『ひかりのくに』(YOI二次創作) 

2017, 10. 12 (Thu) 23:52

 またもや間が空いてしまいました。
 何をしていたかなーと思ったら、仕事とか4DX強化週間だったことでしょうか。
 ちょっと生存報告的に、完成してから掲載するつもりだったユーリオンアイスの二次を載せることにしました。
 未完ですみません。
 来週、ビシッと〆ます。ビシッと!!

 4DXのことはまた後日語るとして。
 三週間連続で観ていたら、急に書いてみようかなという気になりまして。
 正直なところ、YOIに関しては多くの人が素敵な作品をどんどん出されているので、何も私が書かなくてもいいかなーと思っていたのですよね。
 これだけあるなら、もしかしたら同じことを考えられた人がすでに二次創作として出されている可能性もあるし、とか己に言い訳をして(笑)。
 でも、一緒に観に行った子といろいろ話しているうちに私なりの二人を書きたくなりました。
 そんなわけで。 
 九月に唐津へ行ったときの光景を思い出しつつ、書きました。

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 あの時は、純粋な気持ちでお泊りを楽しんでいたのですけどね。
 使わねーぞって思っていたんだけど。
 書いちゃった。てへ。
 とても綺麗な景色だったのを、反芻しつつ。
 この浜辺を二人が歩いたならば、という想定で(笑)。

 アニメを最初から最後まで見て。
 そして、サントラを聞きながら、私はユーリでは綺麗なところだけを集めたいと思いました。
 勇利のFSの曲のような、きらきらした、光だけの話。
 そんなわけで、ひかりのくに。
 単純な題名ですみません(笑)。

 前半が勇利視点、後半がヴィクトル視点。
 そして来週掲載予定の続きは一夜明けての話。
 
 二次の世界でふらふらしてばかりですが、こちらの方も楽しんでいただけると嬉しいです。


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  現在は、『睦み月』で『シゲルとミケ』シリーズです。
  飲んだくれ猟師と化け猫の話。
  楽しんで頂けたら幸いです。

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  『ひかりのくに』



 いつだって、彼は僕を驚かせる天才だ。


「明日、『オトマリ』しようよ」
 ヴィクトルがいきなり言い出したのは、夕飯時のこと。
「え・・・でも」

 ヴィクトルが突然やってきた桜の季節からあっという間に秋になって、もうすぐ競技シーズンに突入する。
 ヴィクトルが振付を考えてくれた最高のプログラムたち。
 自分の長所と短所を十分に吟味して可能な限り得点を取られるよう作られたうえに、更にその上のステージに上がることを念頭に入れ、一分の隙も無い構成になっている。
 ところが肝心かなめの自分は、身体が全くついて行かず完成からは程遠い状態だ。
 せっかく、ヴィクトルが選手としての生活を休止してまで取り組んでくれているのに、申し訳ない気持ちでいっぱいになる。
 彼から学ぶべきことはまだまだたくさんあって、時間がどんなにあっても足りないと焦りを感じていた。
 それなのに、ヴィクトルは一泊二日の休暇を取るべきだと主張した。
「何事にもメリハリは必要だよ」
 こともなげに笑う彼を、茫然と見つめるしかなかった。

