『ずっと、ずっと甘い口唇』-1-(『楽園』シリーズ) 

2010, 04. 16 (Fri) 20:37

もしかしたら、土日は更新できないかもしれないので…。

小説をひとつ。
昨日の『POAT CARD』の本編です。
実は、数年前から書き足し書き足ししながら、まだ終わっていない…。
しかも、エピソードが膨れ上がっているし。
いつも話を思いついた瞬間は四コマ漫画のような感じなのですが、書いているうちに気がついたら膨大な文字数とエピソードが・・・。
これは、子供のころに読んだトールキンの呪いに違いない…。
『指輪物語』はたしか年表があったと思うのですよ。
おかげで、たいていの話はエクセルなどで年表を作らねばつじつまが合わないようになってしまっています。
そして、周りからも指摘されてどうにかせねばと思うのですが、登場人物が多すぎる…。
このシリーズもその点で難ありなのですが、頑張って読んでいただければ幸いです。

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  現在は、『睦み月』で『シゲルとミケ』シリーズです。
  飲んだくれ猟師と化け猫の話。
  楽しんで頂けたら幸いです。

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『ずっと、ずっと甘い口唇-1-』


「別れましょう、私たち」
桜色のグロスで潤いぽってりとした唇が信じがたい言葉を吐き出す。
「・・・は?」
正面の白い顔を見据えたきり、頭の機能は全面凍結した。
「なんだって?」
「だ、か、ら。別れましょう、私たち、と言っているの」
「別れましょうも何も・・・・」

ここは代官山のこじゃれた内装のカフェ。
やたらと小奇麗な顔だちのウェイターばかりが右往左往するこの店は彼ら目当ての女性客が多く、男の片桐にとっていささか居心地の悪いものであったが、恋人の意向には逆らえない。
しぶしぶ入り、会社の食堂で一番高い定食を二度は十分に食べられる高いコーヒーをオーダーし、一息ついた途端、その爆弾が落ちたのだ。
「・・・この状況で・・・?」
二人の間には、ウェディング雑誌と、式場案内のパンフレットが広げられていた。これらをかき集めてきたのは目の前の女性に他ならないはずなのだが。
「何もかも嫌になったの。これでも少しは持ち直そうと努力したのよ。親御さんやあなたの立場もあるだろうし、私もドレスの解約するときに恥ずかしいし」
そう。
そうなのだ。
確か、ヨーロッパのドレスメーカーの東京支店へわざわざ何度も何度も下見をつき合わされ、一週間前にようやく予約を入れたはずだった。
そして、当然、式場にも高い契約金を入れている。
 式は今からほんの数ヵ月後。
 仕事が忙しいせいで両家の親への正式な顔合わせはまだだが、互いの実家へ何度か挨拶に行っているだけに、『結婚を前提にしたお付き合い』は暗黙の了解になっていた。
 仲人を自分の直属の課長にするかさらに上の部長に頼むか、それともなしにするかと迷って、課長の未来性にかけようと言う結論を二人で出したのは一昨日ではなかったか。
「何がなんだか、俺にゃ、さっぱりわからんのやけど・・・」
「その博多弁よ」
 びしっ、と、唇と同じ桜色のネイルカラーを塗り上げられた人差し指をまるで糾弾するかのように婚約者、もとい、元婚約者に向かって突きつけた。
「その変ななまりのかかった言葉を、聞けば聞くほどいらいらするの」
 彼女の形の良い額には不似合いな皺が刻まれている。
「いや、美咲、何度も言うように俺は博多の生まれやないけん、これは博多弁じゃ・・・」
「そんなこと、どうでもいいのよ、九州男児の説教はたくさん!!」
 何が油を注いでしまったのか、彼女の怒りはますますヒートアップして行き、さすがに周囲の注目を浴びつつあった。
「落ち着け、美咲・・・」
「呼び捨てにしないで!!」
 かつての恋人、いや、婚約者だった女は絶叫した。
「そのなれなれしい物言いを聞くのも、その中途半端に浅黒い顔を見るのも、おんなじ所で息を吸うのも嫌!!何もかも、何もかも、いらいらして、いてもたってもいられないのよっ!!」
 そして、テーブルの上のあれこれも、テーブルの前の片桐もそのままに、ピンヒールの足音も激しく彼女は去っていった。

「なんの悪夢だ、これは・・・」

 片桐啓介二十八歳。
 福岡県の水郷地区出身。
 地元進学校を卒業後大学は東京の方へ進学し、とんとん拍子に業界最大手として名高い電機メーカーTENの情報系設計部門に就職して約六年。中堅としてそれなりに活躍し、上司や同僚の覚えもめでたく、今度は仕事で出会った美女と婚約して、人生の足場も固めようとしていた矢先のことである。

 つまり、彼は、坂を昇るだけ登りつめた所でいきなり谷底に突き落とされ、ついでに人生の壁というものに初めて遭遇してしまったのだ。



   『ずっと、ずっと甘い口唇-2-』 へ 続く。



・・・長いので、オープニングだけで切ってしまいました…。
これってどうよと思いますが、どうかお付き合いください。





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