『心の月。』-5-(『よる。』シリーズ) 

2017, 06. 08 (Thu) 23:55

 月曜日はちょっと長崎の方までBL道場の師匠と行ってまいりました。
 薔薇と紫陽花をとりつかれたように写真撮りまくりましたよ。
 ネットで使う素材として仕入れたって感じです…。
 ちなみにこちらは鉄線。
 好きな花です。

minih0946 (9)

 で、なんとか小説をある程度書いたので更新します。
 あ、明日も、明日も頑張りたい・・です。
 ではでは、とりいそぎ。
 ちなみに、将がちょっと問題発言かましていますが、さて、どこでしょう(笑)。
 当ててくださいね。
 ではでは、暗い話ですが、楽しんでいただけると幸いです。


  ↓ 小説はこの下にあります。『続きを読む』をクリック下さい。



  記事の一番下の『拍手』ボタンをクリックして頂くと小話をご覧になれます。
  現在は、『睦み月』で『シゲルとミケ』シリーズです。
  飲んだくれ猟師と化け猫の話。
  楽しんで頂けたら幸いです。

 アクセスして下さったり、拍手やバナークリックで励まして下さる皆さんに感謝しています。
 もしもよろしければ感想や要望など頂けると、本当に嬉しいです。


ブログランキング・にほんブログ村へ


   拍手小話はこちら →



 『心の月。』-5-



「いまだから言うけどさ、俺の初恋ってなっちゃんなんだよな」
「・・・え?」
 一瞬、何を言われたかわからなかった。
「なっちゃん、漫画みたいな顔してる」
 目と口を最大限に開いたまま固まってしまう。
 脳内の伝達機能がうまく作動しない。
「ええ?」
「そんなに驚くことかな。うちの界隈、みんなの初恋ってほとんどなっちゃんだと思うけど。つぐみもさとみもそうだし」
「ええええ?」
「だってさ。バレエもお稽古事もぶっちぎりで上手くて、お姫様みたいに可愛くて、しかもおとぎ話みたいに意地悪なばあさんに虐げられながら暮らしているのに真面目で明るくて優しくて、めちゃくちゃ憧れの的だったよ」
 リアル小公女とか、リアルシンデレラって言われていたの知らない?と、将は面白そうに言葉をつづけた。
「ち、ちょっと。ちょっと待って、たっちゃん」
「うん」
 躾の良い犬のように、将は背筋を伸ばして待機する。
「ええと。全く知らなかったんだけど、その辺の話」
「うん。つぐみの初恋?」
「いや、全部。それよりなに、おとぎ話みたいにって」
「ああ。ばあさんがなっちゃんに厳しく当たっているのは、けっこう各方面にバレバレだったよ。しかも、吉央が無意識のうちにばあさんの言動バラしていたから」
 ばあさん。
 将は奈津美たちの祖母をずっと嫌っていた。
「バラす?」
「うん。なっちゃんも解っていたと思うけど、吉央が物心ついた時からずーっと子守唄代わりになっちゃんの悪口吹き込んでただろう。鵜呑みにした吉央が小学校入ってすぐにそれがんがん言っちゃったんだよ。九官鳥みたいに」
 吉央が小学校へ入学した時、教師を含め周囲の注目の的だった。
 『「あの」本間奈津美の弟』として。
「悪意とか、そういうつもりじゃなくて、それが常識だと信じてなっちゃんを貶める発言を連発したものだから、クラスの子たちがいっせいにドン引きしたよ。でもみんながなんでそんな態度取るのかわからなくて、あっという間に独りぼっちになったんだよ、吉央は」
「ひとりぼっち・・・」
 その件については多少心当たりがある。
 祖母は吉央が生まれた時、手放しの喜びようだった。しかしおむつを替えたり風呂に入れたりなどは煩わしいと手を貸さず、都合のよい時だけ可愛がり、教育にも口出しした。
 その一つが幼児教育で、同年代の子供たちが好むアニメや特撮もののテレビを観ることを禁じ、さらには下品な言葉遣いが移るからと幼稚園に通う事すら難色を示し、何かと休ませて手元に置いた。
 大人の世界で甘やかされっぱなしだった吉央は、同い年の子供たちとの関わりをうまく築くことができないまま小学校へ上がってしまった。
 小さな躓きはやがて吉央の心をねじまげ学校も休みがちになり、とうとうその年の秋ごろに問題が起きた。
「なっちゃん、覚えているだろう。ばあさんに折檻されたときのこと」
「折檻だなんて、随分古い言葉を使うのね」
 歳に似合わない時代がかった言葉に、思わず吹き出す。
「折檻というより、虐待とか暴行と言った方がしっくりくるけどな。あの時のばあさんは、鬼畜そのものだったよ」
 友達ができない吉央は、同級生たちの気を引くために物で釣ることを覚えた。最初は近所の駄菓子屋に売っている小さなお菓子。
 それがだんだん渡す人数も金額もエスカレートしていき僅かな小遣いでは足りなくなり、こっそり祖母の箪笥からお金を盗み始めるまでたいして時間はかからなかった。最初は小銭で、そのうち千円ずつ抜き取っていき額は増えていく。
 そのお金は祖母と母が茶道と書道を教えて稼いだもので、最後に盗んだのは五千円札で、自分は全くやったことのないカードゲームのカードを買い込んでいた。
 しかし祖母は、真っ先に奈津美を疑った。
 そして母は、思うように育たない吉央と家に帰らない夫のことで精神的に追い詰められていた。
 子供二人を並べて問いただすと、吉央は奈津美がやったと嘘をついた。さすがに堪忍袋の緒が切れた奈津美が吉央をしかりつけると、大人二人は奈津美の言葉に一切耳を貸さず、叱責した。
 そして、罪を認めない孫娘に激怒した祖母はとびかかり、まるで憑りつかれたように箒で打ち続けた。
「良子さんはなっちゃんが打たれてボロボロにされていくのをただぼんやり見ていて、吉央は吉央で大事になったのにびっくりして腰を抜かしていたよね」
 本間家での異変に気が付いたひばりが飛び込んで祖母を制し、ちょうど同学年の保護者たちから相談されていた話を説明した。
 吉央が、友達欲しさにお金をばらまき、善悪の判断能力のない子供たちがそれをあてにして色々ねだって買ってもらったと。
 なので吉央に大金を持たせないよう説得してくれないかと言う、苦情でもあった。
「俺、なっちゃんが大好きだったから、ばあさんも、良子さんも、それと吉央も悪党だと思ったんだよ。あそこに居合わせた瞬間はね」
「・・・うん」
 お嬢様育ちで箒を振り上げるなんて力をもともと持たない祖母の折檻は、幸いたいした怪我にならず打撲と擦過傷で済んだが、その時に吐いた暴言の数々はとうてい許せるものではなかった。そしてなにより、母と慕っていた良子が全く庇ってくれなかったことに奈津美は深く傷ついた。
 だけど、それ以上の衝撃を幼い吉央はその時に受け、恐怖のあまりへたり込んだまま失禁していた。
「でも、芝生の上でしりもちついて、漏らして震えてる吉央を見てるとね。かわいそうだなって思った。ばあさんにぼこぼこに殴られて、良子さんに助けてもらえなかったなっちゃんは髪も制服もずたずたでもっとひどい目に遭っていたのに」
 ごめんね、と低い静かな声で囁かれ、奈津美は首を振る。
 吉央はあの日初めて、奈津美が良子の子供でないことを知ったのだ。






                 -つづく-


スポンサーサイト

コメント

コメントの投稿

非公開コメント