『秘密の花園』-月の草-4- 

2016, 10. 07 (Fri) 17:38

 ええと、この次の二話で、『月の草』終幕の予定です。

 後がおしているのでね…。
 さくさくと進めたいと・・思います。
 5話と6話でようやく兄弟のパートになります。
 長い前置きで大変申し訳ない。
 だけど、必要なことだと思ったので…。
 書かせてもらいました。
 怒涛の最終話まで、どうぞお付き合いくださいませ。
 

真神家相関図12

 来週からは刀剣の方を決着つけるべく励みたいと…思います。
 その次は、花園の続きか、放り出したままのマンションのつづきか・・・です。
 どれも、すごいところで放り出しているなーと言う自覚はあるので。
 ああでも、息抜きにおバカな三毛猫化け猫話書きたいんですよねえ。
 身体と時間が足りません。
 あと、脳みそと根性も。
 あと、間にちょこちょこBL感想を挟みます。
 できれば、毎日更新したいなーと…思っています。

 ではでは皆さん良い週末を。
 あ、世の中では三連休ですねー。
 次のイベントに参加するために、私は日銭を稼ぐ所存。
 がんばります。



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  現在は、『睦み月』で『シゲルとミケ』シリーズです。
  飲んだくれ猟師と化け猫の話。
  楽しんで頂けたら幸いです。

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  『秘密の花園』―月草― -4-



「・・・腹が立つ」
 シートに背を預け、窓に向かって呟いた。
 衝動的に駆け込んだ新幹線は意外と空いていて、自分の悪態なんて誰も聞きとがめることはない。
 昼飯くらい食べて行けと、まるで普通の家庭の父親のようなこと平然とを言う真神総一郎に腹が立つ。
 そして、ことが思い通りに進まず、激高した上に逃げるように飛び出してしまった自分の格好悪さにもっと腹が立った。
 途中から、自分が何を言っているのかわからなかった。
 ただ、初夏のしつらえも完璧なサンルームの中で、仁王立ちになって総一郎に不満を洗いざらい吐き出したことは、おぼろげに覚えている。
 正気に戻った時に、興味深そうな目で見上げる総領の顔に深いしわが刻まれ、随分と老けていることに気が付いた。
 あと数年で八十。憎まれっ子なんとやらもいいところだ。
 そもそも、自分が中学生の頃はすでに還暦だったはずで。
「そういや喜寿祝いなんかはどうしたんだ?やるもんだろう、普通」
 秘書たちからそういった連絡を受けた覚えは、まったくない。
 その普通が、どこにもなかったのだと気が付いた時、腹の底で重い何かが蠢いた。
 普通じゃなかったくせに。
 自分たちを、無視し続けたくせに。

『お前は、本当に、勝巳のことを考えて、今、ここにいるのか?』

 勝巳を、勝巳の何が、お前に解る。

 記憶の中よりも、ずっと小さくなった総一郎の身体。
 それにもかかわらず、昔よりなぜか一層輝いている大きな金色の瞳の力に怯んだ。
 せいいっぱい虚勢を張って言い返しながらも、小さな不安が心をむしばむ。

 勝巳って、なんだろう。
 あいつは、何を考えている?

 生まれたその瞬間から傍にいて。
 呼んだらいつでも、やってきて。
 小さいころは、ぽろぽろととりとめのないことをしゃべり続けていたのに。
 いつからか、黙って座っているだけになった。
 それはまるで、年を取ることがゆっくりな犬であるかのように。

「・・・っ!」

 駄目だ。
 今は、それを考えるときじゃない。

「それどころじゃない・・・」

 早く。
 早く、俺がなんとかしないと。

 携帯を取り出して画面にメッセージをたたき込んだ。
【今、どこ?】
 ほどなくして返事がくる。
【やっと連絡が来たと思ったら、いきなりだな・・・。ホテルのクラブラウンジだけど?】
 会って、打ち合わせする時間も惜しかった。
【アオキって男をそちらへ向かわせる。とりあえず、彼の指示通りに動いて】
【いいけど・・・。ちなみに、アオキってイイ男?】
【・・・さあ?】
【君は相変わらずだね、お姫様】
【幸運を、ジュール】
【君も、そして、君の勝巳も】
 画面を閉じて、深いため息をつく。
 とある知人に、ちょっとした遊びを持ち掛けた。
 ドラマのような出会いと展開をセッティングして、運命の恋を演出してみないかと。
 バイセクシャルで、好奇心の塊。
 そして何よりも金髪碧眼の容姿であること、欧州王家の血を引くことが、餌になるだろう。
 たいした労もなく獲物は食いつくはずだ。
「・・・俺は、何をしようとしてるのかな」
 報酬は好きなだけ取らせる。
 船でも、城でも、自分の身体でも。
 企みが成功するならば、これほど安いものはない。

 目を閉じると、広い背中を思い出す。
 無骨さを感じる大きな手、予想に反した繊細な指先。
 ときどき、深い緑の色に染まる瞳。
 そして、静かな声。

『・・・憲』

 憲二とも、兄とも、呼ばせなかった。
 憲二という名前は、前妻の子である兄の俊一を超えるのは許さないという父の呪詛が込められていた。そして、後妻の子である自分たちはまるで拾った犬のような以下の冷遇ぶりで、真神の中に居場所なんてどこにもなかった。
 自分が小さいころに一度、『けん』と呼べと言うと、勝巳は素直に従った。
 まだ歩き方もおぼつかなく、言葉も、言葉の意味も、まだよく解らない幼子だったのに。

 勝巳。
 お前の、望みはなんだ。





                  -つづく。-


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