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『よるがすぎて、あさがくる。』-4-(『よる。』シリーズ)→追記あり 

2018, 01. 30 (Tue) 09:06

 仕事前に取り急ぎ更新。
 紹介文は帰宅したら書きますね。
 あと一話で終了します。
 長い話ですが、お付き合いください。

 で。
 帰宅してから私がぜひともここに書きたかったこと。
 それは。
 『昼間体調回復を試みて和室のホットカーペットの上で横になる際、BL道場の師匠から借りた漫画と小説とBL雑誌を枕元に置いていたのをすっかり忘れて原稿と向き合い、そして夫が帰宅後すくにその部屋に入った』
 ことでしょうか。
 広げてなくて、積んでいたんですが…。
 その一番てっぺんに、ウノハナさんの『犬と欠け月』の二巻、そしてキャラセレクションの今月号の表紙があらわになっていました。
 ・・・・。
 どうなんでしょうね。
 彼はあれを見たのか。
 いやいやいや。
 キャラセレクションの今月号はぱっと見にわからない。
 たぶん。
 セーフだよね?
 セーフだと、誰か言ってくれ!!
 せめてもの救いは、ほかのBL小説の表紙があらわになっていなかったことかな…。
 何もコメントないのが怖いが、藪から蛇を出すことだけはすまい。

 そんなこんなでしたが、原稿はやります。
 とりあえず、このシリーズの見直しが済んだから、ようやく頭の中の整理が付きました。

 ではでは、また次話で。
 
 


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  現在は、『睦み月』で『シゲルとミケ』シリーズです。
  飲んだくれ猟師と化け猫の話。
  楽しんで頂けたら幸いです。

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『よるがすぎて、あさがくる。』-4-


 清水医師の指摘通り、通夜の弔問客はひばりたちが予想していたよりもはるかに多く、家族総出で対応しても追いつかない状況だった。
 祖母の茶道教室は大きな流派に属していたため、あっという間に急死の知らせが広まり、関係者が続々と詰めかけたのだ。
 母親たちと奈津美は挨拶したりお茶を配ったりと忙しく立ち回り、受付は吉央と将と直樹の三人でなんとかさばいた。
「うわ、すごい人。葉子さんってば、意外と人気者?」
 黒のパンツスーツ姿で長身の女性がホールに現れ、楽し気な声を上げた。
 よく見れば身に着けているのはありきたりなデザインのブラックフォーマルなのに着こなしと雰囲気は常人のそれではなく、すらりと手足の長い身体に小さな頭と絹糸のような黒くて長い髪、そして少し吊り上がり気味の大きな黒い瞳を輝かせた美しい姿に、弔問客たちは驚きざわめいた。
「つぐみ・・・」
 また、いちだんと綺麗になって・・・と、隣で直樹が親ばか丸出しに目を潤ませる。
「あ、つんちゃん、いいところに来た!こっち手伝って!」
 お盆を手にした奈津美が飛んできた。
「なっちゃん、おまたせ~」
「よかったー。スタッフの方も手伝ってくださっているけれど、とても回らなくて」
 二人は両手を握り合い、しばらく少女のように小さくとび跳ねた。
 奈津美が二つ年上だが、見た目で逆に思われることが多い。つぐみは子供の頃から両親の影響で背が高く大人びた顔立ちで常に年かさに見られる一方、奈津美は小柄でふんわりとした愛らしい少女だった。
 つぐみと将の母親が空手に生活の重心を置いていたこともあり、専業主婦の良子が大野家と本間家の子供たちの面倒をまとめて見ることが多く、彼らは姉妹と言うより友達のように過ごし、それは今も続いている。
「ところでなっちゃん。いま入口の前で国男おじさんに会ったよ。多分一緒にいたのって、本家の孝義おじさんだったと思う」
「・・・は?なんで本家が来ているの?面倒だからあえて連絡しなかったのに!」
 本家と言っても、こちらが枝に別れたのは曾祖父より前の時代で奈津美たちの家からは血のつながりがずいぶん遠い。
 しかも、家格が雲泥の差だ。
 江戸時代は家老職を務めた堂々たる家門に対し、こちらは庶民。
 それでも祖母は血筋に誇りを持ち、本家に季節の便りと贈り物をこまごまとしていたと聞く。
「なんかねえ。前にお母さんから聞いたことあったのよ。国男おじさんの就職って、孝義おじさんのコネだったって」
 ひばり経由の情報なら、それは間違いないということ。
 本家の孝義は、地元に根を張る大手企業で現在取締役を務めているはずだ。
 わざわざ連絡を取ったところに、国男の小賢しさがどうしても出てしまう。
「なーる。きな臭い匂いがしてきましたね」
「ですねー」
「仕事サボって女の子と遊んでたこと、上にばれたのかな」
 上背のあるつぐみが少し屈んで声を低める。
「沖縄に出張・・・だったらしいよ?そこはちらっと聞こえた」
「うっそだあ、それ」
「嘘でしょうねえ、どうみてもバカンスだよ。ばれたら首が飛ぶんじゃない?」
「だよねえ」
 二人は額を寄せ合いひそひそと情報交換しながら、仲良く首をかしげた。
「つぐみ、来たなら早く手伝って!」
 ひばりの声に娘たちはぱっと顔を引き締め、控室にむかって速足で歩きだす。
「吉央、将」
 人は入り乱れていたが、ちょうど受付の順番待ちが途絶えていた。
 あたりをさっと見渡して、直樹が息子たちの名を呼ぶ。
「はい?」
「ちょっとお前たち、休憩しておいで。もうここは僕一人で大丈夫だから」
「え・・・」
 通夜式まであと三十分。
 弔問客はまだまだ増えそうな気配だ。
「要領掴んだから、問題ないよ。つぐみも来たし」
「そうだね。じゃあ、そうさせてもらう」
 軽く将がうなずいて、吉央の手首を握る。
「え、ちょっ、おじさん、将・・・」
 吉央は戸惑いの声を上げたが、三人の前に新たな弔問客が現れ直樹は応対を始めた。そこで将は吉央の背中を押して受付を離れ、ホールの奥にある非常階段へ向かった。
 上の階へ行くとそこは小規模に作られた斎場らしく、人の気配がない。
 今日の葬儀と通夜は本間家のみと聞いていて、この階の休憩室は使ってよいともスタッフたちからいわれていた。
 そこには自動販売機があり、将がその中からオレンジジュースを選んで吉央に渡す。
 黙って受け取ったものの、じっとはしていられなかった。
「将、やっぱり、戻らないと・・・」
 吉央は亡くなった葉子の実の孫で、喪主の息子だ。
「吉央」
「・・・なに?」
「ばあさんの法要、お前どうしても出たいか?」
「え?」
「俺は出なくてもいいと思ってる。あいつがいるなら辛いだろ。なっちゃんは端っこの席に座るらしいけど、お前、それも無理じゃないか?」
 実の娘が喪主の近くにいないなんて、弔問客は奇異の目で見るかもしれない。
 それでも、奈津美も国男の近くにはいられないのだ。
 いつも元気の塊で、普段は気丈に振る舞う奈津美ですら。
「・・・姉ちゃん、出るんだ」
「うん。一応な。それがせいいっぱいって言ってた」
「・・・なら・・・」
 両の手の中でペットボトルを転がしながら言葉を探した。
「俺も出る。これでも一応、血はつながっているから」
「・・・なっちゃんと同じこと言うんだな」
「・・・そうなんだ」
 将は奈津美ととても仲が良い。
 もしかしたら、実の姉のつぐみより親しいかもしれない。
 ときどき奈津美の前の将は、まるでちいさな弟みたいになることがある。
 それに比べて自分は、奈津美とは、一時期微妙な関係だった。
 いや違う。
 生まれた時から微妙な関係で、それが今も尾を引いている。
「ちがう・・・」
 吉央は小さく頭を振った。

