『眠り姫。』-1-(『よる。』シリーズ) 

2017, 08. 14 (Mon) 23:48

 本州の方は涼しい毎日とのことですが・・・。
 こちらはたいへん暑うございます。
 何度も熱中症になりかけて過ごす毎日…。
 初盆ではあるんだけど、身体がついていかなくて、ごめんなさいお義父さん…。
 今年の夏は過酷だと思うけど、それは年のせいなんでしょうかね。
 
 そんなわけで、色々遅々としておりますが、少しでも文章を書きたくて合間をぬっては数文字ずつ進めています。
 刀剣の方はいったん置いて、よるのシリーズをば。
 息抜きのつもりなんだけど、どうだろう。
 題名もかなりいい加減ですが、メインテーマだからまあいいかと言う事で。

 つぐみがどんどん爆弾を落とす予定。
 楽しんでいただけると幸いです。




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  現在は、『睦み月』で『シゲルとミケ』シリーズです。
  飲んだくれ猟師と化け猫の話。
  楽しんで頂けたら幸いです。

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『眠り姫。』-1-


「ただいまー。ねえ、なっちゃんのドーナツどこにあるの?」
 廊下からのドアがいきなり開いたかと思うと、第一声がそれだった。
 まっすぐな長い黒髪もつややかに、これぞアジアンビューティーといった容姿の女性がずかずかと家の中に入ってくる。
 大野つぐみ。
 この家の長女で、目下女優を目指して邁進中。
「姉ちゃん・・・。久々に帰って来て、それ?」
 一同みなぽかんと口を開けているなか、将がようよう問いかけた。
 大野家のダイニングでは夕飯の真っ最中だった。
 テーブルについているのは、従弟の吉央、吉央の母の良子、そして将。
 隣家住まいだった良子は離婚を機に荷物の大半をトランクルームに預け、大野家に身を寄せている。
 もともと空手師範として忙しい母のひばりに代わって大野家の家事の大半を担ってくれていた良子が客間に定住した所で、日常にあまり変化はなかった。
 ちなみに大野家の家長で将の父である直樹は、珍しく仕事場の懇親会で不在だ。
「久々って程じゃないでしょ。一か月くらい前にも帰ってきたじゃん。それに今ちゃんと、ただいまって言ったでしょ?」
 どかっと、つぐみが父の椅子に座ったのを機に、状況を把握した良子が食事の手を止めて立ち上がろうとする。
「つぐみちゃん、ご飯食べる?それともお茶かしら?」
「あー、良子さんごめんなさい。食事は済ませてきたのでどうぞお構いなく。ドーナツ欲しさにはせ参じただけだから」
 そういいながらも、くいっと将に向かって顎で指令を出す。
「将、麦茶」
「・・・はいはい」
 のっそりと立ち上がると、冷蔵庫のドアポケットから麦茶のポットを取り出してグラスに注ぎ、姉に渡した。
「うん。おいしい」
 受け取るなり一気にあおり、空になったグラスを掲げておかわりを無言で要求する。
「・・・なんで、ドーナツのこと知ってるの?なっちゃん?」
「もちろんでしょ。ついでにスティック菓子も作って入れといたって聞いてるよ。出しな」
 彼女の言うその菓子は、小麦粉を捏ねて色々な素材と組み合わせて混ぜたものをスティック状に成型してオーブンで焼いたシンプルなもので、甘さ控えめでスナック菓子の代わりによく子供たちで食べていた。
「・・・つぐみ。あんたこの一か月ずっと連絡もよこさなかったくせに、どういうつもり?何やってたの、いったい」
 腹の底から唸るような母の声もどこ吹く風で、将から受け取った紙袋を開けて覗きこむ。
「んー。ちょっと武者修行に・・・」
「は?」
「台湾まで」
「はああ?」
「映画とかドラマとか、ちょこちょこ混じって働いてみた。なかなか面白かったよ。ご飯も美味しかったしね」
 そういいながら、トートバッグからひょいひょい包みを出して並べ始める。
「乾物を主に買ってきた。酒のつまみにもなるよ」
「・・・あんたって子はたいがい自由だよね」
 あきれ顔ながらも、ひばりはさっさと土産物を手に取り中を改めた。
「なにこれ。エリンギ?チップなの?」
「そうそう。塩味振ってあるから、ビールにサイコー」
 あっという間に盛り上がり始めた母娘に、将は深いため息をつく。
「ほんっと、親子だな・・・」
「二人そろうと家の中が一気に明るくなって、楽しいわ。ねえ吉央」
 良子の言葉に、それまで黙々と箸を動かしていた吉央の唇がふわりとほころんだ。
「うん」
 ひそやかな相槌に、かしましい親子の会話がぴたりと止まった。
「うん?」
 気がつくと、全員の視線が吉央に集まっている。
「ええと、お帰りなさい、つんちゃん」
「・・・はい。ただいま、よっちゃん」
 なぜか空気が変わってしまったことに、吉央は首をかしげた。
「なに?どうかした?」
「・・・花」
「将?」
 ぽつりと降りてきた呟きに顔を上げて将を見かえすと、少し目を眇めて何とも言えない面持ちの彼にどうすればよいかわからず困惑する。
「そうねえ、花ねえ」
 つぐみがぷふーっと吹き出すように笑った。
「まあとにかく、ドーナツ出して?将」



                 -つづく-

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