『ずっと、ずっと甘い口唇』-11-(『楽園』シリーズ) 

2012, 06. 06 (Wed) 00:41

深夜にこっそり更新。
お待たせしました。

本当は夕方にUPするつもりだったのですが、間に合いませんでした。
もう一度細かいところを見直して修正するかもです。

こんな所で切ってごめんなさい~。

まだまだ続きます。まだまだ・・・。








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  現在は、『睦み月』で『シゲルとミケ』シリーズです。
  飲んだくれ猟師と化け猫の話。
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 『ずっと、ずっと甘い口唇-11-』



 本間の呪詛が効いたのか、程なくして立石と佐古は帰国した。
 職場復帰してまず彼らが行った仕事は、「なんとかする」ことだったのはいうまでもない。
「じゃあ、今夜やっつけようよ。俺は片桐担当、徹はバンビちゃんね」
 所属は研究所付けにもかかわらず、本部総務関係の手続きと人事への説明のために立石たちの仕事場にやってきた佐古が、関係者の中で付合いが一番浅いにもかかわらずてきぱきと指示を飛ばす。
「あ、そうだ」
 半分脱力しながらそれを眺める岡本にくるりと白王子が優雅に振り返った。
「ねえ、酒と料理がまともで、ちょっとこじゃれて、キャパの大きく、女子率が割と高い店知らない?あと、値段はちょっと高め」
「んー?なんで?」
「男子率の高い店でこの手の話をしてもね。女の人は自分たちの話にたいてい夢中だから助かるんだよ。しかも合コンなんかに使っていたらなお良しだな。」
「君のその洞察力と気配りにはしんそこ感服するよ、ワタシ・・・」
 日本の文化に馴染みすぎだろ、と突っ込みを入れつつも、岡本は要望に応えるべく早速PCに向かった。
 「二軒ね。徹は寮に近い方、俺は家に近い方」
 もう、どうにかしてくれるならどうにでもしてくれと天を仰いだ。
 

「ふうん。あいつもやるじゃん」
 満足げに佐古はウイスキーに口をつけた。
 岡本が昼休みを使い切って手配した店は、なかなかのものだった。
 キャパが大きく、ご褒美向きの人気店。
 ほとんどがカップルと食事会、多少は男性同士も混じっているが、暮らし向きの良さそうな感じで、同業者らしき面子はない。
 自分たちの所属先でもある日本のメーカー勤務者はたいてい安月給なので、この手の店にはなかなか来ないことを狙ったのだが、見事当たったようだ。
 更にはほどよい暗さと女性中心のざわめきのおかげで、カウンター席の隅に座る男二人連れはさほど目立たない。
 本当は徹の家へ連れ込めば楽なのだが、こういう店の方がかえって話もしやすいだろうとも思っての事だった。
 そして、それも狙い通りであることは、隣の片桐の口調を聞けば明確だ。
「あいつって?」
 同じくウィスキーを飲み干しながら上目遣いに尋ねるさまは、ほどよく酔いが回ってきたと見える。そろそろ色々な物がほどけてくる頃か。
「ううん、別に。それよりさあ。何でこじれちゃってんの、君たち」
 単刀直入に切り返すと、グラスを下ろす手を宙に止めた。
「・・・わかんないんだよな、俺も、多分、ハルも」
 以前のようであろうと、ありたいと思えば思うほど、どうすればよいか解らなくなる。
「ほら、眠れない時に思わないか?あれ、どうやったら眠りにつけるんだっけって。そういうのに似ている気がする」
 自然に、呼吸するように当たり前だった事が、今はまったくどうしたらいいのか解らない。
 彼の前では上手く笑う事はおろか、自然に話すことすらできなくなりつつある。
「それはまた・・・」
 聡い子だから、片桐があがけばあがくほどそれがまた辛いのだろうなと、その白い顔を思い浮かべる。
「で。今更なんだけど。あの夜はどこまでやっちゃったの?本当は覚えてるんじゃない?」

 あの夜。
 本当に今更だ。

「朝、起きた瞬間は本当に覚えてなかったんだ。だから、物凄く動揺してハルを傷つけた・・・。でも」
「思い出したんだ」
「ああ。一生懸命考えたし、色々な切っ掛けでボロボロ出てきた。時間が経てば経つほど・・・な。多分、今は全部思い出したと思う」
 手のひらに、指先に、腕の中に、春彦の息づかいが灯っている。
「俺はあのとき、物凄くハルが欲しかったんだ」

 花のように香る、甘い唇。
 それがかすかに震えているのを見た瞬間から理性はとんだ。

 いや、それより前に彼の白い膝を目にした時には、酔いつぶれて夢に見ていたはずの美咲のことはすっかり忘れ去った。
 同僚だと言う事も、男だと言う事も、すべて忘れた。
 場所も時間も、気遣いも忘れて、早く征服したという気持ちばかり高まっていく。
 ただ、早く、早くと胸のどこかに焦りと緊張感が広がった。
 そして長い時間をかけてむさぼり尽くしたその身体は、どこまでも、気が遠くなるほど甘かった。
 目を潤ませる春彦が可愛くて可愛くて、指先からつま先まで全部自分の中に閉じ込めてしまいたかった。
 一番最後の記憶は、ぼんやりとした光りの中で唇を合わせながら目を閉じたことだ。
「なにそれ。入れっぱなしで朝ってこと?倒れるはずだよねえ」
 あけすけな物言いに顔を赤らめる。
「いや、さすがに入れっぱなしでは・・・」
「なら、いじり倒し」
「・・・はい、その通りでございます・・・」
「この絶倫め」
 途切れ途切れの告白に、テーブルに両肘をつき、手の甲に顎を載せてあきれたように呟いた。
「そんだけやっといて覚えてませんって、アンタ。どんな人でなしだよ」
 カラン、とグラスの中で氷が転がって音を立てる。
「・・・仰るとおりで」
 はあーっと片桐はため息をついてカウンターに伏せた。
「後で謝ったら、ますますひどくなって・・・」
「そりゃそうでしょ。もう、人でなし通り越して鬼畜だね。俺だったら殺すかも」
「そうだよなあ・・・」
 自己嫌悪で最近は夜もほとんど眠れない。
 どうして、あんなひどい事ができたのか。
 酔いの勢いと言え、踏みとどまれなかった事も、起き抜けの失態も、もうどうにも取り戻しようがなく。
「いっそのこと、殺してくれと何度思ったか・・・」
 ため息と一緒に魂も飛んでいかんばかりの様に、さすがの佐古も言葉がなかった。
「何であそこで眠ってしまったのかな、俺・・・。せめて眠ってしまわなかったら・・・」



 『ずっと、ずっと甘い口唇-12-』
へつづく。







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