『よるがすぎて、あさがくる。』-2-(『よる。』シリーズ) 

2018, 01. 27 (Sat) 17:52

 はい。
 本日二度目の更新です。
 というか、夜中に一話目上げて、二話目を夕方につなぎました。
 サクサク行きましょう、さくさく…。
 いつものごとく、なろうとpixivは掲載済みです。

 実は昨日、起床してすぐに今日こそは魚を買うぞと思い立ったのですが、やっぱり腹の虫には勝てずにふらーと通り道のファミレスに入りホットケーキとコーヒーを注文しました。
 いやもうね。
 職場で同僚の中にインフルが出たりその他アクシデントに見舞われ、打たれ弱い私がただ単に昼近くまで惰眠をむさぼったためにスタートが遅れただけです…。
 周囲はとっくにランチタイムになっていましたよ…。
 人としてだめだと思いつつ、免疫力の弱いこの老体には睡眠以外の対処療法はない…。
 と、言い訳をば。
 とにかく、人としての遅れを取り戻すべく、昨年の春庭で出した『よるがすぎて、あさがくる。』をざっと最初から読み直し、いろいろ確認しなおしをしました。
 その場の勢いでがーっと書くので、けっこう後でスピンオフを書くと時系列にほころびが出る私のもろい設定…。
 次回の暗黒物語を書くにあたり、いろいろ叩きなおしました。
 そして、ふと、一年近く経つならそろそろ公開を…と思った次第(まあ、これは前回のブログにも書きましたね・・・)。
 なぜか、ファミレスや喫茶店のほうが己の文章を冷静にみられるのはなぜでしょうね。
 そして、集中できるのはなぜかしら。
 ほんっとうにはかどるんですよ。
 自宅にいる時よりも。
 おそらく「ちょっと作家っぽいことやっている俺」と、ちょっと脳内プラシーボがかかっているのかと思われ(爆笑)。

 とりあえず、魚も入手して満足です。
 千葉の鰯は今、めちゃくちゃ脂がのってますねー。
 梅干しとショウガで煮ましたよ。
 昔は嫌いだったんだけどな、鰯。
 単に骨があるのが面倒くさかったのでしょうね。

 ではでは、続きは月曜日あたりに。
 来週中にこのシリーズをすべてupします。
 お楽しみに。


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  飲んだくれ猟師と化け猫の話。
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『よるがすぎて、あさがくる。』-2-


 吉央と将が居間へ行くと、そこは大騒ぎになっていた。
「葬式なんて久しぶり~。喪服、入るかなあ。あと、将たちどうしよう?」
「学生服で大丈夫でしょう」
「あ、そうか」
 テーブルの上には、葬儀社の書類、通帳、そして冠婚葬祭の本が広げられていて、母親たちはそれをめくりながら、メモ帳にどんどん必要なことを書き込んでいき、父はどこかへ電話をかけて交渉中だった。
「良子さん、葬儀のお金は?」
「とりあえずお義母さんの箪笥預金がかなりまとまった額見つかったから大丈夫。それにどうやら、もうずいぶん前から葬儀屋さんで積み立てしていたみたいで数年前に払い終えています。今から出さないといけない金額は意外と少ないかもしれないわ。詳しくは尋ねてみないと解らないけれど」
「そういう所だけはしっかりしているのよね、伯母さん」
「たすかります」
「まあ、そうね」
 ふふっと、二人は顔を見合わせて笑う。
「で、奈津美ちゃんは昼ごはん時には来るでしょ。そしたら人手が増えるから一気に楽になるね。まずは葬儀屋に・・・」
「ひばりちゃん、葬儀屋さんは話が付いたよ。会場と部屋は空いているし、焼き場の問い合わせもしますって。で、車の用意ができ次第すぐに伺うってことだけど、もろもろで一時間以上あとになるそうだよ」
「ありがとう、さすがは私の旦那さん」
 ひばりの賛辞に、直樹は照れて頭をかく。
「いけない、朝ごはん。みんな食べ損なっちゃって、どうしましょう・・・」
 将たちに気付いた良子が慌てて立ち上がり、台所へ駆け込んだ。
「そういや私らすっぴんだよ、良子さん!」
「あ・・・。清水先生にひどい顔を見せてしまったわ」
 女たちの悲鳴に、ひばりの夫がフォローする。
「大丈夫。二人とも化粧なんかしない方が素敵だよ」
「あら、ごちそうさま」
「もー直樹君たら、やめてよ~。良子さんも将たちもいるのにー」
 どっと、三人が笑った。
「ある意味、シュールだな・・・。いや、こういうもんなのか・・・」
 西の、奥の奥の部屋には祖母の遺体。
 だけど、朝日のあたる東側の、この台所では笑いにあふれていて。
「うん・・・。でも、俺はこっちのほうがいい」
 誰も、祖母のことを心から憎んでいて、亡くなったことを喜んでいるわけではない。
 長い年月を共にしたのだから、悼む気持ちはある。
 だけど、現実として送り出すためにやらねばならないことが山積みで、それを一つ一つ片付けねばならない。
 空元気じゃなくて。
 全力で物事に立ち向かい、そんなさなかに笑いあえる大人たちの強さに、吉央は息をほっとついた。
「大人って、すごいね・・・」
「ああ・・・。そうだな」

