恋愛事情-1- 

2010, 10. 24 (Sun) 18:07


 オリジナル小説では、演歌のような、というか、オペラの終盤のような話が続いたので、ここいらで、ちょっと毛色の違うのを掘り出しました。

 『楽園』シリーズで、池山の幼馴染の保坂が主役の話です。
 女の子を書くのが実は好きだったりする…。
 時間の流れとしては『恋の呪文』の一年後くらいになります。
 
 私は98%下戸(煮物に利用したみりんや日本酒はOK)なので、OL時代の飲み会は苦手でしたが、同僚たちと休憩時間や仕事の空き時間に、けっこうきわどい話をして…楽しかったです(笑)。
 これが金融関係の仕事場だったらこうはいかなかったのでしょうけれど。
 
 実在のモデルは存在しませんが(あたりまえ(笑))、楽しんでいただければうれしいです。




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  現在は、『睦み月』で『シゲルとミケ』シリーズです。
  飲んだくれ猟師と化け猫の話。
  楽しんで頂けたら幸いです。

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 『恋愛事情-1-』


   ずっと甘い唇、昼も夜も。

   君がいれば、もう、そこは楽園さ。



 荒れている。
 大荒れだ。

 たとえて言うならば、冬の日本海で風がびゅうびゅうと吹きすさび、雪とあられが息をつく暇も与えないほどざらざら降りつけ、ごつごつごつとした岩肌を冷たい海水が砕けよといわんばかりにざっぱーんと荒々しく打ち付けているという、そんな荒涼とした風景を連想させるほど、目の前の女は荒れていた。

「だいたい、あんたときたらあんたときたら、人生おいしいとこばっかり食い散らかして、いいわよねぇ。なーんにも人さまに良いことをしていないのに、幸せばっかり舞い込んで・・・。こんな顔だけの男のどこがいいんだか・・・」
 ほんのりと赤く色づいたシャンパンの入った華奢なグラスを爪の先まで丹念に手入れの行き届いた白い指でつまみ、ゆるゆると優雅に回し振りながら、耳をふさぎたくなるような罵詈雑言で毒づいている。
 もしかしなくても、絡まれているのだろうか、これは。
「はいはい、俺がわるうございます・・・」
 既に小言の域に達している彼女の繰り言を右から左に聞き流しながら、ここでまぜっかえすと火に油を注ぐだけだとおざなりな返事を返した。
「気持ちがこもっていない・・・・」
「は?」
「和基の言葉には、いっつも、誠意がこれっぽっちもないのよ。うざったいから、とりあえずあやまっとこうって思っているでしょう」
 ・・・鋭い。
 この酔っ払い女はどう見ても血中のアルコール濃度が頂点に達しているように思えるが、重箱の隅を突っつくような眼力は落ちいていないらしい。
「そんなことないさ。有希子の言葉はいつもありがたく拝聴していますとも」
 幸か不幸か、それこそ幼稚園に通う頃からの幼なじみゆえに長年の付き合いの中でここまで乱れている姿を見たのは、初めてだ。
 なんせ、高校一年にして酒好きで名をはせている筈の和基の父を平然と飲み負かしているさまを目の当たりにした過去があるだけに、この酔っ払いっぷりは夢を見ているような気分にさせられる。
 雪のように白い肌にほんのりと赤味がさし、目元がいつもより少しとろりととろけている。
 とてつもなく色っぽくはあるが、いつになく酔いの回るのが早い理由に心当たりが無くもないので、欲を感じるより痛々しく、少しだけ愛しさが募り、艶やかな栗色の頭をなでてあげたくて手を伸ばすと、すばやくぱしんと払われる。
「・・・ほら、その態度。そういうところが馬鹿にしてるっていうの!!どうしてこんな男が良いのよ、生も江口くんも・・・!」
「有希子、頼むからテンションを下げてくれ・・・」
 いく、という名前はオンナだろうと既に聞き耳頭巾状態の店員たちは思っているにしても、次に続いた「えぐちくん」にはさぞかし驚いたことだろう。
 連れ添って仲良く店に入ったときは、この女の見た目の華やかさからきっと、なんて似合いのカップルだと店内の人々は思っただろうが、食と酒が進むにつれてだんだん険悪になってくる2人の会話に首を傾げつつも興味津々なのが、ちっとも酔えない和基の肌にじわじわと伝わってくる。
「せっかく、最高においしい料理とたっかい酒をふるまっているというのに・・・」
 もう、二度とここにはこれまいなと居心地と料理の良さでお気に入りだった店内をしみじみと見渡す。
 いや、所詮は酔っ払いのたわごとだと思ってくれるはずだと気を取り直して話題を変えてみることにした。
「そういや、お前、一流商社の男はどうしたんだよ。らぶらぶだって言ってたじゃん。こんなところでクダ巻いている場合じゃないだろ?」
「・・・別れたわよ。とっくに」
「そんな、だってお前・・・」
 言いかけてふと有希子のほんのり朱に染まった白い指先に目をやる。
 彼女の指には男から買ってもらったと自慢していたティファニーの可憐なリングではなく、以前香港で自ら大枚はたいて買ってと聞いたカルティエの骨太なリングが虚しく煌いていた。
 ・・・今夜はとてつもなく長くなりそうだ…。
 そう、理解して深々とため息をついた。




  「恋愛事情-2-」へ続く


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