『ずっと、ずっと甘い口唇』-22-(『楽園』シリーズ) 

2012, 07. 09 (Mon) 18:33

ええと、7/9の19時50分頃、少し訂正しています。

 今更ながら・・・。
 自分の目測の甘さに驚愕しております・・・。

 21話掲載時の予告では「あと三分の一」などとほざいていましたが(7/9午後に改変したので、現在その記述はありません)、それどころか3倍くらいの長さになりました。

 しかも、終わっていない・・・。
 何故なのか、私も解らない・・・。

 とりあえず、本当に、本当に、本間劇場は次回でとりあえず閉幕、そして場面転換します。

 終わるぞ終わるぞ詐欺で申し訳ありません。
 これが、アマチュアのいかん所ですね。

 あ、7/9の14時頃に21話の後半部分を少しいじりました。
 会話が増えています。
 ちょっと足しました。

 それから、このつたない話を読んで下さる皆様と、拍手で励まして下さる方々に感謝を。

 明日も頑張ります。





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  現在は、『睦み月』で『シゲルとミケ』シリーズです。
  飲んだくれ猟師と化け猫の話。
  楽しんで頂けたら幸いです。

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 『ずっと、ずっと甘い口唇-22-』


「だって、俺は・・・」
 言いよどむ岡本の前に本間が手をかざす。
「わかってる。半分親切、よね?」
「なんで半分なの?」
 佐古は首をかしげた。
「私が口を出すのも何だけど。ここらではっきりさせておいた方が良いと思うのよね。今後のためにも」
「なにが?」
「あなたたち、生さんのこと、すごーく嫌いでしょう」
 深く座り直して片足を組み、椅子の肘掛けの両肘を乗せ、挑むように本間は切り出した。
「当人たちが口をつぐんでるから遠慮していたけど、片桐さんまで巻き込まれてるし。いい加減、事実関係をきちんと整理した方が良いと思うから言わせてもらう」

 ここにきて、二人は気が付いた。
 本間は、自分たちに対していらだちを感じ続けていたのだと。

「まずはね。二人が嫌っている理由は、生さんが粉かけてきたからでしょ?」
「そんなことまで話してるのか・・・」
 佐古が吐き捨てると、本間は片方の眉を神経質に上げた。
「言うわけないでしょ。二人が躍起になって引きはがそうとする理由がそれ以外に思い当たらないからよ」
「じゃあなに?あの女がいつも手当たり次第喰ってるから?」
「馬鹿にしてんじゃないわよ!!」
 通りを歩く人たちが振り返るほどの大声を上げた。
「ほ、本間、さん。ここは公共の場だから・・・」
「公共の場じゃなかったら、佐古さんといえども殴っていたわよ。あのね。あんたたちのやっていることは、もともと生さんの思い通りなのよ。うまーく踊らされているだけなの!!」
お釈迦様の手のひらの上で走り回る孫悟空みたいなものなんだからね、と本間は可愛い舌を出す。
「踊らされてる?何がしたいわけ、あの女?」
「そりゃ、一番親しい友人たちに諭されて、言われるがまま、お友達推薦の良い女の子と素直に結婚して、自然と離れていく事よ」