 それは、あなたが天才だから。
 だけど僕は凡人で。
 思うこと、言いたいことはいっぱいあるのに、言葉が見つからない。

「よかね~。どこいくと?」
 配膳してくれていた母の呑気な声に、頭の中で渦巻いていたものが四散する。
「うん。実は商工会の人たちに貰っていたものがあってね」
 うきうきとした声で取り出したのは、チケットのようなものだった。
「んー?長谷津キャッスル・シーホテル?すぐそこじゃん!!」
 ビール瓶を抱えてやってきた姉が上から覗きこみ、呆れた声を上げた。
 そこは、勇利たちの住まいから海沿いに歩いて長谷津リンクへ向かう途中にある、地元民には馴染みの深い老舗ホテルだった。
「なぜ、そこ・・・」
 スタッフはもちろん地元の人ばかりで、中にはご近所さんや親戚がパートで入っていたりもするので、ここにいるのとたいして変わらない。
 というか、逆にみんなから興味津々の目で見られて、気が休まるどころじゃないと思う。
「うん。なんかね。俺のおかげで経済効果うなぎのぼりだから、お礼だって。スペシャルな部屋を用意するからいつでも言ってくださいねって言われたんだ」
 確かに、ヴィクトルがこの町にいると言うだけで、随分と活気に満ちてきたように思う。
 そもそも地元民相手にのんびり商っていた実家も、ヴィクトル目当ての女性客で昼間はてんてこ舞いの状態が続いていて、先日とうとうパートの数を増やしたくらいだ。
「よかね、よかね~。うちらも結婚式と法事くらいでしか、あそこにはいったことはなかよ。泊まったことなんてなかばいね~」
「たしかにねえ。スイートとかあるのは知ってっけど、縁がないからね、うちらは」
「そりゃ、長谷津で一番の高級ホテルやけん!!」
 僕を置き去りにしたまま、なぜか家族が盛り上がりまくっている。
「だよねえ」
 ヴィクトルは焼酎を飲みながら満足げにうなずいた。
「俺も最近知ったけど、このホテルってマイヨールが定宿にしてたらしいね」
「ああ、フランスの人ね!昔は時々いらしとったけんね、ほかの旅館も泊まっとらしたよ。そりゃあもうかっこよか人やった。ヴィっちゃんと同じくらいになあ」
 二人の会話を眺めつつ漬物をかじっていると、いきなりヴィクトルが振り向いて上目遣いにのぞき込んできた。
「そんな素敵なところがあるなんて俺知らなかった。泊まってみたいなあ。勇利」
「うちにいるのとたいして変わらないよ。従業員みんな地元民だし」
 それより練習を…と言いかけたのを、明るく光る青い瞳に制される。
「そんなことない。全然違う。ちょっとシチュエーション変えただけで、気分も随分変わるよ」
「お、オフシーズンだから、プールももう使えないし・・・」
 ご近所のホテルに泊まるために一日が潰れるなんて、絶対嫌だった。
 なんとか説得を試みようとするが、ヴィクトルも両親も笑うばかりでてんで相手にされない。
「プールに入んなくても、目の前の砂浜がほぼプライベートビーチじゃん」
 姉がずさっと横槍を入れる。
「グダクダ言ってないで、腹をくくりな。コーチが休みたいって言ってんだから、休みだろ」
 要するに、僕の味方は誰もいなかった。
「・・・はい。わかりました」
 しぶしぶ頷くと、家族だけでなく、聞き耳を立てていた常連客達がわっと沸いた。
「はいはい、きまり~」
 ぱちぱちとやる気のない拍手を送る姉に、大喜びのヴィクトルが歓声をあげながら飛びついて頬に音を立ててキスをする。
 だけど姉は慣れた様子で、「はいはい、どういたしまして」とまるで興奮気味のマッカチンを押しのけるように平然と引きはがした。
「ええと、ええと!!こういうのって『プチイエデ』って言うの?それとも『カケオチ』?」
 ヴィクトルは、何か楽しいことを見つけて興奮している時、ちょっと声が高くなる。
「どっちも微妙だね。もう、デートでいいんじゃない?」
「デート?いいねえ!!」

