『ずっと、ずっと甘い口唇』-13-(『楽園』シリーズ) 

2012, 06. 19 (Tue) 20:08

 お待たせしました。
 シリーズ13話です。

 昨日は韓国俳優とドラマについて長々語ったら、俳優の検索に引っかかり易くなってしまったようで、純粋な韓国ドラマの方々には申し訳ない事をしました・・・。
 きっと、開いてみて、何じゃこりゃと思われた事かと・・・。
 腐った話でほんに申し訳ない・・・。

 さて。
 前にエクセル表を作って時系列を整理してみましたと書きましたが・・・。
 物の見事に時間と出来事が交差してしまった話がありまして、慌てて修正しました・・・。
 それは、『女王様と俺』-夜を越える-です。
 もう一年くらい前に書いた物で、このシリーズ直前の話なのにもかかわらず、岡本の結婚と片桐の結婚準備期間がそういや重なっていたのだと気づき、多少削って多少加え直しました。
 登場人物の名前も間違っていたし・・・。
 もう、なにやってんだか。

 これからは、こんな混乱しないよう、気をつけます。


 ではでは、つづきをどうぞ。

 相変わらず、ビストロですよ・・・。



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  現在は、『睦み月』で『シゲルとミケ』シリーズです。
  飲んだくれ猟師と化け猫の話。
  楽しんで頂けたら幸いです。

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 『ずっと、ずっと甘い口唇-13-』



「もう、とっくにご存知とは思いますが・・・」
「うん」
「すきでした、ずっと」
「・・・うん」
 ぽたり、と、テーブルの上に涙が落ちた。
 おそらく、中村は自分が泣いている事など気が付いていないだろう。
 だから、立石は視線をまっすぐカウンター向こうのガラス棚に目をやった。
 この店は昔よく池山と利用していたために顔見知りのオーナーは、立石たちの座っている店の端だけスタッフが近付かないように配慮してくれた。
 普段の中村ならこのような話をする事も、涙を流す事もない。
 優しげな風貌とはうらはらに、物凄く芯が強く、常に自制しているところがあった。
 ほんの少しの酒で崩れていくほど、彼が参っている証拠だ。
「だから、泥酔した片桐さんが僕の腕をつかんだ時、振り払えなかった」
「うん」
「それに・・・」
 立石の相づちにぽつりぽつりと言葉が落ちる。
「たぶん、僕が誘った・・・」
 両手で囲い込んだカクテルのグラスをぎゅっと、指先が白くなるまで握りしめているのを横目に、立石は胸元から出したマルポロを咥えて火をつけた。
「そうか・・・」
 ふうーっと細く吐きだした煙はゆるく天井に向かって上っていく。
「だって、名前、呼んでくれたから」

 ・・・ハル。
 ・・・ハル、行くな。

「うん」
「最初は美咲さんじゃないって落胆していたくせに、僕の名前呼んでくれたから・・・」
「うん」
 目を開いたままぱたぱたと涙を落とす中村の頭にそっと手をやり、髪をくしゃっとなでる。
「か、可愛いって言ったりするから・・・、だから・・・」
 春彦は両手を鼻と口に当てて、嗚咽を飲み込んだ。
 
 ハル、ハル、可愛いな。
 可愛いよ、お前は。

 片桐は、ずっと甘くかすれた声で名前を呼びながらも、やがて性急に求めてきた。
 互いの両手の指を絡ませて、春彦は半ば床に縫い付けられたような状態で足を開いて片桐にえぐられる。
 2人が発する熱気と息づかいと信じられないような生々しい音が部屋にこもる中、何度も何度も深く奧まで叩きつけられて声すら上げられず、ただただ喘いでいた。
 初めての行為に対する驚きと痛みと想像だにしない感覚に、ああ、これが気持ちいいと言う事なのかと霞む意識の中で思った。
とても、とても気持ちが良い。
 身体の中いっぱいに片桐が入ってくる。
 出て行こうとするのが惜しくて、無意識のうちに腰に足を絡めて引き留めた。
 それに応えて自分を貫きながらも片桐は首に唇を落として強く吸う。
 そして、歯を立てられた。
 その瞬間、何故か喰われる、と思った。
 ふいに想像する。
彼は腹を空かせた肉食獣で、自分は捕まってしまった草食獣だ。
 彼に仕留められて、腹を割かれて血を流しながらも、どこかそれが気持ちいいと思ってしまっている。
 腹の中に鼻面を突っ込まれてむさぼられても、気持ちいいと。
 彼の糧になれて、この上なく幸せだと。
 そして、思う。
 もっと、もっと欲しがって。
 もっと、欲しいと言って。
 跡形もなくなるくらい、自分を食べ尽くして欲しいと。
 そして強く、強く願った。
 このまま、どうかこのまま。
 このまま、どうか。


