『心の月。』-7-(『よる。』シリーズ) 

2017, 06. 13 (Tue) 20:40

 お待たせしました。
 昨日は、同僚たちとビアガーデンに行きました。
 ビアガーデンとかって、もう、〇年ぶりだ…。
 新入社員の頃くらいに行ったっきり?
 福岡は天神界隈に勤めていないとなかなか縁のない場所のような。
 今回は五時スタートとかなり早めでしたが、それでも十分お客さんがいてびっくりしました。
 そして、ビルの屋上は寒かった…。
 六月になって雨が降らず、朝晩涼しいのは夏が苦手な自分としてはありがたいけど、快適すぎて逆に不安だわ…。
 もちろん、農作物を作られる皆さんは大変でしょうし…。

 さて。
 爆弾発言を受けての七話です。
 本間奈津美の本領発揮(?)の回、少しでも楽しんでいただけると嬉しいです。
 静かに終わらせてやれないの…。
 奈津美の彼氏云々のエピソードについては、『strawberry』を参照ください。

 この話の設定としては、下記添付のような感じに優雅な午後なんですが(先日の長崎のホテルのティールーム)・・・。
 でも多分、どんなに優雅なティーセットを前にしていても、仲間内の会話ってこんなもんだと思う…。
 私がこの時、ロケットさん(ハリウッド映画の男前アライグマ)総受を師匠に熱弁ふるったように…。
 単にぶち壊す女だと言うだけなのか、私の本性が。


minih0946 (79)

 あと一話。
 ちょっと補足的な回を用意しています。
 短いけどお付き合いくださいね。



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  現在は、『睦み月』で『シゲルとミケ』シリーズです。
  飲んだくれ猟師と化け猫の話。
  楽しんで頂けたら幸いです。

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 『心の月。』-7-



 
 テラス席のほうからさっと鋭い光が差し込んだ。
 たまたま外を歩いていた人の持ち物が、陽の光に反射したのかもしれない。
 でも、優雅なティールームにまるで稲光が走ったような瞬間だった。
 二人の間に横たわる、重い沈黙。
「・・・あー。・・・もうね」
 地を這うような声がテーブルの上を滑っていく。
 深々と、奈津美はため息をついた。
「・・・なっちゃん?」
「私の、数分前までのトキメキを返して、たっちゃんのばか」
 恨みがましい上目遣いを受けて、将は慌てて身を乗り出す。
「・・・は?」
「だって、そうでしょ?昔、お婿さんにしてもいいかなーと思っていた子から、初恋でしたって告白されて、ときめかない方が無理じゃない?」
「お婿さんにしてくれようとしたんだ。初耳・・・」
「そりゃそうでしょうとも!私がまだぎりぎり小学生の頃だもん!」
「・・・俺、その時多分四歳くらいだけど、なっちゃん・・・?」
 先ほどまで、目の前でケーキを差し出してくれたのは大人の女性の顔をしていた奈津美だった。
 だけど、口調も表情もすべて、幼い家族の顔に戻っている。

 去年の、初夏の、真夜中の海。
 奈津美と、吉央と、つぐみと四人で過ごした通夜。
 人里離れた田舎の浜辺で子供みたいにはしゃいで、朝を迎えた。

「この子は見所あるなーと思ったのよ、子供心に!!お互い大人になったら歳の差とか、あんまり関係ないのはひばりさんたちでよくわかったし!」
「俺のとこ、二歳しか姉さん女房じゃないよ?」
「小学生にとって、二歳の壁はエベレストより高いです~」
「いやいや、そうなると八歳の壁は大気圏外じゃないの?っていうか、なっちゃん、彼氏がいるって聞いたけど」
「それってなに情報…。いや、お母さん以外にいないのはわかってるけど、それは誤報だから。人違いだから」
「人違いって、かわいそう過ぎない?すごく良い人って、良子さん喜んでいたのに」
 今年の正月、良子が奈津美の部屋を訪ねると、素敵な男性が一緒にいたと嬉し気に大野家へ報告していた。
 その人は、物腰柔らかな年上の好青年だったと。
「たっちゃん、しつこい。もうその件は良いの。終わったから」
「あ・・・。そうですか」
 時々、奈津美の口調と会話のテンポはつぐみと似ていると思う。
 仲が良いとそんなところがうつるのか、なたでも振り下ろしたかのようなばっさり加減が非常に似ている。
「とにかくね。久々にちょっとときめいた乙女心をどうしてくれよう…ていうか、あれ?私、何を言いたかったんだっけ?」
「・・・いや、それはさすがに俺にもわからない・・・」
「うん・・・。私もなにがなんだかわからなくなっちゃった・・・」
 途方に暮れた顔の奈津美を見ると、つい、笑いがこみ上げてきた。
 それは彼女も同じで、くくくと、肩を震わせ笑いをこらえている。
「やあねえ、もう」
「うん、ごめん、俺がいきなりすごい告白に走ったから」
「ほんと、たっちゃんの口からまさかの告白だもの。宣言?ていった方が良いのかな?」
「うん。俺、なっちゃんにまず言っときたかった。吉央とずっと一緒にいたいって」
「ずっと、一緒に・・・か」
 奈津美の頭の中に、小学生の頃の二人が思い浮かぶ。
 手をつないで登下校している姿は、はたから見て微笑ましいものだった。
 ひよこのように可愛い吉央、
 骨格のしつかりした犬のように頼もしい将。
「もう一度言うけど、ルームメイトとかじゃないよ?もっと掘り下げて・・・」
「いやいやいや、お腹いっぱいです。やめてちょうだい。私、あなたたちのお姉さんなんだから!!」
 慌てて手のひらを将の前に上げ、待て、の指令を出した。
 ぴしっと背筋を伸ばして、彼は答えを待っている。
「・・・口実かな、とは思っていたのよ」
「ん・・・?」
「ドーナツ」
「ああ・・・」
 学校を休んでまで品川へやってきた理由。
「そうだね。ドーナツが欲しかったのは本当だけど」
「私が反対したら、思いとどまろうとか思ったの?」
「うん・・・。それは・・・ないかな。駄目って言われる気はしなかったんだ」
「そうですか・・・。うん。そうなんだけど」
 吉央を見ていると、将がそばにいない世界なんて存在しないように思えた。
「逆に俺に悪いなって三人が思っているのは常々感じていたから、どこから説明したもんかなと思ってた。吉央を嫁にしたいですって言ったら、さすがの良子さんも混乱するだろうなとか。まずおふくろには何発か殴られるだろうけど」
「男同士だから?」
「いや、吉央に手を出したから」
「え?もう、実は二人って・・・?」
 奈津美が両手を口に当てて固まるのを、今度は将が片手を上げて制す。
「いや、だからまだだって。進路が確定するまでは我慢するって」
 吉央の繊細さを誰よりも知っているのは、将だ。
「あ・・・、なるほど・・・。そうなのね・・・」
 ほうと、息を吐いて奈津美は姿勢を正した。
「ご配慮、ありがとうございます」
 深々とこうべを垂れると、将も深々と大きな体を折り曲げる。
「いえ、こちらこそ。責めずにいてくれて、ありがとうございます」
「責めはしないけどね、手放しで承認じゃないから、ちゃんと心に留めといてね」
「え?反対ってこと?」
「私は、吉央のお姉ちゃんなの。たまにはお姉ちゃんぶりたいの」
 びしっと人差し指を繰り出し、将の鼻先に突き付けた。
「どんなことであれ、私の弟を泣かせたら、許さないから。わかった?」
「・・・もちろん」
 その日一番の、綺麗な笑顔が広がった。



                 -つづく-



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