 目をきらきらと輝かせて全力ではしゃぐヴィクトルを見て、「ああ、もういいや」と観念した。

 一日や二日くらいくれてやる。



「潮の力って、すごいねえ」
 数歩歩いて、その光景にため息が出た。
 結局今日は午前中にスケート協会がらみの軽い仕事が入り、ようやく解放されてチェックインできたのがつい一時間前のこと。
 もう空は夕暮れに向かって光を閉じようとしている。
 そして、海もまた。
 ホテルの前の砂浜は制限しているわけでもないのに人影がほとんどなく、真利がプライベートビーチと言っていたのもうなずける。
 長谷津の気候は温暖で、九月に入っても昼間は三十度を超える日も珍しくない。
 それなのに、海で泳ごうとするひとは一人もいなかった。
 オフシーズンだからと言う言葉では片付けられないほどの静けさ。
 海沿いに繋がる勇利の家に近いエリアは地元の人々が気軽に海を楽しんでいた。
 いつの時でも散歩したりトレーニングをしたり、時にはマリンスポーツを楽しむ姿も見られると言うのに。
「神秘だ」
 勇利の手を引いてぐいぐいと海に向かって進む。
「ヴィクトル。波打ち際まで行きたいなら、靴を脱いでいかないと駄目だよ」
「えー?だって今からもっと引いていくんだろう?大丈夫だよ」
 靴を脱ぐ間も待てない。
 引き潮に波は沖へと引っ張られ、十数メートルはあるかと思うような広い濡れた砂浜が露わになる。
 例えるならば、雨上がりのグランドのような広い空間に薄い水鏡が施されたような。
 そして薄雲に隠されてしまった太陽からの儚い光が、優しく地上を照らし、自然の水鏡を輝かせていた。
 夕焼けは望めないけれど、空も、砂浜も、そして海も。
 全てがうっすらと桜色に染まっている。
 言葉に表し難い、奇跡の光景が湾に沿って東西に長く伸びていた。
 なんて、綺麗なんだろう。
 勇利が何かを言っているけれど、波の音にかき消されてしまった。
 でも、手の中に、熱くてちょっと汗ばんだ彼の指を感じる。
 勇利が、ここにいる。
 胸の奥に沸き上がる、むずがゆいこの感覚は何なのだろう。
 少し涼しくなった海風に息をつく。
「ヴィクトル」
 名前を呼ばれるだけで、彼の柔らかな声が身体の中を駆け巡って。
「なんか、気持ちいいね」
 湿り気を帯びた砂浜からさらにその先へ足を踏み入れると、波が刻んだ細かなひだが面白い模様になって広がっていた。
 穴から出て来てせっせと砂玉を運び出していたカニたちがいっせいに逃げていく。
 そして、水鏡の地平線。
「ヴィクトル、靴を脱いで」
 手を引っ張られてふと足元を見た。
「あれ?」
「・・・もう。だから、引きたての砂浜は水分がまだ残っているんだって」
 足がずぶすぶと砂の中にめり込んでいく。
 そして、沸き上がる海水。
「わ・・・っ」
 慌てて足を上げて別の場所へ移ってみるけれど、瞬く間にまた足が沈んでいく。
 大した深さではないけれど、このままでは靴が濡れてしまう。
「ああもう、だから言ったのに。今ここで脱いで」
「あれれ。勇利、君の靴は?」
「脱いだ。途中で」
 勇利はとっくに裸足になっていた。
 露わになった痣と傷だらけの足。
 彼の、勲章。
「ほら。とりあえず、砂浜に置いてくるから」
 屈んだ勇利に軽く足首を叩かれ、脱ぐことを促されたので素直に従った。
「すぐに、帰ってきてよ?走ってね」
「はいはい」
 おざなりな返事を残して、砂浜へと勇利は向かった。
 靴を両手に駆けだすその背中に、焦れてしまう。
 
 いかないで。
 そばにいてよ。
 つい、手を伸ばして引き留めたくなる。
 きっと君は、俺がそんなことを思ってしまうなんて、想像もできないだろうね。
 実際、自分自身もこの気持ちに驚いている。
 この、次から次へと溢れ出てくる感情は、いったい何なんだろう。
 
 砂の堤に靴を置いてきたらしい勇利が、言いつけ通りに律儀にも走って戻る姿がどんどん大きくなってくる。
「ヴィクトル」
 勇利が、笑っている。
 楽しそうに、濡れた砂浜を器用に踏みしめながら、力強く駆けてくる。
 風が吹いて、勇利の黒髪を弄び、白くて理知的な額を見せてくれた。
 ああ、なんて。
 なんて、綺麗な笑顔だろう。
「勇利」
 両腕をひろげて、名前を呼んだ。
 勇利。
 僕の中に、おいで。

「ヴィクトル」

 聞こえる、優しい声。
 暖かくて、甘い。
 腕の中に捕まえた。
 背中に感じる、勇利の腕の形。
 表情豊かな指先。
 胸から聞こえる、鼓動。

「勇利」

 海のざわめきも、鳥の声も。
 薄い夕暮れも、つま先に感じる潮の流れも。
 どうしてこんなに嬉しいのだろう。

「きもち、いいね・・・」
「・・・うん」

 勇利が。
 僕の中に、溶け込んだ。


        -つづく-


 
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