『ずっと、ずっと甘い口唇』-12-(『楽園』シリーズ) 

2012, 06. 08 (Fri) 20:01

 家事をしていて、ふと気が付いたのです。
 微妙につじつまが合わない時間があるのではないか?と。

 なので、ここ数日、数年分のタイムテーブルもどきを作ってにらめっこし、更にはちょこちょこ過去の原稿の時間軸や場所などを修正しました。
 いや・・・。
 なんでこんなに考えなしなんだろう、私。

 他の作家さんはどうしていらっしゃるのかしら。
 小説書くためにエクセル表を立ち上げる人って、私だけなのでしょうか。
 とくに、このシリーズはいくつかの話を平行しているので、もう複雑怪奇で。
 この話をここに突っ込むとこっちがうまくいかない・・・とちょっと唸ってしまいました。
 ちなみに、ふと気が付いたのが佐古。
 来日して、およそ三年経っていたわ・・・。
 入社自体が浅いのでまるまる三年ではないけれど、あれだけ仲良く馴染んでいたらもう、ヨソモノ扱いしないでお友達でいいんじゃないの?と、自分に突っ込んでしまいました。
 
 とにかく、時間軸の説明っぽくなってしまった今回のはなし。
 色っぽい話がまったくなくてごめんなさい。

 次は週明け更新です。
 
 土曜日の仕事で屍にならずにすめば、月曜日にでも・・・。




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  現在は、『睦み月』で『シゲルとミケ』シリーズです。
  飲んだくれ猟師と化け猫の話。
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 『ずっと、ずっと甘い口唇-12-』




「・・・知らなかったんです」
 ビストロ風の穏やかな店内に呟きのような言葉が落ちた。
 立石は黙って、隣に座る中村の細い肩先を見つめた。
「眠りに落ちたらリセットになるって」
「・・・ああ、酒で記憶が飛ぶヤツか。片桐にしては珍しいけどな」
「ええ。だから、僕もなんだか混乱して・・・」
 店内のざわめきに混じって緩いジャズの流れる中、何故か目眩を感じて固く目を瞑った。
「今もどうしたらいいか解らないです」
「まあ、それはそうだろうな・・・」
 絡まりきった糸をどうすればいいのか、二人だけではなく、当事者全員途方に暮れているところなのだから。
「何があったのか、もうご存じですよね・・・」
「まあ、うすうすは。・・・真人がいたしな」
 好奇心の塊の佐古は、いつの間にか彼らの間にするりと入り込み、この件の中心に座り込んでいるような気がしてならない。
「あの折は、本当にお世話になりました」
「いや。今日もこんな所に呼び出すのは余計な事かと思ったんだけどな。営業の手配ミスでそっちの作業量が増えてたから疲れているだろう」
 営業の池山は責任者としてシメといたから、と、立石にしてはきつい物言いに中村はふわりと笑う。
「いいえ。かえって気が紛れるから仕事が増えるのは大歓迎なんですけど・・・。独りになると、どうしても色々考えてしまうから」
「そうか」
「はい」
「・・・こう言うのも野暮だが、片桐は本当にハルのことを可愛いと思っていたはずなんだけどな」
「可愛い・・・ですか」
 自嘲気味に反芻するのをさらりと流して立石は続けた。
「去年のGWの九州・山口ツアーは、佐古と岡本がこっぴどく叱られていたし、そうとう抵抗されたしな。最後の最後までお前と二人だけで行くつもりだったんだよ、片桐は」
 そう言われて、去年の春には休みをいっぱいいっぱい使い切って立石たちと片桐の実家へ遊びに行き、そのついでに九州を回った事を思い出す。

「前に福岡の事、色々聞いていただろう。予定がないから来ないか?うちの実家」

 片桐が仕事の打ち上げの最中に誘ってきたのを聞きつけた鹿児島出身の岡本が、春彦の返事を待たずにいきなり割り込んできた。
「なんだ、俺もGWに里帰りすんだよ。なんなら一緒に行こうぜ、九州」
 と、そこへ同じく福岡への里帰り予定の立石と佐古が加わり、更にその場にいた山口出身の江口が引き込まれ・・・。片桐と春彦は置いてけぼりのまま、話はあっという間に大きくなっていった。
 酒の席の話で済まなかったのが彼らの凄いところで、翌日の昼休みには基本計画ができあがっていた。 
 顔ぶれは、片桐、立石、佐古、岡本、江口、立石と同期で営業の池山、女性は本間、そして彼女の茶道仲間でSEの事務だった保坂、更に師匠の孫娘で立石の級友の長谷川とその息子、更には同じく茶道仲間で江口の姉の小宮とその子供たちが完全参加。
 あとは途中合流や途中離脱が設計とSEともにそれぞれの部署から数名と、更にその家族や恋人が混じり、もはやツアーと冠するに相当する規模だった。
 立石たちがたてた最初の計画では数日のはずだった話があっというまに一週間を超えて、日程表を更新しながらこうなるともう合宿だと本間が笑い、この際安月給のこの業界から足を洗ってみんなで旅行会社でも起こすかという冗談を交わして、準備の段階からとても楽しかったことも覚えている。
 旅の最後に鹿児島の岡本の実家が営む旅館に泊まり、そこで岡本はプロポーズに成功し、保坂はすぐに家族と親族に気に入られ、とんとん拍子で結婚が進み、みんなで幸せな気分になったものだ。
 あの頃は、瀬川美咲がまだ仲間に加わっていなかったことも思い出し、また少し胸が苦しくなる。
 片桐が彼女の手を取ったのは、それからまもなくの事だった。
 ちょうど同じように交際を始めたり結婚を決めたカップルがそこかしこにいて、「鹿児島プロホーズ旋風だな」と上司たちが苦笑いしながらご祝儀の算段をしていた。
「知らなかった・・・。だって、物凄く楽しそうにしていたし・・・」
「俺は最中にも勘弁してくれと愚痴を言われたよ。ハルと静かにゆっくり行くはずだったのにって。ずいぶんと好き勝手に暴走してたからな、みんな」
 あの旅行は、自分の記憶にある限り一番楽しい思い出ではあるけれど、二人だけで行っていたならば、もっと違う形になっていたのだろうかと言う思いもわいてくる。
 でも。
 それは関係ない。
 婚約した時の片桐はとても幸せそうだった。
 そして春彦は、自分がずっと恋していた事に気づき、それはけっして叶わない事も知った。

 ずっと、ずっと。

 18歳で入社してすぐに配属先で片桐に出会った時から、その明るさと暖かさにあこがれていた。
 昇級のための研修で二年あまり離れる事になった時、もう会う事もないのかと寂しくなった。
 そして、幸運な事に同じ所へ再配属された時は天にも昇る気持ちだったのも今でも覚えている。うれしくてうれしくて、辞令をもらった日は眠れなかった。しかしそれは、単純に居心地の良い仲間の元で働きたいと願っていたからだと自分に言い聞かせていた。

 ずっと、好きだったのに。

 出会いもきっかけも過ごした時間も自分にとっては何にも代え難い宝物だけど、片桐にとっては普通の、同僚との記憶に過ぎない。
 そう思い知らされたのが、瀬川美咲との一件だった。



 『ずっと、ずっと甘い口唇-13-』へつづく。







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