 それは今回の岡本のように。
 友人たちが認めるような、誰か、普通の可愛い女の子と、当たり前の家庭を築いて欲しい。
 それが、長谷川生の意志。

「瀬川本人が食いついたのは、さすがの生さんも大誤算。片桐さんの話を聞いた時に困り果てていたわよ。でも今更、嫌われるためにちょっと誘ってみましたなんて言えるわけないでしょ」
「でも、それはお前の推論だろ?」
 友達の欲目じゃないかと岡本はうがった見方をする。
「まだ言うか、この口で・・・」
 遠慮を忘れて、岡本の頬を引っ張った。
「あいたたた・・・。いたいよ、本間さん」
「私達は知ってるけど、あんたたちの知らない事情があるの。知りもしないで勝手なこと言わないで」
「だから、それが何?」
「・・・関西の政財界では結構有名なんだけど、神戸にいる生さんの母親および母方祖母、そして福岡にいるカイくんの実父の母親、この三人はモンスターなの」
「モンスター?」
「自分の幸せを守るためならば、どんな手でも使うし、罪悪感なんてかけらもない人たちよ。自分たちは常に正義で、生さんは何をしても悪でしかないの」
「話がよくわからない・・・」
 妻である有希子からでさえ岡本は聞いたことがなかった。
「そうよね。神戸の二人は実の母親と祖母ですもの。生さんが高校卒業間際に妊娠したことで輝かしい自分たちの人生に汚点が着いて、家門が傾くと恐れて、ありえない嫌がらせを繰り出して、それは未だに続いているの」
「嫌がらせ?」
「まずは、報告に行った生さんの腹を蹴ったわ」
 さすがに二人は息を呑む。
「それは同行した人たちが止めに入ったからなんとか無事だった。次に、進学したT大の退学届けを勝手に出したり、保育園に預けてたカイ君を攫って適当な病院の前に捨ててこようとしたり、仕事先にあることないことクレームの電話したり。児童相談所への虐待通報なんて、この間ので何度目かしら。それはつい最近よ」
 面汚し、消えてしまえ、死んでしまえと罵り続けた。
「自分が幸せな時は生さんを遠ざけて、うまくいかなくなるとすべて生さんのせい。彼女がきちんと社会的に認められた生活をするのが気に入らなくてなにかと邪魔をするの。自活できなくなったらそれこそ面汚しどころじゃないでしょうに」
 あまりにも現実離れしすぎていて、理解が追いつかない。
 佐古は目眩を感じた。
「行政が介入しても、弁護士雇っても、いたちごっこの状態。解決しないまま、もうかれこれ12年よ。そんな生活に、誰も巻き込みたくないと思うのが普通でしょ?」

 男は、私にとってただの身体だ。
 それの何が悪い?
 
 そう首をかしげて、既婚者だった自分の上に乗り上げた女を思い出す。
 きっぱり拒絶した時にあっさり起き上がり、うすら笑いを浮かべて煙草に火をつけた。

 そう。
 残念だな。

 ゆっくり深呼吸するように吸ったそれは・・・。

「マルボロ・・・」

「そう。マルポロね。生さんは佐古さんがこちらに戻ってくるまでよく吸っていたわ。かなりのヘビースモーカーだった」
 それは過去の話。
「今は、全く吸っていないの。逆に、もっと軽い銘柄を吸ってた立石さんが最近よく吸うのは何故かしらね?」
 徹が煙草を吸う時、いつもどこか上の空だ。
「それに、立石さんの3LDK、もともとは生さんが住んでたのよ、三年前まで」
「おい、それは・・・」
 岡本が止めに入るが、本間は続けた。
「オーナーの叔母様が生さんの教師の仕事での雇い主でね。あそこが社宅がわりに提供されたの。佐古さんの部屋がカイ君の子供部屋だった」
 三年前までは。
 それは、佐古が居を移す直前と言うことか。
「本当は、そこを池山さんが借り上げて、江口君と住むはずだったの。それを横取りしたのが立石さん。それまで住んでた2LDKでも、佐古さんと十分暮らせるのに、よ」
 彼にしては珍しいわがままだった。
 しかし、手続きも引越しも、誰も口を挟ませないスピードで片付けてしまった。
「正気の沙汰じゃないと思うわよ、ここまで来ると。はっきりいってストーカーよね。だから私達の誰も、立石さんを男として見なくなったんだけど」
 肉食系のはしくれとしては、それなりにそそるものがあったけどあれじゃあね・・・。と、肩をすくめた。
「ところで立石さんって、見た目に反して実はへっぽこよね。詰めが甘いし。育ちが良すぎるというか」
「へっぽこ・・・。それはちょっと異論があるけど。とりあえずあの性格は育ちと言うより、生来からのものだよ」
「それでも、ここ最近だいぶ中身が追いついてきたのは何故だと思う?」
「・・・それは長谷川生という結論?」
 嫌々ながら佐古は答える。
「ええ。生さんのそばにいたいなら、何があっても大丈夫な人にならないといけないの。目端が利いて、心が頑丈な人にね。ようはね。生さんなしでは、今の格好いい立石さんは存在しなかったと思うの」
「言うねえ・・・」


「そしてそれは、有希子さんも同じだったんだからね」
 いきなり姿勢を正し、岡本を正面に見据えて、本間は話を変える。
「え?有希子?」
「あのねえ、これも、私が言いたいわけじゃないのよ。岡本さんが私に言わせているんだからね」
 前置きをして続けた。
「今日は、お茶のお稽古の日じゃないの。大先生が本部で研修会だから」
「え・・・?」
 岡本はぽかんと口を開けた。
「だって、今朝、長谷川が迎えに・・・」
 鎌倉にある、長谷川の父方の祖母宅へ向かったものと思い込んでいた。
「ええそうね。生さんが車で迎えに来たでしょ。鎌倉まで二人で行く、というのは嘘じゃない。ただ、場所が違うの」
 くいっと、すっかり冷めたコーヒーを一口飲んで、本間は息をつく。
「カイ君を産んだ時にお世話になった産院へ行ってるはずよ」
「さんいん・・・?」
「物凄く信頼できる助産師さんがいるらしいの」
「じょさんし?」
 想像しなかった単語に戸惑う。
「今更、生さん?とか、惚けたこと言わないでね、パパ」
「・・・は?」

