『ずっと、ずっと甘い口唇』-10-(『楽園』シリーズ) 

2012, 05. 08 (Tue) 18:25

 片桐×中村シリーズ、10話です。
 遅々として進みませんね~。
 起承転結で行けば、まだ、「承」あたりなんですが・・・。
 雑談が多くてすみません。
 でも、私としてはいれときたい部分なので・・・。

 岡本と有希子の話は『恋愛事情』のほうなんですが、これもストップしたままでごめんなさい。
 しかも、ここで結末割れしているし。
 ・・・まあ、そんなことなんですよ。
 先にこちらを進めるのはどうかと思ったのですが、書きためているのが多かったので優先しました。

 ではでは、亀よりも遅い歩みですが、続きをどうぞご覧下さい。




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  現在は、『睦み月』で『シゲルとミケ』シリーズです。
  飲んだくれ猟師と化け猫の話。
  楽しんで頂けたら幸いです。

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 『ずっと、ずっと甘い口唇-10-』



 幸せな夢を見たような気がした。
 ふわふわと優しさに包まれたような夢を。
 心地よすぎて目覚めたくないような、または目覚めと同時に何か良い事が起こりそうな期待に胸が弾む。
 ゆっくり目を開くとコーヒーの香りとかすかな話し声がして、自分がどこに寝ているのかを思い出した。身体を起こすと昨日とは打って変わってすっきりとした心地がし、スリッパを履いて部屋を出た。
「おはよう。具合はどう?」
 カウンターに両肘をついて寄りかかっていた佐古が振り返る。
 それと同時に、コーヒーを淹れている最中の立石が視線を上げてやんわりとほほえんだ。
「顔色は良さそうだな」
「はい。おかげさまで。昨日はお二人に迷惑をかけて、申し訳ありませんでした」
「いや、無理矢理うちに連れ込んだのは俺らだから。気にしないでくれ」
「そうそう。徹のお節介は性分なんだから。マグロが泳ぎ続けないといけないように、誰かの世話を焼かないと心臓が止まるんだ。だから気にするだけ損だよ~」
「真人・・・。お前は俺をそんな風に思っていたのか・・・」
 親戚同士の屈託のないやりとりに、春彦は笑みを浮かべた。それを合図にテーブルにつく事を促し、暖めたミルクを飲む事を勧めたりと二人は細々と気を配ってくれる。
「実は、片桐が夜中にここにきていたよ」
 一口、ミルクを口に含んだところを見計らって佐古がきりだした。
「え・・・」
「うちへの仕事依頼提案書書き上げてきたけど。まあ、口実だね」
 肩をすくめて、さらりと暴露する。
「帰り際に君の寝顔見に寄ったけど、気が付かなかった?」
「ええ・・・。まったく・・・」
 言いかけて、ふと、額に手をやる。
 誰かが優しく触れた。
 とてもとても心地よかった、あれは。
「・・・・っ」
 目をきつく瞑って唇をかむ。

「ねえ、こういうのなんて言うの?ありがた迷惑?表裏一体?諸刃の剣?」
「・・・頼むからお前はもう、黙ってくれ」
 立石はいつになく大きな音を立てながら人参を刻んだ。

 片桐の優しさが凄く好きで、凄く憎らしい。
 でも、心配してくれたという事がうれしくて心が沸き立つのに、もう放っといてくれたらいいのにと喉の奥に熱い塊がある。
 どうしていいか解らないほどぐらぐらだった。
 目の奥が熱くて、鼻がつんとした。
 泣かない。
 絶対、泣くもんか。
 泣いても、どうにもならないことなのだから。




「あー、もう、いいかげん、どうにかして!!」
 本間は叫んだ。
 何事かと、隣の課の主任が戸棚越しに覗きにきたが、そこにいるのが本間と岡本のみと見て、そそくさと去っていった。
 火曜日の昼下がり。
 事務職の本間以外は各々作業先へ出払ったらしく、無人に近い状態だった。 
「ここは、なに?中学生日記なの?」
 中村が倒れた時からもうすでに一ヶ月近く経つ。
 一ヶ月も経ったというのに、片桐と中村の間のぎくしゃく感はますます悪化していっている。
 仕事に重きを置く二人の事だから、さすがに、仕事に響く事はない。
 その点では問題はない。
 ないのだが・・・。
 綱渡りのような緊張感が漂っているのだ。
「よりによって、こんな時にあの二人が休暇取りやがるし!!」
 こんな時にこそ、いや、こんな時にしか役に立たないと本間が評価する、観賞用美形王子たちは一週間ほど前から揃って渡米中だった。そろそろ帰ってきて欲しいところなのだが、連絡がまったく取れない。
「まあ、今回は佐古の帰化の手続き処理の渡米だからなあ・・・。なんかで揉めててうまくいかないって立石からは一昨日メールが来てたけど・・・」
 まるで本間たちの課の住人のように馴染みきっている岡本ではあるが、実は立石共々、協力関係にある別部署の所属であり、仕事場の階もまったく違う。たまたま急ぎで承認印を貰いに顔を出したところに、運悪く本間に捕まって八つ当たりをされている。
「とにかく、白と黒が帰国したらなんとかするように言って」
 ぴしりと人差し指で岡本に命じた。
「本間さん・・・。俺の方がけっこう年上って覚えてる?」
「うん。でも、有希子さんをまんまと妻にしやがった時点で私の中でのあなたの地位は低いの」
 妻の有希子は女性社員たちの信望が厚く、未だに岡本は影で「とんび」と呼ばれ、時折刺すような視線を向けられる。
 女は敵に回すと怖い。
 超怖い・・・。
 世の中で一番怖い物はなんだと問われたら、迷わず女と答えるだろう。
 ふるると身震いをする岡本だった。
「ところで、件の女の動向でちょっと気になる話を耳にしたんだけど」
 誰だそれ、と言いかけて、本間の物言いにぴんと来る。
 この状況の上にそもそものきっかけを作った女性が再登場するなんて、お腹いっぱいである。
「・・・なにかな、それは」
「うん。確証を得るまでナイショ。ちょっとあまりにも、ちょっとなあと言う感じだから」
 珍しく言葉を濁す本間に首をかしげながら、それ以上追求するのは辞めた。
 開けないで良い箱はそのままにしておくに限る。
「それに、黒の方には私も急ぎの用があるから、早く帰ってきて欲しいのよね・・・」
「解った。もう一度帰国の日を確認したら連絡する。それで良いな?」
「うん。ぐずぐずしていたら、日本に居場所がなくなるからねって伝えといて。特に黒」
「・・・そんな不吉な伝言できるかよ・・・」
 しかしそれは、予言でも呪いでもなく、紛れもない事実だった。





 『ずっと、ずっと甘い口唇-11-』へつづく。







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