『心の月。』-3-(『よる。』シリーズ) 

2017, 05. 26 (Fri) 19:30

 シフトの関係でちょっとまとまった休暇をもらったはずだったのですが、予想通り、なんかつらつらと終ってしまった…。
 もう、金曜日の夕方だよ!!
 予想通り過ぎて笑える私のへっぽこぶり。
 更新カレンダーみたら、ぜんっぜんしていませんね・・・。
 予定では漫画紹介三本とと絵本紹介一本、そして「よる」の終幕、刀剣の続き開始・・・と、てんこ盛りだったはずなのになぜだ。
 家の掃除も断捨離も終わっていないわ~。
 ちなみに、ちょこっと所用で外出してはカフェなどでこっそり刀剣の修正したりしているのですが、「野分」が想像以上に長くて自分でも驚いている。そして、誤字脱字の多さに穴を掘りたくなってもいる。どうすんだよ私。

 今日は博物館に仏像観に行く予定だったのですが、朝から片頭痛で目覚めてしまい、明日からの久々の勤務に備えて外出をとりやめにしました。
 やっぱり、昨日の半日親孝行は体力面で見栄を張りすぎてアカンかったわ~。
 親孝行も三分タイマー並みなのか、やっぱり。
 薔薇の写真でお茶を濁そうそうしよう。

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 体調は回復期に入ったから、多分、これからアクティブに・・・と言うか、六月もちょこっと外出予定を立てています。
 六月も農閑期で稼ぎは低いが、めげずに英気を養う(←物は言いよう)…つもり。
  
 ところで、少しでも、少しでもこの期間が無駄じゃなかったと己に刻みたくて、数時間あがいてみました。
 奈津美と将のランチ話、まだまだ続きます。
 今回もたいがいな話を綴っていますが、次回もたいがいな本間家エピソードが続きます。
 つ、ついてきてくださいね。

 ほんと、あまりにあんまりな話で、薔薇の花でも眺めないとつらすぎる・・・。
 
 読んでいただけたら幸いです。
 


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  現在は、『睦み月』で『シゲルとミケ』シリーズです。
  飲んだくれ猟師と化け猫の話。
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 『心の月。』-3-