 結局、一時間近く経っても国男から家族への連絡はないままだった。
 そして慌ただしく朝食を終えたのをまるで見ていたかのようなタイミングで、葬儀会社の職員たちが三人やってきた。
「このたびは・・・」と型通りの挨拶を終えるとすぐに、大人たちの現実的な打ち合わせが始まる。
「自宅ではなく、葬儀場での安置で間違いございませんね?」
「はい」
「どなたか付き添われますか?」
 一瞬、応対するひばりの視線がちらりと背後へ移った時、吉央は思わず身を固くした。
「いいえ・・・。家族はこれから手分けして色々することがあるので」
「わかりました。では、こちらでお預かりします」
 そのうちの二人がてきぱきとストレッチャーに祖母を乗せ、大きな車はあっという間に去っていく。
 台所で食卓の片付けとお茶の支度を仰せつかった子供たちは、手を動かしながらも居間から漏れ聞こえる会話に耳をそばだてた。
 一人残った職員は改めて挨拶をした後、日程と斎場の空き状況や祖母が申し込んでいた内容の説明をしたあと、今日は通夜で明日は本葬と言う結論に至り、「それで、お寺さんのご予定は…?」と尋ねられ、直樹が突然立ち上がる。
「あ!まだです、まだでした!」
 慌てて家を飛び出しかねない彼の腕を即座にひばりが片手でつかみ、
「直樹くん、電話、電話があるって」
と、引き戻す。
「あ、そうか。すぐそこだから直接行こうとしたよ・・・」
「それでも良いかもしれないけど、桜花社さんにも話に加わってもらわないとね」
「そうだねえ。なんだか、気が動転しちゃって」
 直樹は鼻の頭をちょっとかいて、携帯電話を操作した。
 そして、運よく数コールで出てくれた寺の住職に事情を説明して話を詰め始める。
「昼から法要が一つ入っているだけだから、5時に通夜のお経あげに来てくれるって。後、明日の葬儀なんだけど・・・」
「焼き場の予約が今なら十三時半に取れますが、どうでしょう?」
「そうできるのでしたら・・・」
 大人たちは、互いに視線を交わし合いながら自信のない様子で答えた。
「では、十一時から葬儀・告別式で出棺、火葬・・・。初七日はどうされますか?」
「同じ日にお願いします」
 猛烈な勢いでメモを取りながら、ひばりは即答する。
「そうですね。今どきはそうされる方も多いです。では五時半くらいに初七日の法要をいたしましょう。お寺さんにもそのようにおっしゃって下さい」
「は、ははい」
 直樹は葬儀社の言ったことを必死で復唱した。
「あのう・・・」
 らしくなく、目をさまよわせながらひばりが口を開く。
「何でしょう」
「お寺さんへの・・・。お布施とかはいかほど用意したら・・・」
「そうですね。お寺は光明寺でしたね。あちらなら、たいていのお家は三十万円から用意されています」
「え、三十万・・・から?」
「はい。これはあくまでも心づけですから、お包みする金額もお客様のお気持ち次第ということになります。あとはそれに戒名代とか、お車代、おときをご一緒されないなら御膳代・・・」
 柔和な表情を保ったままのスーツ姿の男は、まるでレコーダーのスイッチを入れて再生しているかのようにさらさらと語った。
「ちょっ、ちょっと待ってください。メモに取らせてください」
「はい。ではよろしいですか?」
「ええと、それと、そのお金をお渡しするときは・・・」
「それはですね・・・」
 そうこうしているうちに、だんだん大人たちは葬儀会社の社員に人形のように操られ始めた。
「では、これからのご予定とそれに伴うことでお客様に決めていただかねばならない事項を流れに沿って色々ご相談させていただきます。まずは、料金内のセットがこれで・・・」
