『ずっと、ずっと甘い口唇』-14-(『楽園』シリーズ) 

2012, 06. 21 (Thu) 18:35

 ようやく、佐古と片桐のターンです。
 でも、まだまだ続きます。
 あと一回かな。
 ながながと長っ尻酒屋ですみません。
 お店の人たちもいい加減帰ってくれとじりじりしていると思います。
 ええと、下世話な話があと一回で終わる予定です。
 16回からは展開しますので、どうぞおつきあい下さい。

 私の周りの同僚は男女交えてもけっこう色々喋り倒していたのですが・・・。
 どうなんでしょうね。
 いい大人がここまで話すのもどうかと思うのですが、まあ、所詮酔っ払いですから・・・。
 王様の耳はロバの耳・・・といいつつ、みんなしっかり面白い事は覚えているんですよね~。

 ではでは、つづきをどうぞ。

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  現在は、『睦み月』で『シゲルとミケ』シリーズです。
  飲んだくれ猟師と化け猫の話。
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 『ずっと、ずっと甘い口唇-14-』




「バンビちゃんも、やるねえ。惚れるわ」
 佐古がカウンターに突っ伏して笑う。
「ああ、腹が痛い・・・」
「俺は別の意味で腹が痛えよ」
 フレックス勤務ならギリギリ出勤時間だったあの時に、廊下を誰も通らなかったは奇跡だ。
 更に、春彦の部屋周辺の住人がそろいも揃って海外事業の応援にかり出されていたのは、幸運の女神がついていたとしか思えない。
 とにかく、現段階ではあの一件に関する噂も冷やかしも耳に入らなかった。
 いや、もしかしたら目撃者がいたのかもしれないが、男子寮で裸で放り出される男の話など、誰がしたいものか。
 それにしても、佐古の言うとおりである。
 あざやかとも言える豹変ぶりだった。
 今まで、控えめで柔らかな表情を浮かべる春彦しか知らなかった片桐にとって、あの怒りようは驚きで、いったい何が起きたかと混乱を更に深めた。
 その一方で、怒った顔も可愛いなと、思ってしまったのだ。
 黒い目がきらきらと光って、いつもは真っ白な頬がわずかに紅潮して、まるで花火がぱちぱちとはじけるようでとても綺麗だとも。
 そして、冬の朝日を浴びて光っていたなめらかな肌を思い浮かべるうちに、だんだんとなくした夜の記憶を取り戻していった。取り戻すよう、努力した。
 そして、後悔する。
「なんで、あの瞬間は綺麗さっぱり忘れてしまったんだ、俺・・・」
 あの甘美な一夜を、どうして忘れる事が出来たのか。
「また、そこか」
 自分は、春彦の事を何も知らなかった。
 見ているようで、何も見ていなかった。
 だから、もっと近付いて、もっと深く知りたい。
 しかし今は、隣の席に腰を下ろすだけで空気が凍る。
 打開策はないまま、いたずらに時が過ぎていった。
「そもそもさあ、酔っていたとはいえ、男相手によく勃ったね、片桐」
 せっかくオシャレな店で飲んでいるというのに、佐古は先ほどからあけっぴろげな発言を連発している。
「・・・お前、今酔ってる?」
「ぜんっぜん。もう一度質問を繰り返して欲しい?」
「・・・いえ、結構です」
 こいつは見た目日本人で中身はアメリカ人だったと痛感した。
「いくらバンビちゃんが中性的な顔立ちで、肌が綺麗だって言ってもさ。ついているもんは俺らと一緒だし。ええと、美咲ちゃんだっけ。彼女は華奢だけど巨乳だって本間が言ってたから、全然骨格が違うよね。普通、途中で萎えるもんだろ?」
「・・・それはなかった」
 むしろ、がぜん燃えた。
「んじゃ、片桐はもともとバイセクシャルなの?それとも、ゲイ?」
 つまみのチーズをかじりながら尋ねる佐古の目は、好奇心というよりも純粋な疑問らしくいたって冷静だった。
「・・・わからない。俺、それまではそこそこ普通に女の子と付き合っていたし」
「ふうん。それで、よくハルちゃんの身体、あの程度で済んだね。下手したら流血沙汰で病院行きだよ?」
