『野分』-12-(刀剣乱舞二次創作) 

2016, 10. 20 (Thu) 20:51

 お待たせしました。
 刀剣乱舞二次創作『野分』の再開です。
 間が空きすぎて、私自身、最初から読み直してしまいました…。
 今後の予定としては、とにかくずずいと進めていく予定なので、どうぞお付き合いください。
 とにかく、次章の『散華』にむけて、走るのみです。

 あ。
 今回、蘊蓄だらだらしていますが、どうか生温かく見守ってくだされば・・・。ええ。
 そして、じじいやりたい放題パートでございます。
 石切丸、薬研、三日月の漫才を楽しんでくださいまし。

 次話は、燭台切と山姥切のパートに戻ります。
 


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  現在は、『睦み月』で『シゲルとミケ』シリーズです。
  飲んだくれ猟師と化け猫の話。
  楽しんで頂けたら幸いです。

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  『野分』-12-



「・・・くっ・・・。あの馬鹿!!」
 構えの体制を解いて、石切丸は拳を地面に打ち付けた。
「こんな時に、男気見せて、何になる!!」
 おおどかな物腰で知られる石切丸の豹変ぶりに、対岸にいる刀剣たちも驚くそぶりを見せる。
「・・・気配が、消えたな。どういうことだ?」
 青龍の玉が燭台切光忠を飲み込んで閉じた瞬間から、全てを任せのんきに胡坐をかいて頬杖をついていた三日月宗近が、静かに尋ねる。
「・・・燭台切自ら、防御の術を解きました。こうなると、私の方から彼を強制的に回収することができない」
 燭台切の右目を覆う眼帯は、彼の特異な瞳から入る災いを防ぎ、かつ、今回は青龍の繭の外にいる石切丸との間をつなぐ術が施されており、めったなことでは外れないよう強固な造りにした筈だった。
 ただし、何らかの事情で已む得ず外さねばならない場合を考えて、自らの意思ならば簡単に解けるようにもしていた。
「おそらくは、援護なしで事に当たりたいと思ったのではないかと・・・」
 ぎり、と、奥歯をかみしめ、石切丸は己の中の怒りを鎮めようとしているが、折角の御膳立てを無にされた屈辱に、つい、本音が漏れた。
「どんなに格好つけたところで、最悪の結果を招いたなら、ただのうつけでしかないというに・・・」
「・・・ほう?これはまた、おもしろくなってきたな」
 燭台切が結界に侵入してまだほんの数刻あまり。
 あちらの方が時間の流れが速いようだが、それにしても決断が早すぎる。
「要するに、あれは写しに惚れているのか?」
「・・・今更、無粋な事言い出すんじゃねえ、じじい」
 両手の構えを解いたものの、光の繭に向かって警戒の姿勢を崩さない薬研藤四郎がいらだちを隠さない声色で制した。
「命かけるってのはそういうもんだろ。察しろよ。そんで、胸の奥深くに刻んで口閉じてろよ」
「はっはっはー。なかなか良い男だのう、お前も、光忠も」
「うるせえ、だまってろ、くそじじい」
「薬研をからかうのも、ほどほどになさってください、三日月様」
 地面に手を置いて、何かを探っていたらしい石切丸は、ふうっと息をついてたしなめる。
「こういう時に役に立つのは燭台切で、私には不得手なだけに肩の荷が重い」
「ほう?色事はあれが上手いか」
「いえ、そちらではなく、この場の納め方です」
 悔しいが、統率力において彼にはかなわないと思うことがある。
 いつでもさりげなく裏方に徹し、何事も気取られない手腕は大したものだと、後になって舌を巻くことが多い。
 『この城にはなくてはならない存在だ』と告げたのは、本心からだ。
 今の審神者に仕える個性豊かな刀剣たちを束ねるには、彼の力がぜひとも必要だ。
 だからこそ、自分も全力で事に当たっているというのに。
「・・・ほう?」
 ますます興味があるのう、と、三日月はにんまりと笑う。
「さっさと片付けて、宴でも催したいものだの」
「・・・まあ、それについては同感ですね」