「はい・・・」
吉央から見ると、ひばりは子供の頃から空手で活躍しており町内で評判の猛者であるし、父の直樹は勤め先でいつも好成績を収め褒賞金を何度も貰うくらいの敏腕ぶりを発揮、母の良子は前時代的な本間家の中にいていつも物静かで我慢強く、三人とも些細なことに動じない人間だと思っていた。
だがしかし、葬儀社の社員は一枚も二枚も上手だった。
「そうですねえ。皆様の故人様への想い次第でしょうか・・・」と言う言葉で撹乱し、葉子の申し込んだ基本プランからちびりちびりとグレードアップした仕様へと変更させていく。
 写真たてという些細なものから始まり祭壇を飾る花の数、そして料理のコースや人数、たかだか二日間のことなのに、あっという間にオプションが積みあがっていき、最後に彼がノートパソコンに入力して紙に印刷して渡されたのを三人がのぞき込んだ瞬間、口から魂の一つや二つ、抜けていったのを見たような気がした。
「え・・・、これって」
「はい。この一番上の金額が正式なもので、これに会員様割引をかけたのが一番下の金額になります。生前の葉子様にとはわが社も懇意にしておりましたので多めに割引していますが、どうかよそにさまにはご内密におねがいします」
 これでもこちらはかなり割り引きましたと、さもしんせつ善良そうな笑顔で返されて、なんと大人三人は一言の反論もしなかった。
「では、ここにご署名をお願いします。それと、前金として少し頂きたいのですが・・・」
「はあ・・・」
 恐ろしいことにそのまま素直に直樹が契約書にサインして、契約金も手渡した。
「スケジュールはこちらの通りになりますのでよろしくお願いいたします。では、わたくしは先に会場の方に戻り準備を進めてまいります。何かありましたら事務所の方へ連絡くださいませ」
 颯爽と去っていく葬儀会社の車を見送った三人は、居間へ戻るなりそれぞれソファーにぐったりと座り込んだ。
「・・・将、お茶。いや、コーヒーがいいわ」
「うん」
「・・・あ。将君、私がやるわ・・・」
「いや、良子おばさんは座ってて。俺もコーヒーくらい淹れられる」
 立ち上がろうとする良子の方を軽くおさえて、将は座らせる。
 吉央は台所へ戻り、やかんに水を入れてコンロにかけた。
「・・・納棺師ってさあ、例のあれでしょ…。ちょっと前の映画に出てた・・・」
「そうねえ・・・」
「二人呼んでじゅうごまんかあ。いや、元値は十八万?気が付いたら了承していたよねえ」
「そうだねえ・・・」
「なんか、あれよあれよという間に持っていかれたよね…。いやもう、葬式は二百万を覚悟しとけって、ママ友から聞いたことあったからわかっちゃいたんだけどさあ」
「そうねえ・・・」
 ひばりの言葉に、良子と直樹が気のない相槌を交互に返す。
「いやあ、すっかりやられたわあ」
 ごとっ、と何かが落ちる音がしたので吉央が振り返ると、コーヒーの豆を入れた缶を取り落とした将が床にしゃがみ込んで肩を震わせていた。
「将・・・だいじょう・・・」
 慌てて駆け寄ると、なんと将は声を殺して笑っていた。
「たすく?」
「いや・・・。おふくろにあそこまで言わせるとは、ほんと・・・」
「うん?」
「世の中って、まだまだ色々な事があるんだな」
「・・・うん」
 この狭い家の中で、たった数時間の間に色々あって。
 だけど、世界は広がる。

   
     -つづく-

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