『ずっと、ずっと甘い口唇』-26-(『楽園』シリーズ) 

2012, 07. 13 (Fri) 22:57

 今日も福岡地方はけっこうな豪雨でした。
 佐賀や熊本に比べればましですが、どうしても片付けならない用事があったので、雷と雨の降りしきるなか外出。
 でも、帰宅してニュースを見たら、こちらはあまっちょろいもんだったと反省。
 だけど、明日仕事なんだよな・・・。
 洪水警報出てるけど、職場にたどり着くのだろうか、私。

 帰宅したのが遅かったので、今日は少しだけ更新です。

 まあ、区切りが良いからいいかしら・・・。
 でも、いつもより短くてごめんなさい。

 ようやく片桐、中村登場。
 しかし、最初のプロットでは予定にない男性二人も登場です。

 楽しんで頂けると良いのですが・・・。

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 ではでは、続きをどうぞ。




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  現在は、『睦み月』で『シゲルとミケ』シリーズです。
  飲んだくれ猟師と化け猫の話。
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 『ずっと、ずっと甘い口唇-26-』



 近くに設置してある内線電話が鳴った。
 時計を見ると、まだ入室してから30分あまり。タイムオーバーではない。
 ちらりと向かいに座る男を見ると、「どうぞ」と大仰に手のひらで内線電話を指し示された。
 いちいち、勘に障る男だ。
 机に散らばる書類をそのままに、ため息をつきながら受話器を耳に当てた。
「はい、第七応接」
「受付の橋口です。接客中、大変申し訳ないのですが、片桐さんにお客様がお見えです。先に事務の本間さんに伺ったところ、急ぎの用と思われるとのことでしたので、お電話させて頂きました」
 橋口は本間同様、目端が利く。
 嫌な予感に眉をひそめ、先を促した。
「・・・その客の名前は?」
「瀬川吾郎さまです」
「・・・」
 視線をすぐさま戻すと、彼は肩をすくめた。
「了解。もう少ししたら終わるから、そのままラウンジで待たせておいてくれるかな」
「かしこまりました」
 静かに受話器を下ろす。
「瀬川美咲の父が来ましたか」
 ほらね、と首を傾ける秘書に苛立ちを感じながら、「ああ」と答える。
「・・・俺に言っとく事って、これだけか?まだあるなら、手短に頼む」
「いや、ないですね。計算通りですから」
 私の仕事には一分の狂いもありませんからねえと自画自賛の男を黙殺し、書類をまとめて封筒に詰めた。
「なら、行っていいか?」
「構いませんけど、きちんと心の準備をして挑んで下さいね。キューソネコカミですから、相手は」
 捨て鉢の人間は何をしでかすか解らない。
 さすがに、その点は予測不可能だ。
「・・・わかってる」
 それにしても、こんなはずではなったのに、という気持ちが先に立つ。
「頼みますから、ビジネスライクでお願いしますよ、啓介様」
 この人の欠点は良くも悪くも情が深いところだ。
 片桐も長田も捨てられない。
 そして、手ひどく裏切った者も。
「わかってる。でも、俺の責任だから、出てくるなよ?篠原」
「承知」
 スーツを羽織り、ネクタイを整え直して片桐は一歩踏み出す。
「じゃあ、行ってくる」
 もつれきった糸を、解きほぐすために。



 時間が、少しだけ遡る。
 名古屋の案件が思ったより早く鎮火したため、すぐさま新幹線に乗り込んだ。
 到着時刻は会社の終業時間に近かったが、事務手続きを考えてそのまま直帰せずに職場へ向かった。
 ちなみに彼らの事務所が入る建物は超高層大型ビルで、TEN本体と関連会社はもとより、他の大手企業の事業所も入っており、その複雑さから初めて訪問する人はたいてい入口をくぐった時点で戸惑う。
 今日も一人、自動ドアを入ってすぐのところで立ち尽くす中年の男性がいた。
 いつもなら守衛か受付係が気を利かせて声をかけるのだが、それぞれ別の客に応対していて、彼に気が付かない。
 気の毒に思い、声をかけた。
「あの・・・。もしもよろしければ案内しましょうか。どちらにご用ですか?」
「良いんですか?」
 案の定、途方に暮れた顔をした男が振り返る。
まず、目的によって方角や手続きが違うことを説明した。
「ええと・・・。て、TENの・・・。か、片桐・・・。片桐さんに会いたいんですが」
 貰っていたらしい名刺を差し出す手が、なぜかぷるぷると震えている。
 彼の異様な様に気を取られ、3階吹き抜けのエントランスに圧倒されたのだろうかと首をかしげたが、名刺をのぞき込んで中村は身を固くした。
「お会いしたいのは、片桐・・・啓介さんでしたか」
「ご存じで?」
「はい。私もTENの関係者なので」
「ほう・・・。そうですか」
 あからさまに安堵した顔に、とらえどころのない不安を感じながら先を促し歩いた。
「こちらです。まずは受付の方で入館手続きをして頂かないと中に入れません。あとは呼び出して貰いましょう」
「ありがとうございます。たすかりました」
 ぺこぺこと頭を下げられ、困惑しながらも受付嬢へ用件を伝え、引き継いだ。
「わかりました。設計2課の片桐さんですね。在館かを調べますので、まずはこちらにお名前の記入をお願いします」
 柔らかな声で訪問者の緊張を解きつつ、受付嬢は書類とペンを差し出した。
「は、はい・・・」
 背が低く、丸みを帯びたその男性は、男にして小さな手でちびちびと名前を書き始めた。
「瀬川、吾郎・・・っと」
 それをのぞき込んでいた受付嬢と、中村は息を呑んだ。






 『ずっと、ずっと甘い口唇-27-』へつづく。







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