『ずっと、ずっと甘い口唇』-21-(『楽園』シリーズ) 

2012, 07. 06 (Fri) 20:24

 7/9の午後に、少し修正をかけました。

 多分、私だけのこだわりなので、目を通すのが二度目の方でも「どこをいじったの?」という程度かもしれません。
 主に後半部分の会話を増やしました。

 そして、どう考えてもあと1話分くらいは会話が続きそうなので、残りは22話の方で。

 ではでは、よろしくお願いします。

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 『ずっと、ずっと甘い口唇-21-』



「宿泊施設に使ったコテージ、あれは、生さんのツテだったわよね。ここ数年何度も利用したことあるし、本人が本業の教師と副業のミラノコレクションの準備でられないのはスキーシーズンならいつものことだから、誰も気にしないで勝手知ったる感じだったけど」
 ただし瀬川美咲だけ、軽井沢のコテージに参加したのは初めてだった。
「更に白黒王子はスキー場で華麗に滑りまくってくれちゃって、しかも海外スキー経験者なんて小耳に挟んで、そりゃあ目も眩むわよね」
 カナダにスイスに・・・って、少女漫画?と、本間が指を折る。
「ああ、そういえば、良質の雪を知っているヤツの滑りは違うよなと話した覚えが・・・」
「実際、海外の山スキーでならした二人の滑りは、私から見てもずば抜けて格好良かったわよ・・・」
 さすがにちょっとくらりときたよ、私でも、と頬杖をついた。
「でもそれは、うちの養父が徹を気に入って呼んでいたからであって・・・」
 佐古の養父はアメリカで成功したが子供がいなかったため、親戚筋の真人を養子にした。
 そして真人が寂しい思いをしないようにと、生みの親を始め兄弟や親戚をよく休みの度に招待しており、海外スキー旅行はその一環だった。
「そう。それはみんな知っていたから、気にも止めていなかったし、話題にしなかったのよ。瀬川以外ね」
 なんでも事情を知っているものという、周囲の思い込みと、そのうち仲間内の付合いに馴染んできてから順を追って話そうという片桐の配慮がこの時大きく裏目に出た。
「で、とどめが、マンション名」
「はあ?」
「ああ・・・。『プレシャス・TL』?」
「うん、本当は『プレシャス・トオル』だったって話、うちらがよく使うネタよね。だから、それを飲みの時に酔っ払った誰かがまた口にしてたかも」
「あああ・・・。そういうことかよ?でもそんな・・・」
 そんな馬鹿な話が。
 誰もがそう思うだろう。
 あのマンションを建てた時、名前を考えあぐねたオーナーの森本が半ばやけくそ、半ば冗談で登録したのが、この名前だった。
「あれって、麻雀やって『プレシャス』の後ろに負けたヤツの名前をつける罰ゲームだったじゃない。それも、都市伝説でうまーく曲がっちゃってみたいなのよね」
 結果、立石が自前のマンションに住んでいるという誤解が一部の女子の間で生じた。
「そもそも、自分のことを『プレシャス』っていう男はどうなのよ・・・」
 岡本は当惑した。
「金の前には、そんなこと些細な話なんじゃない?私だったら嫌だけどね。自分をプレシャス呼ばわりする男」
「いや、そんな名前がついても平然と住んでるトオルの心臓もどうかと思うよ、俺は」
「さすがに恥ずかしかったんじゃない。だから、折衷案で『TL?』」
「でも、麻雀で負けたのは記録に残るんだよな・・・」
 マンション名として登記簿に煌々と。
 実を言うとあの麻雀大会には、岡本も参加している。
 単に麻雀慣れしていない立石がカモられただけの話であるのだが、それが逆に立石に箔をつけてしまった。
「話を戻すけど、あのスキーの時に片桐さんがプレシャスの空き部屋がないか、瀬川を同伴して立石さんに聞いたでしょう。だから、勘違いしたの」
 安月給に違いはないが、好物件のマンションを所持していると。
「コテージでは裏方気質の立石さんが、皆を陰になり日向になりもてなしてたし。あれも実は所持してる?と算盤はじいたみたい」
 子供の頃から海外へバカンスに行き、マンションと別荘を所持した男。
「こうなると、白馬の王子どころじゃないわ。しかも立石さん、福岡出身というわりに方言でないし」
「それは、立石の家が福岡への転入者だからだろ」
 まったくの共通語ではないが、代々地元に住んでいる人たちに比べたらサラリーマン家庭の立石は家族の会話自体に福岡訛りが少ない。
 そうなると、父方の祖父母と幼少期を暮らした片桐とは言葉遣いの点で違いが明らかになる。
「でも、それがものすごくスマートに見えたんじゃない。なんせ貴公子だから」
 最初は小さな不安だった。
 それが次第に大きくなっていく。
「それに、ほんっとーに、二人並ぶと格好いいのよね。黒白王子は。佐古さんは完璧すぎて近寄りがたいけど、立石さんは上手い具合に抜けていて親しみやすいのよ。笑ったら浮かぶえくぼとか。その上あの身体」
「カラダ?」
 聞くのが怖いが、毒を喰らわばである。
「見事な逆三角形でしょう。大学までみっちり水泳部やったから。あの肩、あの胸板、あの引き締まった腰。会社でも立石さんが通るたび、女子社員たちがヨダレ垂らしながら後ろ姿に釘付けよ」
「ジョシシャイン、コワイ・・・」
 これから会社に行ったらどんな顔をして女子社員と接したら良いのだと、岡本は頭を抱えた。
「実はおおむね肉食系ですからね。うちの女子」
「そうなんだ・・・。いや、なんとなくそうかなと思っていたけど」
 性に対するハングリーさでは欧米の女性と負けず劣らずだなと、常々感じる視線から佐古は推測していたので、こちらは至って冷静である。
「まあ、片桐さんも180センチにちょっと手が届かない程度だし、そこそこ運動していたからそんなに見劣りするわけじゃないんだけどね。顔も十分それなりだし。ただ、ツートップを前にしたら、誰でもたいてい霞むわね」

 そしてだんだんと比べ始める。
 付き合いが深まるにつれ、だんだんと砕けてきた片桐の言動と、いつまでも洗練された立石の物腰と。
 基本的に質素な片桐家と、きらびやかな立石の暮らしと。
 立石は、瀬川が夢見る結婚相手そのものだった。

「そこへきて、岡本さんが立石さんをフリーだというから」

 瀬川美咲は、完全に船酔いに近い状態になってしまった。
 良心も打算も愛情も、何もかもごちゃ混ぜになり、片桐に対するそれなりにあったはずの思いはどこにもなくなっていたのかもしれない。
 






 『ずっと、ずっと甘い口唇-22-』へつづく。







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