「それは、そこだけ・・・なんか、冷静だったんだよ、俺」
「冷静?平静?」
「混ぜっ返すな。・・・ハルが持ち込んでた俺のバッグの中にハンドクリームがあったんだよ。・・・頼むから、それ以上は聞くな!」
 ふうん?と、にやにや笑う佐古の顔を片手で押しやる。
「潤滑剤も避妊具もたまたまあったなんて、ほんと、運が良いねえ」
「どっちもたまたまだって・・・」
「まあ、それはいいとして。初めてなのによくも入れる気になったなあと思ってさ。やっているうちに冷めていくもんだろ。何しろ男の身体は正直だしさ」
「・・・まるで、経験あるような言い方だな」
「あるよ。一度、徹で試したから」
 ウイスキーの入ったグラスを片桐は倒しかけて、なんとかとどまった。
「・・・はい?」
「うん。だからね。昔、徹と寝てみたんだけどさ。未遂にもならなかったな。お互い全く駄目で。徹から聞いてない?」
「聞いてません聞いてません、そんな恐ろしい事」
 ぶんぶんと片桐はかぶりを振る。
「そうか、とっくにみんな知ってると思ってた」
「知らねえし、さらっと言うなよ、そんなディープな話」
 己を落ち着かせるためにグラスを両手に持って一口飲み込んだ。
「だって、ほんとになんの反応もしなかったんだから仕方ないじゃん。俺さあ、ここ数年不能なんだよね」
「・・・!!」
 今度はウイスキーが片桐の気管を焼いた。
「あー、はいはい、ごめんごめん、タイミングが悪くてごめん」
 激しく咳き込む片桐の背中を軽くとんとんと叩きながら頬杖をつく。
「な、何で、そんな展開になったんだよお前ら」
 せわしなく胸を上下させながら、恨みがましい視線をやった。
「俺、うっかり奥さんの浮気現場に足を踏み入れてしまってさあ」
 佐古が帰化する原因の一つは妻との離婚にあるとはさすがに知っている。しかし、何故離婚したのかまでは誰も聞いていなかった。
「山場だったらしくて男の腹にまたがって絶叫しているのに居合わせちゃったから、もう、その衝撃は半端なくてさ」
「それはまた・・・」
「彼女に対してはもういいんだけど。仕事が忙しくて寂しい思いをさせた俺にも落ち度があるから。でもその後、だんだんとセックスがわからなくなってきたんだ。突っ込んで揺すって吐き出すだけ。排泄とどこが違うんだ、こんなコトのために何を頑張ってるんだって思ったら、もう、やる気もなくなってしまった」
「排泄・・・」
「そう、排泄。獣の交尾の方がまだ実りがあるね」
「だけど、相手が違うと気持ちも違うかな~と思って、徹を押し倒してみたけど、触れば触るほど冷めていくんだよ」
 予想だにしなかった話を聞かされて、混乱する頭を抱えた片桐はようやく言葉を絞り出した。
「・・・何故、そこで立石」
「ほんと。なんでそこで黒王子なのよ」
「・・・は?」
「・・・ん?」
 さらに予想外の声に、二人同時に振り返ると、そこにはいるはずのない本間奈津美が立っていた。
「よっ。話は聞いた。アタシも混ぜて!!」
「・・・はあ?」
 あまりの展開に、酔いがますます回っていくのを感じた。





 『ずっと、ずっと甘い口唇-15-』へつづく。







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コメント

犬飼ハルノ

コメントありがとうございます。
どうしても女の子達がでしゃばってしまうのですが、楽しんで頂けるなら良かった~。
またぜひ感想を聞かせて下さいね。

2013/05/28 (Tue) 19:40 | 犬飼ハルノ | 編集 | 返信

ゆな

…お、面白い~っっ!!♪♪…って片桐さんと晴君に睨まれそうなので、言っちゃいけないのでしょうけど…ロバより耳を大きくして続きを聞かせて(読ませて)頂きます♪(^〇^;)

2013/05/26 (Sun) 15:11 | ゆな | 編集 | 返信

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