『ずっと、ずっと甘い口唇』-20-(『楽園』シリーズ) 

2012, 07. 04 (Wed) 20:09

 お、終わりませんでした・・・。
 時間がないので、途中で切り落としています。
 破綻はないと思うのですが、どうでしょうか・・・。

 説明的な台詞が続いて退屈でしょうけれど、今回と次回の二回、おつきあい下さい。

 多分、明日までちょこちょこ修正かけるかもしれませんが、とりあえず更新します。

 ではでは、よろしくお願いします。

 あ。
 私のへっぽこ小説を読んで下さる方へ。
 本当に有難うございます。
 励みになります。
 頑張って、ゴールを目指します。

 では、つづきをどうぞ。




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  現在は、『睦み月』で『シゲルとミケ』シリーズです。
  飲んだくれ猟師と化け猫の話。
  楽しんで頂けたら幸いです。

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 『ずっと、ずっと甘い口唇-20-』


 
 茫然自失の体の瀬川をタクシーに押し込み、運転手には出来るだけ遠くまで送るよう、金を渡して頼んだあと、すぐに家へ戻る。
 ポーチの吸い殻は綺麗に片付けられ、扉を開けると中では身なりを整えた本間が待っていた。
「ど?素直に帰った?」
「うん。色々飽和状態の所に一押ししたから、とりあえず」
 話を聞きつけて立石と岡本も廊下へ出てきた。
「それで片桐は、まだ寝てる?」
「ああ。でも、いい加減起きる頃だろう」
 なんだかんだで正午を回っている。
「そう、わかった。で、後で森本さんに連絡して、今日の監視カメラの記録を取り寄せるように頼んでおいて」
「監視カメラ?」
「正気に戻ったら何をするのか予測がつかないから保険にね。自分で訪ねてきたのとエレベーターで俺とチュウしたのを、絶対保管しといて」
「え?チュウ?」
 岡本はぎょっと目を見開く。
「うわ、そこまでやったんだ。頭が下がるわ~」
「ん。まあ野良猫に舐められたと思えばいいからさ」
 そう言いつつも、佐古は立石のシャツの裾を掴んで、端で口をぬぐった。
 引っ張られたせいで覗いた立石の腹筋に本間は冷やかしの口笛を吹き、頭を軽く小突かれる。
「で、せっかく戻ってきたところ悪いけど、外で話がしたいの。付き合ってくれないかな」
「了解」
 佐古はいったん部屋へ戻った。
「んー、あれはもう起きるね」
「だろ?」
 途中で片桐の様子を見てきたらしく、取ってきた上着に袖を通しつつやってくる。
 ぼんやり三人のやりとりを見ていた岡本に、本間が膝丈スカートの足を振り上げ横から蹴りを入れた。
「アンタもよ。つうか、アンタのために外に出るんだから奢りなさいよ、コーヒー」
「え?俺?」
 目を丸くする岡本へ佐古が上着を投げる。
「1時間くらいで戻るから、昼ご飯よろしくね。あ、コイツの分はいらないから」
 くいっと親指で示された男は眉をへの字に曲げる。
「アンタで、コイツで、昼飯抜きって、どんな扱いだよ・・・」
「扱いもなんも、昼ご飯を暢気に食べてる場合じゃないから、アンタ」
 もうすでに名前ですら呼んでくれない。
 それなりに可愛がっているつもりの本間からの仕打ちに、岡本はしょんぼりと肩を落とした。