「う・・・っ」
 思い出した何もかもに心が乱れて上手く息が出来ない。
「ハル、ゆっくりでいい、ゆっくりでいいから」
 両手をあてたままやり過ごそうとする春彦の背をやさしくなでた。
 促されて、震える両手の下でゆるゆると息を吸う。
「まあなあ・・・。好きな相手と肌を合わせられたら、そりゃ嬉しいよな」
 今までほとんど相づちだけだった立石がぽつりと呟いた。
「俺は生と初めて寝た時、・・・というか、抱かせて貰った時、有頂天も良いところだったよ」
 何度か顔を合わせた事のある立石の思い人の話を、本人の口から聞くのはこれが初めてで、春彦は息を沈めるよう努めながら隣に目を向ける。
 すると、タバコを持つ手を照れたように口元にあてながら立石は続けた。
「俺は中学生の時からあいつが欲しかった。だから、再会してから身体を開いてくれた瞬間、初めて女の人を抱く時以上に緊張して頭が真っ白になったな。・・で、嬉しい嬉しいだけの気持ちでぐるぐるして、一晩中」
 少しおどけたように目元で笑ってみせる。
「こいつはオレのもんだ、俺の物になったぞーって、周りに言って回りたいくらい舞い上がっていたんだが・・・」
 と、そこで立石の眉間にしわが寄る。
「・・・朝になったら、そうじゃなかったと解った」
 はああ~と、盛大に天井に向けて息を吐き、煙が上っていった。
「え?」
「ベッドで目を覚ましたら、とっとと着替えた生がコーヒー飲んでソファでくつろぎながら、さっぱりした顔して言ったんだ。『これで気が済んだだろう』って」
「・・・はい?」
「明け方までの諸々なんか関係ございませんって顔をして、さらっと。『お前がそこそこ上手いのはわかったから、安心して次に行け』って。アレには地べたより下に叩きつけられた気分だったね」
「・・・は・・・」
「俺は、生が俺なしでは生きていけないって言わせたかったのに、もう、あっさりかわされて、燃え尽きたよ、さすがに。・・・でもな」
「はい」
「それで、一時は猛烈に腹が立ったけど、その程度の事では諦められないと思った。どんなに邪険にされても、振り払われても。・・・俺は何があっても、あの夜を忘れない」
 生は策におぼれたんだよ、と立石が楽しそうに笑うので、春彦もつられて笑う。
「そう・・・ですね」

 物凄く嬉しかった。
 たとえ、ただの衝動だとしても。
 たとえほんの気まぐれでも、それはずっと欲しかったから。
 だから、絶対に忘れない。


「でも・・・。僕は片桐さんにとても悪い事をしました」
 ふと、忘れてはならない一件を思い出して春彦は表肩を落とした。
「ん?」
「実は、最近、上司たちの会話を小耳に挟むまで知らなかったんです」
「なにを?」
「泥酔した場合、一度眠った瞬間にそれまでの記憶がリセットされる事があるって」
「んん?」
 最初に話が戻っている。
 言わんとする事が理解できず、ブランデーグラスに口をつけながら立石が眉を寄せる。
「岡本さんからの電話が入るまで、眠りに落ちたのは多分ほんの短い間だったと思います。自分でも気が付かなかったくらい。その分、眠りが深かったのかもしれませんが・・・」
「・・・?・・・ああ」
 中村が倒れた日の朝の事らしい。
「まさか、たったそれだけの睡眠で片桐さんが記憶をリセットしてしまうなんて、あの時の僕には考えが行かなくて・・・」
「それで?」
「起き上がった瞬間に、パニックを起こした片桐さんに猛烈に腹が立って・・・」
「うん」
 言いよどむ春彦に視線で先を促す。
「すぐに蹴り出して、・・・裸のまま、廊下に放り出してしまいました・・・」
 今を思えば、なぜあのような暴挙に出られたのか解らない。
 目をぎゅっと瞑って恥ずかしそうに絞り出した呟きに、立石は目を見張った。
「・・・マジ?」
 重たい沈黙が2人の間に落ちる。
「・・・マジです」
 煙草をくゆらせた指先もそのままに、あんぐりと口を開けてしばらく微動だにしなかった立石はそろりと息を吐いた。
「・・・ハル」
 ゆっくりと灰皿に短くなった煙草を押しつける。
「・・・はい」

「お前もやるねえ・・・」
 にやりと、立石が笑った。




 『ずっと、ずっと甘い口唇-14-』
へつづく。







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