 早く、戻って来い。
 燭台切光忠、そして、山姥切国広。
 無事に、欠けることなく。
 

  豊かな水が滝つぼに落ち、篝火がぱちりぱちりと火の粉を上げながら爆ぜる音を立てる以外は、何も起こることのない夜の闇の中、それぞれ地面に座して時が過ぎるのを待っていた。
 静けさが、重い膜のように六人の方に覆いかぶさる。
 石切丸と薬研の調べた限りでは、遅くとも明け方近くに結果が出ると推測された。
 長丁場を予想した薬研が神饌と白湯そして神酒を持ち込んでいたため、各々それを口にしながら結界を見守り続けている。
 神酒で唇を湿しながら、三日月宗近はゆるりと言葉を発した。
「あれは、喧嘩祭り、みたいなものかの・・・」
「・・・ああ、なるほど。まさにと言うべきでしょうか」
「喧嘩祭り?なんだそれ」
 利発ではあるが、まだ若い薬研藤四郎が首をかしげる。
「現世でも少しは残っておるだろう。主に神輿同士をぶつけ合うものを指すが、玉せせりとか、荒馬とか、御柱祭とか、命がけで行う祭りのことだ」
「ああ・・・。そういう祭があるのは知ってる」
 それが何か?と目で問う薬研に、石切丸が変わって説明を始めた。
「あれは若者たちの欲を抑え込むために、先人たちが考え出した策の一つなんだ。表向き神事と言う形をとっているけれど、命ぎりぎりの極限状態まで暴れることによって性欲をある程度沈め、集落で狼藉を働かせない効果があるんだよ。本当に、ある程度、ではあるんだけどね」
 時によっては、取り返しのつかない大けがを負うことになる。
 しかし、その荒々しい祭りが脈々と引き継がれていった理由は、ひとえに略奪と強姦から弱者を守ることにあった。
 正論では、若い男の暴走を止められない。
 労働ではない娯楽の形で、我を忘れ身体を酷使する『何か』が必要だった。
 それがどこかの土地で祭という形をとり、成功例として広がって行く。
 一年おき、または数年おきにはけ口を作ることにより、ムラの均衡は保たれたのだ。
「欲には、欲・・・ね」
 薬研は軽く肩をすくめ、神饌を口に放り込んで咀嚼した。
「そう。発散させるか、満たすか・・・。生き物としての業かな、こうなると」
「あんたたちの講釈はありがたく拝聴したさ。・・・でもな。この組み合わせの喧嘩祭となると、俺は今から頭が痛いぜ」

 山姥切は、太郎太刀に殺されるなら本望だったかもしれない。
 しかし、変化した姿を見られたくないと思ったかもしれない。
 救う手立てを探す最中、薬研は迷いに迷った。
 矢傷を負った山姥切国広から乱藤四郎に託された御守には、どのような意味が込められていたのか。
 全てはそれに尽きる。
 しかしどんなに考えても、愛した者を自らの手で砕くというのは大きな痛手にしかならないという結論しかない。
 蜜月真っただ中なら尚更のこと。
 太郎太刀は、山姥切の虜になっているといっても過言ではなかった。
 そして、それは皆にもいえることだった。
 もし、みすみす仲間を殺すことになったなら。
 誰も平静ではいられない。
 だからこそ、彼は、自らを壊した。
 完璧に、壊したはずだったのだ。

「なんじゃ、太郎太刀の悋気はそれほど怖いのか」
 ますます面白いと嘯く神剣に、薬研の頭のどこかがぶちりと切れた。
「あんたのその口と脳みそ、いっそのこと青龍の贄にしてしまえばどうだ?一気に解決するような気がしてきたよ、俺は」
 薬研は眉間に思いっきりしわを寄せびしりと指さし糾弾すると、三日月は一瞬驚いたように目を見開いた後、へらりと笑った。
「・・・愛いやつ」
「マジで殺していい?このクソじじい」
 薬研の白い顔が、殺気にますます白み、全身が青い焔に包まれる。
「おお怖・・・。しかし、ますます気に入った」
「三日月様、口説くのは頼むから後にしてください。これ以上のお戯れは、私にも見過ごすことは出来ませんよ」
「なんじゃ、つまらぬのう」
「審神者が知ったら即刻刀壊の憂き目に遭いますよ。それはいくらなんでも不名誉では?」
「まったく、ほんにつまらぬ。些細な暇つぶしも許されぬのか…」
 唇を尖らせ、杯を手のひらでもてあそび始めた三日月の姿は、我慢の利かない子供のようで、どこか愛嬌があり憎めない。
「なんだよ、暇つぶしかよ・・・」
 重たい沈黙よりはましだが、納得のいかない薬研はいらいらと神饌をつかみ取り、口いっぱいにほおばった。




             -つづく-



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