「で、なんでテラス席・・・」
 日差しはうららかなれど初春の風は冷たく、さらに通りを歩く人たちの視線がちらちらと自分たちを掠めていくのがどうにも落ち着かなくて、つい、岡本はぽつりとこぼした。
「店内だと、誰に聞かれるか解らないからよ。その点ここは、あまり周りに人がいないからどんなに油断した会話をしてもオッケーでしょ。まったく、膝下は寒いし、コーヒーなんて、立石さんの淹れたのの方がずっと美味しいってのに」
 更にご機嫌斜め度が増した本間が、何枚もの膝掛けにくるまってグルグル唸っている。
「でも、かえって悪目立ちして、やたらと俺たちを見ている気がするんですけど・・・」
「それはね」
 びしっと指を立てて本間は言った。
「佐古さんが度を超した美形なのと、アンタも実は小さいなりに格好いいからよ」
「は?」
「有希子さんと結婚してから垢抜けたからね。下着からなんから総入れ替えしたのは聞いているわ」
 ぐふふふ、と口元に手を当てて含み笑いをする。
「さいですか・・・」
 女ってなんでそんなに何でもかんでも人に話すかな・・・と、いう言葉をなんとか飲み込んだ。
「なっちゃんだって綺麗だよ。ストーカーが二人もつくのはもう仕方ないって感じ?」
「さりげなく傷をえぐってくれて有難う、何、それって賛美なの?」
 軽いボケと突っ込みを楽しんだ後、真顔にかえる。
「でね。本題ですが」
「はい」
 自然と三人の背筋が伸びる。
「まずはさっきの瀬川の反応だけど、私の読みはアタリだったみたいね。我が社の都市伝説を鵜呑みにしてる女子はけっこういるから」
「都市伝説・・・?」
「黒白王子セレブ説がその一つかな」
「へえ?俺らは普通のサラリーマンなのにね。実家もフツーだし」
「そ。本当のセレブレティは他にいるのにねえ」
 と、二人は岡本を振り返る。
「え?オレ?」
「日本屈指の名旅館の息子なんて、そうそういないわよねえ」
「そうそう、去年、行ってみてびっくりしたもんな、あの規模」
「いや、俺は継がないし、姉貴たち怖いし」
 実質経営権を握っているのは母と三人の姉たち、アマゾネス軍団だ。
「まあ、だから個人情報が漏れたとしても一応、岡本さんは圏外だったのよね。婚活女子のアンテナからは」
「アンテナ・・・」
 岡本は胸をどきどきさせる。
「で、なんで瀬川美咲は急にあんな無謀な賭に出たの?」
 おなざりにカップに口をつけながら佐古は首をかしげた。
「一つは、うちの給料が思ったより低かったことです」
 もう一度、びしっと指を一本立てて言い切る。
「世界的に名の通った会社だから、年収1500万は固いと思っていたみたい。専業主婦になって、毎日オシャレなレストランでランチして、セレブな習い事して・・・って生活が出来るものと思い込んでいたら、一千万すら満たない事が判明して、ブルーになっていたのよ」
「は?無理だろ。そんなの社内結婚しても辞めていない有希子たちを見れば解るだろ」
 昔は寿退社なんて言葉もあったが、今はほとんどの事務職の女性が出産後も育児休暇や特別勤務を使いこなしつつ続けている。
「あれは、好きで働いていると勘違いしていたのよね。この業界、奥さんの方が稼ぎが良いカップルが山ほどいる理由を知らなかったのよ」
 そして、社内結婚も多いが、経済的事情から看護師などの技能職の伴侶を見つける者も少なくないのが特色の一つだった。
「次に、片桐さんの実家ね」
本間は二本目の指を立てる。
「実は、年末の時点で詩織ちゃんからメールで聞いていたんだけど、挨拶で片桐さんの実家に行った時、消防団の人たちが乱入したらしいね」
 詩織とは、片桐の妹である。高校生ではあるが、本間とすっかり意気投合して連絡を取り合っているらしい。
「ああ、それは・・・」
 曲がりなりにも都会暮らしの女性には強烈すぎる洗礼だ。
「カルチャーショックだろうな・・・」
 男たちはそれぞれ同情めいたため息をついた。
「片桐さんちって、有名なバラ屋敷だけど、あそこだけ本当に浮いているもんね。周りはぐるっと田んぼだし。それだけじゃなくて、本家の人たちとか、主婦連の人たちとか、お祝いに詰めかけたらしくて、凄かったみたいで」
 他にも何かあったような・・・と掲げていた手を下ろして指折り数える。
「ああ、そうそう。片桐さん、実家帰ったら方言が強くなるよね。朱に交われば赤くなるというか。こっちにいるときはそうでもないのに」
「ああ、筑後弁?」
 その近辺で使われる方言を筑後弁という。
 かなり癖があり、関東の人にはまず何を言っているか理解不能だ。
 荒っぽくて、泥臭い。
 俺んちほどではないと思うけどなあと、鹿児島出身が笑う。
「私は好きだけどね、ちっご弁。でも瀬川は違ったの。有明海が目の前で、福岡と言うより、佐賀県で不思議はないし。観光地の柳川でもない。隣人と親戚はみんな農業か漁業をやってる。おじさまはたまたま司法書士事務所開業していたから、そんな場所と思わなかったようなの」
 片桐の家は、場違いなほど洋風に凝った造りになっている。
 東京からやってきた妻が寂しくないようにと父親が死にものぐるいで建て、心を癒して貰おうと日々ガーデニングに励んでいて、ちょっと名の通った屋敷である。
「瀬川は、片桐さんが作為なく見せた家族写真や家を見て、給料が低くてもこれならと思い直していたようだけど、田舎ライフ全開の洗礼にそうとう打ちのめされたみたい」
 これは、婚活女子チームから漏れ聞いた話。と、前置きした。

「そしてね。そんな矢先の軽井沢スキー旅行よ」

 白いゲレンデに舞い降りたのは、白馬に乗った王子そのものだった。



 『ずっと、ずっと甘い口唇-21-』へつづく。







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