『しらゆき。』-2-(『よる。』シリーズ) 

2018, 01. 10 (Wed) 20:19

 こんばんは。
 さむいですね。
 帰宅して炊飯器にスイッチ入れて、ガタガタ震えながらキーボード叩いています。
 手首から先が寒い…。
 インナーは、本日職場で大活躍した超・gokudanを着用したままだから何とか耐えられる。
 体調維持を金で何とかするお年頃ですよ…。
 雪が前日の予報からずれて大して降らなかったのは良いけど、マイナス何十度が上空を漂っているらしいのは体で感じますよ…。
 さむい。

 ところで、ずいぶん前に・・・って、今確認したらなんと昨年のお盆のころに掲載した『しらゆき』の続きをようやく上げます。

 前回の記事はこちら。→ 『しらゆき。-1-』

 枕の部分が暑いとか書いている…。
 どれだけ放置していたのか思い知って反省する鏡開きの日。
 今日はもう一件反省することがあって、友人に反省文送った。
 ほんとごめんねポンコツな脳みそで。こんな私だけど、捨てないでくださいお願い。←本気です

 暗いネタ満載の夜シリーズですが、そして、ほんの数場面で終わる予定だった『しらゆき』ですが、まだまだ続きます。
 登場人物は、将、将の母・ひばり、将の姉・つぐみ、(後で気が付いたけど、双子みたいな名前の母娘だな・・・)、吉央、吉央の母の良子の四人。
 今回こそそれ以上出さないつもりだったのに、エピソード的に会話の中に人がどんどん出ている…。ごめんなさい。
 がやがや話ながら、あと三回くらい続く予定。
 どうかお付き合いくださいね。

 明日はそろそろJ庭の原稿にかかります…。
 印刷の早割りが目標・・・だから。
 犬飼だけに、戌年の今年こそ生まれ変わるのだ。わんわん。

 