「だから、パパ」

「え?」
「全く気が付いていなかったのね。もう胎芽じゃなくて胎児になってるから、いい加減言えば良いのにって言っていたんだけど・・・」
「たいが?たいじ? 」
 更に混乱している岡本の肩に、ぽんと、佐古が手を置く。
「おめでとう。良かったな。胎児ということは、こちらで言う三ヶ月以上?」
「え?・・・えええっ?」
飛び上がらんばかりの岡本の腕を掴んで本間は話を続けた。
「気持ちはわかるけど、落ち着いて聞いて。岡本さんに黙っていたのは理由があるの。結婚してすぐの頃に有希子さん、超早期流産しているでしょう」
「ああ・・・。まあ・・・」
 市販の妊娠検査薬にうっすら陽性反応が出たものの、胎嚢が出ないままで、医師からは着床しなかったのだろうと言われた。
「あのとき、岡本さんがとても喜んでくれたのに駄目だったから、有希子さんそれを物凄く気にしていたの。またぬか喜びさせたくないって」
「だから今まで・・・」
「そう。本当は安定するまで言いたくないって言っていたけど、いくらなんでもそれはあんまりでしょう?」
「・・・・」
「ねえ、解ってる?有希子さんの大事な人が誰か、本当に解ってるの?」
「それは・・・」
 うろうろと目をさまよわせ、両手を開いたり閉じたりする様にじれて、本間はのぞき込む。

「岡本さん、ゲレンデであんまり立石さんが格好いいから不安になって、瀬川に余計なこと言ったんでしょう」
「う・・・」
 その通りである。
 なんとか結婚して貰ったものの、また、目の前を立石が通ったら、入社以来彼を好きだった有希子が正気になってしまうのではないかと、いつも不安だった。
 同じ課内結婚だったため、有希子は異動で別の部署の事務職になった。
 それでも同じフロアーで、いつでも立石を見ることは出来る。
 自分の気持ちに一点の曇りもない。
 しかし、いつまでもいつまでも不安がつきまとう。
「有希子さんが立石さんのことを好きだったのは本当だけど、あそこまで入れあげているのを見ると、さすがに百年の恋も冷めるわよ。それにね・・・」
 腕を掴んで揺さぶった。
「この間、エコー写真を私に見せていったのよ。かわいいでしょって。きっときっと、竜也さんにそっくりな、目のくりくりした元気の良い男の子に違いないって」

 かわいい、きっとかわいい私の赤ちゃん。

 それは、魔法の言葉だ。
 彼女はいつも、自分の魔法をかけてくれる。

 もう一度揺さぶって本間は言った。
「しっかりしろ、岡本竜也!」

「・・・!」

 岡本は立ち上がる。
「どこ・・・?」
「ん?」
「どこの産院!!」
「ああ、幸田産院。大先生の家から歩いて15分くらいの所・・・」
 皆まで聞かずに椅子を引いた。
「ありがとう、行ってくる」
 腕時計で時間を確認しつつ、ポケットの財布を掴み出して紙幣を数枚テーブルに置く。
「うん」
 本間はにこりと笑った。
「悪いけど、後はよろしく」
「はいはい。産院にいなかったら、生さんと大先生の家でいったん休憩していると思うから慌てないでね」
 軽く手を上げたあと、岡本は駅に向かって走り出した。
 その背中は、どこか頼もしく見えた。


「あーあ、言っちゃったし、行っちゃったあ」
 背もたれにがくりと身体を落として本間は天を仰ぐ。
「今日の私は暴露しまくりだわ・・・」
 本当は言いたくなかったのに。
 ため息をついても今更遅い。
「ご苦労様。ちょっと何か頼もうか」
「うん・・・」
 上目遣いに佐古を見ると、ふわりと優しく笑われた。
「まだ、話は終わってないんだよね?」
「うん。実はそうなの・・・」

 そう。
 岡本は前菜で、これからメインだったのだ。

「・・・佐古さんって、千里眼?」
「ばあか」
 片頬をゆがめて苦笑し、小さな頭をくしゃりと撫でた。









 『ずっと、ずっと甘い口唇-23-』へつづく。







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