恋愛事情-2- 

2010, 10. 25 (Mon) 20:29


 読み返したら、二人のフルネームが出ていないことに気が付きました。

 保坂有希子と池山和基という腐れ縁幼馴染のぐだくだな食事会はまだまだ続きます。

 昔、決して恋愛対象にならない異性の友達とだらだら話すのも結構好きでした。
 どんなに酔っても一線を越えることなかった理由に、単に私に女としての魅力がなかった…というのは否めませんが(笑)。
 学生の頃の雑魚寝も楽しかったなあと思いをはせつつも、実はそのメンバーの中でちゃんと愛を育んで最後には結婚したカップルもいることを考えると、私が単に恋愛音痴だったのか・・・。
 どうしても私の中に越えられない物があったらしく、友達だった人と一歩先に進んでみたところでうまくいくとは限らないんですよね…。

 『恋愛事情』は『恋の呪文』からおよそ二年くらい経っていて、有希子はいわゆる三十路前となっています。
 この年齢の頃って、大学を卒業してからある程度仕事環境に慣れていろいろ見えるようになった分、色々なことに対して不安になっていきます。
 仕事をこのまま続けていいのか、自分と結婚する相手はこの世にいるのか(笑い事ではないですよ?ほんとの話です(笑))、子供を産むなら今だろうとか。
 長い間付き合ってきた彼氏とのずれが生じ始めていたり、先に結婚した友人の愚痴を聞くたびに、結婚に明るい未来を描けなくなったり。
 三十歳を超えたら、二十代後半の自分はなんて三十代に対してひどい偏見を持っていたなあ(出産のことなど)と思うのですが、当時の同年代の考えは似たり寄ったりでした。

 そんな若くて青い三十路前を今はとても懐かしく思います。
 でも、これって永遠のループでしょうね。
 十代の少女たちが「二十歳になったらおばさん」と言うのは、当たり前の現象ですし。
 意外と、十年先はあっという間なんですけどね…。

 ではでは、いましばらく大酔っ払いを温かい目で見守ってください。





  記事の一番下の『拍手』ボタンをクリックして頂くと小話をご覧になれます。
  現在は、『睦み月』で『シゲルとミケ』シリーズです。
  飲んだくれ猟師と化け猫の話。
  楽しんで頂けたら幸いです。

 アクセスして下さったり、拍手やバナークリックで励まして下さる皆さんに感謝しています。
 もしもよろしければ感想や要望など頂けると、本当に嬉しいです。


ブログランキング・にほんブログ村へ


   拍手小話はこちら →

 『恋愛事情-2-』

「そんな、だってお前、帰国子女で頭脳明晰でセックスも上手で最高の男だと言っていたじゃないか・・・」
 言うまでもなく顔良しスタイル良し収入良しの三拍子が揃っていたはずだ。
 付合いはじめた頃は「凄い男を捕まえたでしょ?」と、わざわざ自慢する為に仕事中の自分を喫茶室に呼び付けたほどだったというのに。
「あれは、上手って言うんじゃなくて、単に色狂いだっただけなのよ」
「いろぐるい・・・。今度はいったい何があったんだ・・・」
「きっかけはあの日に月のものが始まっていたことにあるんだけど・・・」


 その日の有希子の体調は最低だった。
 貧血でどこか意識がふらふらとおぼつかない上に木槌で腰骨を砕かれているかのように腰が痛く、出来ることならば横になって休みたいところだが、日頃海千山千のツワモノどもと戦う仕事をしている恋人の為に歯を食いしばってワンルームマンション独特の狭いキッチンの上でせっせとごちそうを作っていた。
 副作用の関係で出来ることなら飲みたくない鎮痛剤と栄養剤でドーピングして頑張る自分の姿に「ああ、こうまでして尽くすなんて、私ってば彼をそんなに愛しているのね」と酔っていたことは否めない。
 ロールキャベツを作って彼の体を温めさせて、あとはさっぱりしたマリネでも付け合わせにしようかしらとボールにあけたミンチ肉をこねている最中に背後から声が掛かった。
「なあ、有希子・・・」
 ぴったりと背中にくっついてくる体温を意識しながら、彼女は手を休めない。
「なあに?」
 もう少しこねた方が触感もやわらかくなめらかに仕上がるはず。
 粘りを増していく暖色の肉を華奢な指先でかき回すくちゃくちゃという音だけが狭い部屋に広がった。
 彼の両腕がウエストをじわじわと包み込む。
 そして、胸に届く長い髪を作業の邪魔にならないように一つに束ねていたためにあらわになった首筋にやわらかい感触が滑り落ちた。
「ちょ、ちょっとやめてちょうだい。今、両手がふさがっているから・・・」
 彼の意図することを悟った有希子は腕から抜け出そうと身をよじらせるが、シンクと男の体に挟まれて思うようにいかない。
「いいじゃないか、別に・・・」
 背後から回されたがっしりとした両の手は吸い付くように腰のあたりをさまよう。
 ふいにぎゅっとセーターの上から胸をつかまれて肩を震わせた。
「ねえ、今日はやめて」
 ボールの中のかたまりがぐしゃりと崩れる。
「・・・なんで?」
 囁きながらゆるゆると耳をはむ。
 本気で嫌がっているのに全く気がついていない様子だ。
「・・・今日は一日目なのよ」
 このままだと有希子が身につけているタイトなスカートを捲り上げかねない不埒な手を意識しながら、息を吐く。
「別にいいじゃないか、そんなこと」
 両の手がゆるゆると太股をなでまわす。
「でも・・・」
 ぬるぬると汚れている両手。
 ぷんと匂う生肉独特のどこか甘ったるい、けだるい香り。
 触手はセーターをかいくぐり、肌をざわざわとざわめかせる。
 隣ではレンジの上にのせた鍋から沸騰した湯気がもくもくとあがった。
「そっちのほうが、俺は、興奮する・・・」
 ぐしゃ。
 整形しつつあったそれを握りつぶした。
 そして、有希子は身を翻す。