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『しらゆき。』-2-


 片付けた食卓の上に色々な茶菓子が広げられた。
 つぐみの香港土産、奈津美の手作りの菓子類、そして申し訳程度に将の東京土産も鎮座している。
「・・・ドーナツでビール飲むの、姉ちゃん」
 つぐみの左手にはビール。そして彼女の前の皿の上には、昨日将が奈津美からもらってきたドーナツとスティック菓子が盛られていた。
「うん。意外とイケるんだよ。というか、単にどっちも口に入れたいだけなんだけど」
 そして、本当に豪快にどんどん口に放り込む。
「ああー。うまいわ。やっばりなっちゃんの作った物ってソウルフードなんだよね」
「ソウルフード?」
 母の問いに、つぐみは話を続けた。
「うん。良子さんが毎日作ってくれた御飯ももちろん、私たちの大切な思い出だし感謝してる。でも運命共同体ならではっていうのかな。あのくそばばあさまに押し付けられた淑女教育からこっそり隠れて食べるお菓子は格別だったから」
 あのくそばばあさま、とは、昨年急逝した奈津美たちの祖母の葉子のことだ。
 隣接した住居であった上に、母のひばりが空手道場の仕事で多忙だったこともあり、つぐみと将は奈津美たちと同じく良子に育てられ、かつ、姑である葉子の管理下にあった。
 男だった将と吉央には比較的甘かったが、奈津美とつぐみに対する女子教育は徹底していて、茶道、華道、書道、日舞、箏曲、ピアノ、バレエなどと花嫁修業めいたものを幼い頃からぎっしり詰め込まれた日々を送っていた。
「本人、ぜんっぜん淑女じゃないのに、なんだろうね、あれは」
「あはは~。略奪婚して、ポイ捨てして、孤独死させるってなかなかないよね。あんたそのうち脚本にしたら?」
「・・・略奪婚?」
「孤独死?」
 吉央と良子が同時に首を傾げ、そんな仕草の同調性はさすが親子だなと将が感心する横で、つぐみが驚きの声を上げる。
「え?もしかして、今まで良子さんもよっちゃんも知らなかったの?くそばばあ様のジェットコースター恋愛」
 ジェットコースター。
 言いえて妙だと心の中で将はうなずく。
「・・・はい?」
 良子は茫然自失の状態なので、吉央がつぐみに問うた。
「俺たちには何のことなのかさっぱりわからないよ、つんちゃん」
 同居していた彼らには知らないことは多々あっただろう。
 なぜなら、葉子は支配者として抑圧し続けていたのだから。
「あのね。国男おじさんの父親に当たる人はね。とても美男子だったというのは覚えているよね?」
「ええと、美男子・・・?」
 吉央は思わず眉間にしわを寄せる。
 遺品を整理した時に、押し入れの天袋の奥から古いアルバムが出てきた。
 大事にしていたというより、奥にいれた押し込んだきり忘れていたという風体の包み。
 開いてみると白黒の写真の中に、若かりし頃の祖母の姿であふれていた。
 そして内容は豪勢な結婚式の様子と、赤ん坊だった国男を囲んで写真館で写したものなどで、どこか線の細い男性が彼女の傍に立ち、顔立ちはそれを見た家族全員が驚くほどに吉央に似ていた。
 あれを美男子と言われても、似ていると散々冷やかされたこちらとしてなんとも返事のしようがない。
「すぐそこの郵便局員だったんだけどね。着任してすぐに葉子様が一目惚れなさいましてね。使える限りの手を使って入り婿にしたのよ」
「ちょっと待って、なにそれ?」
 吉央が驚きの声を上げると、向かいにいた将が深々と頷いた。
「本当は学生時代からの彼女がいて、数年働いてお金がたまったら結婚しようと約束までしていたのにね。その子を追っ払って、彼の実家に金を積んで、相当汚い手を使ったみたい」
「まあ・・・」
 人の好い良子は両手を頬にあてて、まだぼんやりしている。
「だけどね。盛大なお式を挙げて、すぐに国男を生んで、またお祝い事を盛大にやって、しばらくしたら、飽きちゃったのよ。綺麗なお婿さんに」
 女学校の友人たちは、裕福な年上の男たちと結婚し、悠々自適の生活をしている。
 だけど貧しい家庭の出の上に学はなく突出した能力もなく、仕事は平々凡々。取柄と言えば優しい気性と整った顔だけの男と暮らしていることに物足りなさを感じ、嫌気がさすのはあっという間だった。
「まあ・・・そんな・・・」
 良子と吉央は目を見開いたきりだ。
「だから、何のかんの勝手な理由をつけて追い出しちゃった。裸同然の状態で」
 その頃から葉子は習い事関係で知り合いだった宗匠たちと次々と不倫を楽しみ始めていた。彼らの狡猾な入れ知恵も多少あったかもしれない。
 粗末なアパートで雨露をしのぐ程度の生活を強いられた男は、冬のある日風邪をこじらせあっけなく息を引き取り、布団の中でとうに冷たくなっているのを同僚に発見された。
 籍を抜いていなかったため、葉子は表向き乳飲み子を抱えた気の毒な未亡人を装い、意外なことに世間はそれを素直に信じた。時が味方したのか、葉子の人脈が功を奏したのか、今となってはわからない。
「そういえば、お祖父さんの法事って記憶がないな。どうなってるの?」
 一年前に祖母が亡くなった時、近所の寺に代々の墓があるためそこに納骨をした。
 だけど、祖父らしき人の名前が刻まれていなかったのではないかということに今更思いいたる。
「そう。実はこっちにないのよ。そのおじさんのお骨」
 吉央の考えを読んだかのように、野菜のチップをかみ砕きながらひばりが答えた。
「葬儀の時にね。来たらしいのよねえ。おじさんの元婚約者が」
 もっとも、その時はひばり自身生まれていないので葉子の妹にあたる彼女の母からのちに聞いた話だ。
 それによると、両家にとって外聞の悪いことなので密葬に近い形で済まそうとしたが、故人の同僚と友人たちが思ってもみない数で訪れたらしい。
 彼は、物静かでただただ優しいばかりの人だったけれど。
 けっして孤独だったわけではない。
 行く末を案じている人はたくさんいたのだ。
 その中に、元婚約者だった女性の姿もあった。
 きちんと身なりを整え静かなたたずまいの元婚約者の弔問に、さすがの葉子も度肝を抜かれたという。
 そして実家の家族はもとより、本間家の墓にも入れるつもりはさらさらないことを察したその女性が骨壺を引き取り、あとはわからない。
 すべては、なかったことにされた。
 一人の男を死なせた事実から目を背けるために。
「吉央にとってはお祖父さんだものね。これだけ聞かされたら色々考えちゃうわよね。関係者の生き残りはまだたくさんいるみたいだから、知りたくなったらいつでも言ってちょうだい。連絡を取るから」
 ひばりをはじめ大野家の人々はずいぶん前から祖父のことを伝えたいと思っていたが、なかなかきっかけがつかめなかったという。
 もし祖母が今も生きていたなら、あの写真を見る機会はないままだったかもしれない。
 そして祖父について知るのはずっと先だっただろう。
「うん・・・」
 自分でも不思議だ。
 どうして、祖父の不在を疑問に思わないでいたのだろう。
 将には大野家の祖父が今も健在で、何度か会ったこともあるし、幼いころは一緒に旅行など連れて行ってもらった。
 もしかしたら、尋ねたことはあるかもしれない。
 そして、二度と口にしてはならないと身体で覚えたのだ。
 きっと、その時に。




                 -つづく-

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