恋愛事情-5- 

2010, 10. 28 (Thu) 20:08

 ここ最近、ぐぐっと冬に向かって足を進めているような気がします。
 日が暮れるのが早い・・・というか、三時くらいから日差しが愁いを帯びてきているのです。
 ほんの数週間前までの殺菌能力の高い日差し(笑)とずいぶん違います。
 ちなみに、福岡地方と東京の日没の時間はずいぶん違い、あちらで夕陽を見るたびに早いなあ、福岡ならまだ明るいんだけどなあと思うことたびたび。
 私にとっての十月末から十一月はどこか気だるくなんとなく静かでどこか寂しさを感じます。
 住まいの周りに落葉樹が多いのでそれもあるのでしょうけれど、だんだんボサノヴァなど聞きたくなり、やたらと台所に立つ時間が増えていく…かな。
 今日はリンゴを剥きまくって鍋いっぱいにリンゴジャムを炊きました。
 でも、煮詰めているうちに小さくなって蜂蜜の瓶で三本程度なのですけどね。
 無農薬の紅玉リンゴを使用するため皮も使い、そこから出た色が果実にも映って、ほんのり夕焼けのような色に染まります。
 今回は、ちょっと薄めの朝焼け色。桜貝のような感じかな。
 これを、朝食のヨーグルトにひと匙落として食すのですが、ヨーグルトの白に夕焼けの紅が映えて、とても綺麗なのです。
 ・・・とはいえ、毎朝時間との闘いなので、優雅に色を楽しむ暇なぞございませんが(笑)。


 さて。
 『恋愛事情』の酔っ払い大会もそろそろ終盤。
 以前に別のところで公開していたのはここまでだったのですが、続きをもう少し書いていたので今しばらくお付き合いください。





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  飲んだくれ猟師と化け猫の話。
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 『恋愛事情-5-』



「だって、酔った勢いなら立石君は私を抱いてくれるかもしれない。たとえ、それが生の代わりだとしても構わない。一夜の過ちだとしても、もしもそれで子供が出来たなら、真面目な彼の事だもの、きっと私を選んでくれたわ」
「それは・・・」
 それは有希子の思い込みだと否定できなかった。
 確かに、律儀な立石のことだけに、ありうることかもしれない。
「でもよ・・・」
「虚しいのは承知よ。でもね。たまたま、慰安旅行の頃に排卵日が当たりそうだったの。そしたら、もしかしたらこれ運命かもしれないと思うじゃないの」
 有希子は色素の薄い瞳を煌めかせて池山を見据えた。
 まるで、あたかも、目の前にその運命とやらがいるかのように。
「二人きりになれるかどうかもわからない。うまく連れ込んだとしてもそう簡単に妊娠できるとは限らない。でも、そんな機会が突然目の前にできたのよ」
「それで、お前は本当に良いのか、そんなやり方で・・・」
 立石は有希子の好意に気づいていながらわざと気づかないふりをし続けているのは、池山にも解かっている。
 そして、有希子も。
 職場と言う狭い空間で、周囲に気を遣わせないためにはこの方法しかなかったからだ。
「それが私の策略だと薄々感づいても、きっと、あの人は何もいわないで結婚しようと言ってくれるわ。・・・きっと。例え、ずっとずっと生のことを忘れられないとしても、私と子供を愛してくれる」
 なによりも、有希子自身に恥をかかせないための彼なりの気遣いにあえてつけ込む事を彼女は選んだ。
「愛してくれなくてもいい、疎ましく思ってもいい。ずっとそばにいたいのよ。私はずっとずっとあの人が好きだったんだもの・・・」
 目を見開いたまま、白い頬にぽろぽろと水晶の玉のような涙をこぼす。
「あの人が私のものになるなら、どんなに汚い手だって使うつもりだったのに」
「よせよ。お前には似合わないって」
「だって、生が彼のことをいらないなら、私がもらって何が悪いって言うの?なんだかんだ言って蛇の生殺しのような生活をずっと続けさせる生が悪いのよ。私なら彼にあんな辛い思いを絶対させないわ。立石くんだって、なんだって、友達のお古にあんなに固執するのよ。私なら・・・」
「・・・そこまでにしとけ」
 都合を作っては毎週のように会って姉妹のように仲良くしている友人を悪し様に罵るのは、有希子らしからぬことだった。たとえ、それが胸の奥の奥にしまい続けた気持ちだとしても、どこか自分で自分を傷つけるような物言いに耐えられなくなって、和基は幼馴染の頭の上にぽんと手を置いた。
「お前の気持ちは良くわかったから」
 くしゃ、と、栗色で滑らかな髪を手のひらで撫でさすると、それを払いのけられた。
「・・・なによ。仲が良いからって、おんなじように私に触らないで」
 きっと池山を睨み付けたが、すぐに涙が瞳から溢れあとからあとから頬を伝い、ぽたぽたと音を立てて膝をぬらす。
「同じ?」
「・・・いきなり部屋に引っ張り込むほど、私は獣じゃないわ。告白はしたのよ、ずっと前。・・・慰安旅行よりも前に」
 部の飲み会の後に二人きりになった瞬間、酔いの力を借りて有希子は立石の腕を掴んで言った。
「好きって。あなたが好きだって。まるで子供みたいにがたがた震えながら、一生懸命言ったわ。でも・・・」
 立石は困ったように笑って、ぽんと有希子の頭上に手を置いた後、その髪を大きな手でくしゃっと撫でて言った。
「『・・・ありがとう』って、それだけ。ちょっとすまなさそうな顔をして・・・!」
 池山でない何かを見つめたまま口元を震わせる。
 もう一度有希子の頭に手をやり、少し力を込めた。
「・・・慰安旅行に立石が来なくて、良かったんだよ。俺はそう思う」
 素直にうつむき、涙を落とす。
「好きなだけ、泣け」
 うーっと子供のように小さく唸りながら、膝においていた布ナフキンに顔をうずめる彼女の後頭部を優しくさすりながらため息をついた。
「・・・お前がこんなに泣くのを、俺は初めて見たよ・・・」



  「恋愛事情-6-」へ続く


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