物凄く懐いていた詩織は、ことあるごとに本間と付き合えと言ってきていた。
「まあ、確かに育て甲斐はあるだろうけどな・・・」
 片桐と詩織は、長田家を訪れる度に祖母に遊び感覚で教養や一般常識など、色々なことを仕込まれていた。おかげで、二人とも長田家の行事や政財界のパーティに連れ出されてもそつなくこなせている。
 祖母は人を育てるのに長けていて、親族にとどまらず仕える者にも気を配っていた。目の前の篠原もその成果の一つである。
「駄目ですか?」
「駄目だな。俺にはもったいない。恋愛感情抜きにしても、本間は自由が似合う女だと伝えてくれ。詩織も一生付き合いたいなら、その方が良いはずだ」
 身内になると、どうしても立場やしがらみでうまく付合えなくなる日が来ることもあるかもしれない。
 見た感じ、年の離れた姉妹のようで二人の関係はほほえましかった。
 せっかくの縁を自分のせいで崩す気にはなれない。
「なら、私が頂いても良いですか?」
「・・・は?何を?」
「本間様です」
 にやりとかなり人の悪い笑みを篠原浮かべる。
 それでも十分魅力的な顔であるのを、本人は知っての上のことだろう。
 半分、本気だなと思った。
「・・・やめとけ。お前はまず相手にされない」
「わかりませんよ?なかなか良い案だと思うのですが」
 篠原はこのまま行けば、まもなく長田の中核である。
 玉の輿であることには違いない。
「あいつは金と肩書きには興味ないぞ。それに巨乳好きは嫌いらしいから」
「誰がいつ巨乳好きといいました。私は巨乳も貧乳も差別せず、等しく愛しますよ?」
 涼しげな顔から出る猥談に、たまたま食事と留椀を運んでふすまを開けた仲居が少しばかり目を見張る。
「・・・この雑食主義者め。とにかくやめとけ。このままでは俺が本間に殴られる」
 失礼ですね、来る者拒まずと言って下さいと、当人はいたってすまし顔である。
「なら、秘書に引き抜くのは?あそこで緩く事務職をするにはもったいないですね、彼女」
「本当の目的はそれか」
「いえ、プライベートでおつきあいしたいのは本当です。どうしても駄目だというならば、そこをぐっとこらえて、長田のために優秀な女子を育てておくのも良いかと。あ、今日の受付の方も良いですね。あの子も欲しいです」
 あとは・・・と、片桐の知人の女性たちの名前を次々と挙げた。
「彼女たちでチームを作ったら最強ですね」
「お前、どれだけ俺の身辺嗅ぎ回ってるんだ・・・」
「誰と何回寝たかまではさすがに把握していませんから、ご安心を」
「・・・!!」
 恐ろしい男である。
「これだけ素敵な女性に囲まれて、結婚相手に選んだのがあの女だったのは、本当に腑に落ちませんけどね。一服盛られたのかとまず疑いましたから」
「・・・まあ、なんというか、俺も今になるとわからないんだけどな・・・」
 どうして結婚しようと思ったのか、最近ますます解らなくなっていた。どれほどの熱い想いだったかと己に問うても、全く何も思い出せない。
「とにかく、後日詫びに行くからとだけ長田に伝えてくれ」
「承知しました」
 椀の蓋をそっと取りながら篠原は肯いた。
 と、ふと、隣のふすまに目をやる。
「そういえば・・・」
「なんだ」
「隣、使っていきますか?」
 隣、とは言わずもがな先ほどの寝室である。
「せっかく用意してくださったのに、もったいないですね」
 ちらりと、色っぽい流し目を片桐にくれてきた。
 美形だけに、息が詰まるほどの色香と壮絶な視線である。
 これにまんまと引っかかって頂かれてしまった人間は、老若男女を問わないと噂に聞く。
「は?なにが『せっかく』だ。お前は主人も喰う気か?」
「くれるというなら、やぶかさではありませんよ?」
 舌なめずりせんばかりだ。
「・・・お前もたいがい悪食だな」
 年下の主人のうなり声に、篠原はにんまりと悪魔のような微笑みを浮かべた。
 






 『ずっと、ずっと甘い口唇-33-』へつづく。







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