『ずっと、ずっと甘い口唇』-24-(『楽園』シリーズ) 

2012, 07. 11 (Wed) 19:45

 今日の福岡は午後より土砂降り。
 色々家事をしていたらこの時間になりました・・・。

 さて。
 本間劇場は終わったつもりなのに、やはり本間が出張っています。
 何故なの?
 そして、ほんの数行予定していた場面なのに、まだ続きます。

 ちなみに、吉田課長のイメージは俳優の小日向さんです。
 本当は、どの登場人物も実在の人のイメージをまず設定してから動かしています。
 メインは、言わない方がいいかな~とは思いますが、端役ならいいかと。


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  現在は、『睦み月』で『シゲルとミケ』シリーズです。
  飲んだくれ猟師と化け猫の話。
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 『ずっと、ずっと甘い口唇-24-』



「なんか、不穏な空気を感じるわ・・・」
 パソコンを打つ手を止めて本間は眉を寄せる。
 
 片桐を酔い潰した日の週明けからここまでの2週間、関係者一同、色恋沙汰に目を向ける暇がないほど忙しかった。
 本間は社内業務のシステム改変で小刻みに起きる不具合と、経理や総務の締め処理業務の二本立てと戦い続けた。ちなみに宿はどうなったかというと、結局、佐古の強い勧めもあり、ウイークリーマンションをその日のうちに引き上げて立石の客間に間借りさせて貰っている。おかげで朝食と、時には夕食付きの豪勢な生活を楽しんでいた。彼女を追い回す人間は、元彼氏も加わり、なぜか三人になっているが、とりあえず住まいまでは押しかけてこない。
 片桐は、週明けからいきなり北海道の方のトラブル処理の応援に出され、そのままだ。業務連絡ついでに電話で話をした時にはそろそろ戻ると言っていたが、今現在所在は不明。
 中村も、先週末から別の課のトラブル処理の応援で名古屋へ行ってしまった。貸し出しは1週間と彼の事務担当の女性が言っていたので、そちらも、もしかしたら今日辺り顔を出すと思われる。
 ようするに、ある意味、平和に過ぎた2週間。
 しかし、そろそろ正念場を迎えても良いのではないか?
あまりにも先延ばししすぎた感がぬぐえない。

「それにしても・・・」
 本間は唇をとがらせて唸った。
「何かが、おかしい」
 この平穏な2週間の間に、自分の気づかぬ何かが裏で起きているのではないかと言う気がしてならないのだ。
「な、な、何がっ?」
 がたん、と椅子から転げ落ちんばかりに、近くの席にいた課長が悲鳴を上げた。
「お化けが出たわけでも、黒い妖精が走ったわけでもないから落ち着いて下さい」
 そういえばそもそも、この課長の言動が最近おかしい。
 じっと目をすがめて見つめると、吉田課長(45歳、既婚、2女の父)は目を見開いて固まったまま、だらだらと額から汗を吹き出した。
「・・・なんか、やらかしましたね、課長」
「な、ななな、なにもしていません、していませんとも!!」
 ぶんぶんと壊れたように首を振る課長に、やや冷たい視線を送った。
・・・目は口ほどにものを言うって、課長そのものだと、常々思う。
「また、ギャバクラ行ったんですか?」
「いいい、いやいや、今回は行っていない、ここしばらく行っていない!!」
 この、キャバクラ好きめ。
 「ここしばらく」はせいぜい一ヶ月くらいだな。
 舌打ちしながら、考えを巡らせ、ふと止まる。
「なら、接待フーゾク?」
「だから、行っていません、行きません、それは本当に行けません!!」
 半泣きの課長は取りすがらんばかりだ。
 行けない・・・か。
 まったく、どいつもこいつも・・・。
 仕事に関しては頭の回転も速く、人を動かすことも出来るので昇進は早いほうだったが、課長職に就いたここ数年で味を覚えてしまった花街の世界にどっぷりおぼれて、離婚の危機を何度も経験している。
 ・・・本当に、この男のどこに将来性を見いだして仲人なんかに・・・。
そう、悪態をつこうとしてふと気が付いた。
「仲人・・・?」
その一言に心臓を打ち抜かれた課長はへなへなと床に崩れ落ちた。
本間はすぐに立ち上がって課長席に回り込み、彼の前にしゃがんでのぞきこむ。
「やらかしたのはそっちですか、課長?」
もはや、彼は冷や汗のかきすぎで真っ白な顔をしていた。
「もしかして、瀬川の誰かに会いました?」
「・・・!!!」
 声も出ないようで、コクコクと首を縦に振る。
 目尻にはうっすら涙が浮かんでいた。
「ど、どうしよう・・・」
 なんとか、そう言っているのは判別できた。
「どうもこうも、まず順を追って話を聞かないと・・・」
 そう答えている最中、本間の席の内線電話が鳴った。
「ひいいっ!!」
 さらにのけぞる課長に、本間はぽんぽんと肩を叩いた。
「多分、たいしたことないです。だから、落ち着いて下さい」
 緩やかな笑顔さえ浮かべて見せる。
 だから、おしっこ漏らさないで下さいね。始末が大変だから。
 と、心の中で毒づいたのはおくびにも出さず。
 すっくと立ち上がり、課長席で鳴り続けるそれを受けた。
「はい。設計2課本間です」
 その、まっすぐと伸びた背筋を下から眺めていた課長はぼんやり見とれた。
「か、かっこいい・・・」

 内線電話の相手は親しくしている受付嬢だった。
「今ね、そっちの片桐さんが1階の第七応接に30分くらい前から入ってるんだけど」
「ん?片桐さん帰ってきてたんだ?こっちに連絡なかったけど?」
 わざわざ電話してくると言うことは、トラブルか。
「エントランスゲートを通る時、もうお客様とご一緒だったの。1時間の予定で応接をリザーブしているんだけど、今、さらにお客さんがいらしていて・・・」
「同伴なんだ・・・。最初の方のお客の年格好と服装は?」
「30代。濃紺で目立たないけど、質の良いスーツ着て、黒ブチ眼鏡のクールな超絶男前」
 彼女は機転が利いて実に頼もしい。
 こちらの必要な情報を素早く提供してくれる。
「あー、はいはい。了解。で、新しい方は?」
「その方は・・・」
 そして告げられた名前に目を見開く。
 すっと足下に座り込んだ課長をに目を向けると、反射でさっと首を背けられた。
「・・・了解。他に注意事項は?」
 彼女の簡潔な報告に数回相づちを打った後、
「ラウンジで待たせてること、内線で伝えてくれる?多分大丈夫だから」
 と頼み、礼を言って受話器を置いた。
 そして、もう一度しゃがみ込む。
「時間がないので、私の言うことに速やかに答えて下さい、課長。大丈夫。きっと大丈夫ですから」
 でも、目が笑っていないじゃないか。
 おびえながらも、彼女に大人しく従うほか道はなかった。





 『ずっと、ずっと甘い口唇-25-』へつづく。







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