「それで、進路はだいたい決まったの?」
「うん。方向性は」
 いろどりも綺麗に盛られたデザートをフォークでゆっくり崩しながら、二人は話を続けた。
「とりあえず、薬学を学んで国家資格を取るのはどうだろうって話になってる」
「とりあえず、ねえ・・・」
「うん、とりあえず。清水さんのおかげで学費の心配はなくなったから、選択肢を少し広げてみた」
 清水さん、とは、家族ぐるみで世話になっていたかかりつけ医で。
「ここにきて清水先生、まさかのサヨナラホームランだもんねえ。あれにはちょっと驚いた」
 そして、これから吉央の母・良子と再婚する予定の人だ。
「俺たちもさすがに驚いた。どんな魔法がっていうのがおふくろの第一声だし」
 本間の家と将の家は低い生け垣を挟んだ隣同士で、互いの祖母が姉妹だった縁でもともとは母屋と離れの関係だった。そして、吉央は事件以来ずっと将の部屋で寝起きをしている。
「二人の意思はともかく、まさか、すんなり話が通るとはね」
 ひと月ほど前に、良子が夫に離婚を申し出た。
 理由は清水医師に結婚を申し込まれたからだったが、それを正直に伝えたら性格のねじれた本間国男のこと、理由もなくごねるのは容易に想像がつく。
 長い間、多くの女性と不倫や浮気を繰り返してきたが、世間体は貞淑な良子で保つ腹積もりらしく、長い間生殺しの生活を強いていた。
 いや、国男一人が支配していたのではない。
 姑である祖母の葉子と二人がかりで、心根の優しい嫁を、そして奈津美と吉央たちさえも押さえつけ続けていた。
 風向きが一気に変わったのは、祖母が亡くなった急死した瞬間からだった。
 重しが一つ減ったことによる家族間のバランスの崩壊。
 そしてひそかに良子を慕っていた清水が祖母の一周忌を区切りとし、動いた。
 良子に迷いはもちろんあった。しかし長い間寄り添ってくれていた清水の誠意に心が動き、最終的には承諾した。
 その後の清水の行動は驚くほど早かった。
 熟練した離婚弁護士の手配と、国男に不利な証拠集め。
 そして、第三者による立会いの下の調停の場をすぐに設けた。
 『先制攻撃は得意なんだ』と奈津美たちに豪語していた清水は、見事な手腕で良子、吉央、奈津美の三人を本間家から離籍させ、国男への慰謝料の支払いは一切なしという結果に落着したのがつい十日ほど前のこと。
「まさか、本家の孝義さんがここでも出てくるとはねえ・・・」
 離婚調停の立会人の一人が、本間家と清水家の本家筋にあたる孝義だった。
 実は、本間家の人生の節目に彼の名前が見え隠れしている。
 離婚調停の前は、祖母の葉子の葬儀の時。
 それ以前にも国男がらみで何かが起きると彼の名前が出る。
 はるか昔で言うならば国男の就職及び所属部署の口利きは、清家の後押しがあったおかげだったとか。
 清家孝義。
 四十代半ばにして地元大手企業の重役で、中央の経済界にも顔が利く。
「たしか、国男おじさんが家庭教師をしていた縁とかいうよね」
 東京のエスカレーター式名門校に籍を置く孝義は、小学生の頃から母親とともに東京住まいだった。そこへ、東京の大学へ進学した分家の国男が挨拶へ行き、そのまま家庭教師の座を射止めた。
「・・・きな臭いのよね。いろいろと・・・」
 国男は女性関係にだらしがなく、片っ端から手を出してはトラブルを起こしていた。その最たる例が、仲人する予定だった部下の婚約者と温泉旅行へ出かけたのが露見した時だった。婚約者自身も会社関係者だったことから大きな騒ぎとなり、それの火消しをしたのもやはり孝義だったと、なぜか将の姉のつぐみが情報を仕入れてきた。
「なんだろう。うますぎる話・・・っていうか?」
「そうそう。親切すぎて、怖いよね。それに気づかないでここまで来たあの人もたいがい間抜けと言うか」
「まあ、俺ならそろそろツケを払ってもらう頃合いかなと思う」
「うん、私もそう思う。そのための布石かなーと」
 離婚調停の場で、孝義は清水の意見を前面肯定した。
 さんざん世話になった孝義の意見に逆らえず離婚を承諾したものの、子供の頃からライバル視していた清水に妻子を攫われた屈辱には耐えられない国男は、腹いせに本間の家屋を取り壊して更地にし、売却する手続きを取った。
 利便性は良く閑静な住宅地であり、そして坪数も大きなその土地はすぐに買い手が付き、法的手続きも着々と進んでいる。
 結果として初盆を待たずに本間の土地は他人の手に渡り、国男は二度とこの地区に足を踏み入れることはないだろう。
 そして。
「さすがの私も、清水先生がその先を読んでいたとは思わなかった・・・」
「俺も、安藤さんが家を売りに出しているの知らなかったな」
 清水は、大野家を挟んで反対の隣の安藤家の土地家屋を購入していた。
 不動産会社を通して売りに出たのは今年の春。
 海外勤務のため長い間貸家にしていたが、経年劣化及び借り手が変わるたびのメンテナンス、そして固定資産税の支払いの面倒から解放されたいと売却に踏み切ったらしい。
 敷地面積は本間家に劣るが、清水は良子が茶道教室を続けられるような間取りの家を建てる予定だと奈津美たちに告げた。
 離婚届が受理されてすぐに良子は大野家に間借りし、奈津美や吉央のアルバムなどこまごまとした荷物は将たちが段ボールに詰めトランクルームに預けたので、今日明日にでも重機が入っても問題はない。
 年末には新しい家完成と同時に、良子は清水との生活が始まる。
 ただし、吉央は将の部屋に残る。
 将たち大野家と、良子、奈津美、吉央の関係を崩さないことを念頭に置いてくれた清水には、一同、言い尽くせないほど感謝している。
「だけど正直、タイミングが良すぎて俺としては気持ち悪いんだけど」
「だよね。まあ、先生はそれを薄々わかっていて乗っかったらしいよ。お母さんには内緒だよって言われたけど」
 良子は、当時存命で体が弱り始めていた曾祖母の介護を嫌って飛び出した前妻の代替として嫁に迎えられた。
 認知症も始まりかけている老女の介護、口うるさい姑の手伝い、そして置き去りにされた前妻の子の養育、そして仕事を口実にめったに家にいつかない夫。
 転職して地元に戻ってきた兄が妻子を伴って実家に同居を始めた良子にとって、どれほど条件が悪くても嫁ぐ以外に道はなかった。
「良子さん、俺たちの中で一番清らかだからな・・・」
 良子は大学まで女子校の上に就職先も女性の多い銀行業務、趣味と習い事は茶道、華道。中流家庭ではあるがお嬢様育ちと言って良く、人の悪意に慣れていない。
 そして、憤るより耐えることを選び続けた。
「うん。あ、いや、よっちゃんもおんなじくらい?」
「ああ、うん、吉央と良子さんは別格。で、俺たち俗人」
 紅茶のカップをソーサーに戻して、おどけるように肩をすくめた。
「たっちゃんたら」
 軽く噴き出した後、奈津美は一口大のケーキのかけらをフォークに載せて差し出す。
「はい。ひとくちどうぞ」
「ん」
 将が顔を寄せてひな鳥のようにぱくりとついばんだ。
「うまいな、さすがなっちゃんが選んだ店」
 ゆっくり咀嚼した後、にこりと笑う。
 そして視線が一瞬、テーブルの上に置いている携帯に流れたのを奈津美は見て取った。
「いま、よっちゃんのこと、考えたでしょ。食べさせたいなーとか」
「うん」
 笑顔の中に、少し大人びた表情が見え隠れする。
「まったく、たっちゃんときたら」
「うん、ごめん」
 奈津美は、将の瞳に胸が痛んだ。
「たっちゃん・・・」
 ごめんと、謝るべきなのは自分の方だ。
 将は、もう子供ではなくて。
 いや、ずっと前からこの子は大人びた目で私たちを見守ってくれていた。
「あのね。・・・あのね、たっちゃん」
 いつからそうなってしまったのだろう。
「うん?」
 子供には、子供の時間が必要なのに。
 そうさせてあげられなかったのは、私たちのせい。
 謝る言葉がみつからなくて、いたずらに時ばかり過ごしている。
「たっちゃんは、このままでいいの?」
「・・・どういう意味?」
 今日こそ聞くべきだと、思う。
「ずっと、ずっとね。思っていたの。今になってごめん」
 大きな窓の外は夏の光が降り注ぎ、テラス席の人々は広い空と爽やかな風を楽しんでいる。
 こんな日だから、聞けると思った。
「たっちゃん、今のままで、本当にいいの?」
 今日こそ、解放すべきだと。



                 -つづく-


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