 自分が、奈津美に謝れないだけ。
 素直になれないだけなんだ。

 俯いて、足元を見る。
 母が手入れをしてくれているおかげでいつもきれいな、黒いローファーのつま先。
「どうして・・・」
 
 どうして自分はこうなんだろう。

「・・・吉央?」
「あの・・・あのさ」
 自分には、今は、これがせいいっぱいで。
「そばに・・・いてくれる?」
 どうしても言葉が出てこない。
「ああ」
 将がうなずく。
「ずっと、そばにいるよ」
 手の中のペットボトルの温度を、ようやく感じた。

 通夜式は、いろいろ予想していたよりはるかにあっさりと終った。
 理由の一つは、会場の広さに対して弔問客が多過ぎたことだ。
 用意した席が足りないのを理由に、清水医師が親族側の末席に座る吉央の右隣に陣取った。
「僕の家ね。実は君と根っこが一緒なんだよ」
 しかも彼の方が本家に近い筋なのだそうだ。
「孝義さんが親戚としていらしてるなら、僕もそういうことで」
 ちょっと悪戯を楽しんでいるかのようなおどけた表情に、吉央の頬もつられて少し緩む。

 しかし吉央の危惧した通り、法要の始まる直前に少し騒ぎはあった。
 良子の続きの席に奈津美と吉央が座らないことに気付いた国男は、苛立ちをあらわにして椅子からいきなり立ち上がった。
 世間体を思い、喪主側へ連れ戻そうとするのだろう。
 すぐに良子が腕をとって制止したが乱暴に振り払い、吉央に向かって進もうとした。
 距離にして二十メートル余り。
 歩いても大した距離じゃない。
 捕まる。
 捕まって、また・・・。
 考えただけで吉央の全身がこわばり、声も上げられなかった。
 口から熱いものがこみあげてきて、吐きそうだ。
 将が手を握って何か言ってくれたけれど、解らない。
 ただ、目を開いて次に起こることを見ていた。
 国男がたいして進まないうちにひばりたち夫婦と清水医師が立ちふさがり、口論が始まる。
 いくら声を低めていても喪主が親族と揉め始めたのだ。弔問客たちも何事かと注目する。
 そこへ何故かつぐみが割って入り国男の腕を取りなにごとか短く耳元に囁く。
 つぐみの言葉は、国男を一瞬で正気に戻らせるような強い切り札を持っていたらしい。
 国男は姿勢を正し、視線をぐるりと巡らせた。
 その先にはスーツ姿に黒の腕章をつけた男が多く、彼の仕事関係の人間も多く駆けつけていたのを認めた途端に、何事もなかったような顔をして喪主の席へと戻った。
 そんなに世間体が大事なら、なぜ。
 胸の奥に渦巻く重いものがつかえたまま、とれない。
 しかし騒ぎのさなかに盾になっていてくれた清水が国男のもとへ行き、少し会話を交わした後つかつかと戻ってくると、にこりと笑った。
「俺も釘を挿しといたから。ものすごく太いのを」
 呪縛がようやく、解けた。

 あとは、葬儀社のアナウンスに沿って滞りなく進んだ。
 焼香するときは将と清水が挟み込むように祭壇まで付き添ってくれたので、国男の前を通る時もなんとかやり過ごせた。
 いつもいつも、みんなで自分を守ってくれた。
 母も、ひばりも、直樹も、つぐみも、将も、清水も、そして奈津美も。
「・・・ありがとうございます」
 やっと、言えた。

 
     -つづく-

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