「それで?」
「蹴り上げて帰ったわよ。即刻」
「うっひゃー・・・」
 どこを、とは聞きたくないが、聞かなくても想像がつく。
「お前、そんなことをして一生使い物になら無くなったらどうするつもりなんだ」
「あんなもん、使い物になら無くなれば良いのよ、いっそのこと!!」
 上品な唇から過激な言葉がざくざくと飛び出て来た。
「俺は、その商社マンを同情する・・・」
「なにいってんの。ああいう男に限って東南アジアで処女あさりしたり、いたいけな子供たちを買い捲るに違いないんだから、あんな変態、去勢した方が世のため人のためだわ」
 それがかつて愛した男に対する態度なのかと、和基は椅子の背もたれに身を預け、脱力する。
「お前な、別にいきなり縛られたり、ローソクを持ち出したりしたわけじゃないんだろう?それしきのことで・・・」
「和基はオトコだからわかんないわよね。生理になったことないんだから」
「・・・そりゃ、あったら問題だろ」
 そんなこと言われてもと和基は唇を尖らせる。
「個人差はあるけど、初日ってかなり体調悪いのよ。頭痛はするし、気持ち悪いし、腰は骨盤が歪むんじゃないかと思うくらい痛いときもあるわ。一度経験したら、そんな台詞を吐いたことを後悔するに決まってるわよ」
「・・・こつばんがゆがむって、おまえ・・・」
 想像するだに、恐ろしい。
 きゃーと呟いて頭を抱えた。
「それでも、あんたはやるって言うの?」
「いや、俺は見ての通り、痛いのと血を見るのは苦手だからなぁ」
 そういう状態を好む男の話は確かに聞いたことがあるが、自分としてはいまいち食指が沸かなかったのだ。
「だいたい、お前ん所の高校は教育が間違っていると、常々思うよ・・・」
 和基の姉である千鶴と幼なじみである有希子の通った女子校はお嬢様学校で名高いのだが、なぜか授業のカリキュラムの中に「護身術」が入っている。
 ほんの数回可愛らしくさわりをレクチャーするのではなく畳の上で懇切丁寧に時間をかけて伝授されるために、けっこう身につくものだと聞いている。
 そのお蔭様で非常に強暴な姉と幼なじみの鉄拳を食らい続ける羽目になってしまった。
「もともと、護身術って奴は襲われそうになったときに身を守るために使うものであって、罪のまったくないいたいけな男を殴り飛ばすものじゃないって習わなかったのか?」
「罪・・・?罪は、女性に対して全く思いやりが無いという点で十分有罪だわ」
 すぱんと有希子は断罪する。
 こんな論理に持ち込まれて、和基には反論の余地などありはしない。
「すさんでる・・・。どうしてここまでこいつはすさんでるんだ・・・」
 一息でワインを飲み干す女を上目遣いに眺めながら、絡められたチーズの匂いが湯気と共に立ち上るパスタを口に運んだ。




  「恋愛事情-3-」へ続く


     < ↓ポチリとしてくださるとうれしいです↓ >

  br_decobanner_20100412095827.gif  にほんブログ村 小説ブログ BL小説へ
にほんブログ村





スポンサーサイト

タグ:続きを読む

コメント

コメントの投稿

非公開コメント